中国にのみ込まれる欧州のトラウマ 「デリスキング」の成否は

欧州連合のフォンデアライエン欧州委員長=AP

 「我々は『デリスキング』(リスク低減)を続ける。我々は教訓を得たからだ。依存することが脆弱(ぜいじゃく)性につながる」。欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は2025年7月、欧州議会での演説で、対中関係の方向性についてこう話した。

 「教訓」とは、中国政府から多額の補助金を受けて製造された中国製の安価な太陽光パネルがEU域内の市場を席巻したことだ。10年代に関連する多くの欧州企業が廃業に追い込まれ、欧州では「トラウマ」となっている。

 世界的に気候変動対策をリードしてきた欧州は、中国の安価な脱炭素技術に対して複雑な対応を迫られている。

 第2次トランプ政権の発足以降、化石燃料の増産や環境規制の緩和へとかじを切った米国とは異なり、脱炭素政策への取り組みを続ける欧州にとって、中国の技術や資源、投資は必要だ。ただ、太陽光パネルの苦い経験から、脱炭素政策については、中国との関係を維持しながら過度な対中依存を抑える「デリスキング」を模索する。

 しかし、事態は思うように進んでいない。その後も、風力発電用のタービンなどで中国がシェアを拡大するなど、グリーン産業を巡る中国の勢いは欧州でも止まらなくなっている。

 目下、EUが最も警戒するのは電気自動車(EV)だ。米ブルームバーグ通信によると、「比亜迪(BYD)」などの中国EVメーカーは25年9月時点で、EUや英国など欧州市場でのEV新車販売におけるシェア(占有率)を10%超まで伸ばし、今後も拡大が予想されている。EUは、脱炭素政策に重点を置いたEV産業の育成に乗り出す予定だったが、その戦略は見直しを迫られている。

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 EUも手をこまねいているわけではない。24年10月、中国政府による国内企業への過剰な補助金が中国製品の低価格を支え、公平な競争をゆがめているとして、中国製EVに最大35・3%の追加関税を課し始めた。また、25年12月には小型EVの新車販売でEU製であることを条件に優遇する政策を打ち出すなど「防衛策」を講じている。

 採掘と精製で中国をはじめとする域外に依存しているレアメタルについても新たな対策を取り始めた。

 欧州委員会は25年3月、リチウムなど34品目を「重要…

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