国連、ガザ市「飢饉」認定 事務総長「人災」と非難 イスラエル反発

 国連関係組織のIPCは22日、イスラエル軍の攻撃が続くパレスチナ自治区ガザについて、食料不足により一部で飢饉が発生し、今後1カ月間に拡大する可能性が高いと指摘した。写真は食料を受け取るのを待つパレスチナの人たち。21日ガザ地区ハンユニスで撮影(2025年 ロイター/Hatem Khaled)

[国連 22日 ロイター] - 国連機関や支援団体などで構成する専門家組織は22日、パレスチナ自治区ガザの最大都市ガザ市とその周辺地域で「飢饉が発生している」との判断を示す報告書を公表し、状況は今後悪化する恐れがあると警告した。イスラエルに対しガザ地区への支援物資搬入を認めるよう圧力が高まるとみられるが、イスラエルのネタニヤフ首相は「完全な虚偽」として、飢餓の発生を強く否定している。

総合的食料安全保障レベル分類(IPC)報告書によると、ガザ地区の住民のほぼ4分の1に相当する51万4000人が飢餓に瀕しており、この数は9月末までに64万1000人に達する恐れがある。このうち約28万人がガザ市を含むガザ地区北部に居住しており、この地域が飢饉に陥っていると判断した。また、ガザ中部デイルアルバラ、南部ハンユニスも来月末までに飢饉に見舞われる恐れがあると警告した。

IPCは国際的に認められた科学的基準に従って食料危機の深刻度と規模を判断するプラットフォームで、欧州連合(EU)、ドイツ、英国、カナダが資金を提供し、21の支援団体、国連機関、地域機関が参加。これまでに2011年にソマリア、17年と20年に南スーダン、24年にスーダンの4回、飢饉の発生を認定しているが、アフリカ大陸以外で飢饉の発生を認定するのは今回が初めて。

国連のグテレス事務総長は、飢饉は「人災」と非難。ガザ地区での即時停戦と人道支援の拡大を訴えた。 国連人道問題・緊急援助責任者のトム・フレッチャー氏は「イスラエルによる体系的な阻害のため、食料は境界沿いで滞留している」とし、「われわれに許可さえ与えられていれば防ぐことができた飢饉だ」と述べた。

ターク国連人権高等弁務官は、ガザの飢饉はイスラエル政府の行動の直接的な結果であると述べ、飢餓による死は戦争犯罪に相当する可能性があると警告している。

イスラエルは、IPC報告書はイスラム組織ハマスが提供した限定的なデータに基づいているとし、調査結果は「虚偽で偏っている」と反発。ネタニヤフ首相は「報告書は完全な虚偽」と強く否定した上で、「イスラエルは飢餓を政策としていない。飢餓を防ぐことを政策としている。戦闘開始以降、イスラエルはガザ地区への200万トンの支援物資の搬入を可能にしてきた。これは1人当たり1トン超に相当する」と反論した。

IPCは、少なくとも住民の20%が極度の食料不足に直面し、3人に1人の子どもが急性栄養失調に陥っていることなどを飢饉発生の判断基準としている。

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