日銀副総裁、来週会合で利上げ議論 タイミング「難しい」=識者はこうみる

 1月14日、日銀の氷見野良三副総裁(写真)は、神奈川県金融経済懇談会であいさつし、来週23―24日に開く金融政策決定会合で、「展望リポート」の経済・物価見通しを基礎に、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し、判断したいと述べた。写真は都内で2023年6月撮影(2025 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[ 14日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は14日、神奈川県金融経済懇談会であいさつし、来週23―24日に開く金融政策決定会合で、「展望リポート」の経済・物価見通しを基礎に、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し、判断したいと述べた。政策変更のタイミングの判断は「難しく、かつ重要だ」とした。

市場関係者に見方を聞いた。

◎1月利上げの可能性残した地ならし発言

<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>

まず賃上げについてはかなり強気で、先週の支店長会議やさくらリポートの内容も踏まえて前年並みはほぼ間違いないという自信を持っている。

また植田総裁が前回会合後の記者会見で様子を見る考えを示したトランプ次期米大統領の政策については、いつまで様子を見ればいいのか、場合によっては時間軸がだいぶ伸びてしまった感があったが、「来週の就任演説で大きな方向は示される」としており、1月末の一般教書演説や2月の予算教書を待たず、1月の日銀会合より前のタイミングを示唆した格好。

そういう意味では実際に利上げするかどうかの結論はともかく、少なくとも1月会合で利上げの是非を議論するということで、1月利上げの可能性を残した。1月利上げに向けた地ならし的な発言と言っていいだろう。私自身も1月利上げがありそうだと感じている。

ただ円債市場では発言前から既に1月利上げ観測を背景に金利が大幅上昇していたため、氷見野副総裁の発言を受けても金利は高止まりしている状況。市場参加者はこのあと午後に予定される氷見野氏の記者会見での発言に注目している。

また現物債の利回り上昇が思いのほか進んでいる印象だ。日米の金利上昇を受けた投げ売り的なものも出始めているのではないか。

◎利上げ観測で株安加速、企業収益への悪影響意識

<ソニーフィナンシャルグループ シニアエコノミスト 渡辺浩志氏>

今日の氷見野副総裁の発言を受けて1月の利上げ観測が高まったようだ。賃金動向について前向きな見方や、米国のトランプ氏の政策について「来週の就任演説で大きな方向は示されるのではないか」との指摘が示された。

昨年12月の日銀会合で植田総裁は、賃金情勢とトランプ政策の影響を見極めるという主旨の発言をし、当時は1月利上げの可能性がかなり後退したとみられていた。

また、最近の円安進行によって、物価上振れリスクに配慮して日銀が利上げをするのではないか、との見方もぶり返してきたとみられる。

東京市場では日経平均が一時800円超下落するなど、売り圧力が強まった。氷見野副総裁の発言を受けて利上げ観測が強まる中で、株式市場では利上げによる企業収益への悪影響が嫌気されたようだ。利上げが実施されれば為替が円高方向に進むとみられることも、株価の下押し圧力につながっているのではないか。

ただ、仮に来週の会合で追加利上げが決定されても、「寝耳に水」的な急落は避けられるとみている。今日の時点で利上げを織り込んだ売りが出ているため、日銀会合当日に例えば日経平均が1000円超下落するなど、大きな値幅を伴って値下がりする可能性は低いとみている。

◎日銀1月利上げ実施しても円高は限定的に

<SBIリクイディティ・マーケット 金融市場調査部長 上田真理人氏>

氷見野良三日銀副総裁の発言は、前提条件が整えば利上げするとの内容で、これまで植田和男日銀総裁などが発言していることと変わらない。「展望リポート」の見通しを基に判断すると言及している部分では、1月の政策決定時点で既に経済・物価見通しを把握していることにはなるが、それをもって1月でも判断するとのニュアンスなのかは分からない。

事前に懇談会の日程が公表された時点で高まった利上げ期待を打ち消す形になってしまったが、内容をみると発言が大きく後退したわけでもなく、利上げの可能性がゼロになったわけでもない。1月実施の可能性もあり得ると思っている。ただ、米国は利下げを当面実施しない可能性もあり、たとえ1月に日銀が利上げを実施したとしても円高方向への反応は一時的にとどまり、まだ円安は続くとみている。当面は158ー160円を中心に推移するとみている。

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