アングル:トランプ関税「朝令暮改」、不確実性にウォール街は悲鳴
[ニューヨーク 7日 ロイター] - トランプ米政権の関税を巡る「朝令暮改」で、市場の混乱は増すばかり――。ウォール街の米株式投資家からはこうした悲鳴が上がっている。
金融サービス会社B・ライリーの市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「トランプ政権は関税で何か発表した後にそれを引っ込めることで駆け引きをしようとしているように見える。しかし今のところ有効に作用していない」と述べた。
トランプ氏は関税によって国家収入が増加し、成長を加速させるとともに、外国と交渉する武器になるとみなしている。だが投資家は、そうした通商政策が消費者心理を悪化させ、企業の設備投資をストップさせかねないと危惧する。
GW&Kインベストメント・マネジメントのグローバル・ストラテジスト、ビル・スターリング氏は「これほど高い不確実性が存在する局面において、企業トップが示す経済合理性のある対応は様子見に徹し、意思決定を先送りすることだ」と解説した。
<外交関係にも影>
トランプ氏は2月1日にカナダとメキシコに対する新たな輸入関税と中国への追加関税に関する大統領令に署名したものの、その後一部を撤回して改めて提示した挙げ句、再び猶予を決めた。
このような政策の不透明性が投資家の株式ポジション巻き戻しを招いている。
アネックス・ウエルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は「関税を発動したり中止したりするのは、単純に実施するよりも始末が悪いのではないか。不確実性が解消されず、先延ばしになっただけだ」と指摘した。
トリプルDトレーディングのトレーダー、デニス・ディック氏によると、トランプ氏の通商政策は米国の外交関係に幅広い悪影響を及ぼす可能性を懸念する市場参加者も少なくない。
中国は5日に米国の関税に対抗するための追加刺激策を発表。欧州各国首脳は自前の防衛力整備の財源確保の再検討に乗り出し、ドイツの次期政権は東西統一以来最大規模の財政政策見直しを行う公算が大きい。
カナダのトルドー首相は6日、同国は予見可能な将来において米国と貿易戦争に突入すると語り、ベッセント米財務長官はトルドー氏を「ばか者」と罵倒した。
こうした中で投資家の間では、トランプ氏が第1次政権時代に「トランプ・プット」と称されたような株式市場を支える姿勢をまた採用するのかどうか疑念が生じ始めている。
セテラ・インベストメント・マネジメントのジーン・ゴールドマン最高投資責任者は「株式市場にとってトランプ氏による『バンプ(一過性のつまずき)』が『スランプ(本格的な不振)』に転じている」と述べた。
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