「えっ…フェラーリのエンジンを積んだハッチバック!?」天才カーデザイナーが生んだ「ワンオフのホットハッチ」がオークションに登場
『機械は血の中に』……これは、天才カーデザイナーであるフランコ・スバッロを採り上げた伝記のタイトルです。そんな彼が1984年のジュネーブモーターショーで発表したスバッロ「スーパーエイト」は、その才能が結晶化した傑作として今なお多くの自動車ファンを魅了しています。
スバッロの人生は、まさに立志伝そのものでした。イタリア南部の貧しい家庭に生まれた彼は、18歳で単身スイスに渡って整備士としてのキャリアをスタート。F1チームのスクーデリア・フィリピネッティで頭角を現し、ジム・クラークやフィル・ヒルといった伝説のドライバーたちのマシンを手がけていきます。
正規の工学教育やデザインの訓練を受けていないスバッロでしたが、その類まれな才能は驚くべき創造を生み出しました。フォード「GT40」のエンジンをイタリアの伝説的な自動車ブランド・ビッザリーニのモデルに搭載したり、ローラ「T70」の公道仕様車にポルシェ「935」のターボエンジンを載せたりと、常識を超えた発想と確かな技術で不可能を可能にしてきたのです。
そんなスバッロが、1984年に実業家ベルンド・グローエの依頼を受けて手がけたのが、「スーパーエイト」でした。フィアット「パンダ」とフェラーリ「テスタロッサ」を融合させたかのような独創的なルックスでしたが、そのベースはなんとフェラーリ「308」だったのです。
●自動車専門誌も絶賛した“完成度の高いセッティング”
「スーパーエイト」は、4バルブヘッドを持つ「308」由来の3リッターV8エンジンをキャビン内にレイアウト。ドライバーへダイレクトにエンジンサウンドを届けます。
「スーパーエイト」の完成度は高く、イギリスの自動車専門誌『Classic&Sports Car』などは「レーシングマシンを知り尽くした整備士らしい完成度の高いセッティング」と絶賛したほどでした。
この傑作の誕生以降、ランドローバーのシャシーにメルセデス・ベンツの6.3リッターV8エンジンを搭載したり、墜落したボーイング727のホイールを装着した「モンスターG」を製作したりと、スバッロの創造性はさらなる高みへ。そして、誰も成し得なかったハブレスホイールの開発にまで挑戦していきます。
そんなスバッロが手がけた唯一無二のモデル「スーパーエイト」が、先ごろ自動車オークションサイトのBring A Trailerに出品されました。
グローエに始まり、スバッロミュージアムやスイスのコレクターなど、わずか数人の手によって大切に保管されてきた稀有な1台です。
同オークションでは23件の入札により、16万ドル(約2446万円)という評価を得た「スーパーエイト」ですが、結局、最低落札価格には届かずオークションは流れてしまいました。出品者は最低落札価格をいくらに設定していたのでしょうか?
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【画像】「えっ…!」前席の背後にフェラーリ「308」のエンジン!? これが希少なスバッロ「スーパーエイト」です(26枚)