欧州委が「X」調査強化も、投稿監視規定巡り-デジタル担当副委員長

欧州連合(EU)はイーロン・マスク氏のソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」がコンテンツモデレーション(投稿監視)規定に違反したかどうかを巡る調査の強化を検討している。EUの行政執行機関、欧州委員会のビルクネン副委員長(デジタル問題担当)が明らかにした。

  ビルクネン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、EUのデジタルサービス法(DSA)に基づいて現在進めているXへの調査について、「現在、その範囲が十分かどうか評価しているところだ」と述べた。

  欧州委は2023年12月、違法コンテンツや偽情報に対処していない疑いがあるとしてXに対して正式な調査手続きを開始。透明性に問題があり、誤解を招きかねないアプリのデザインだとして、規定違反の可能性もあると指摘した。

欧州委員会のビルクネン副委員長(デジタル問題担当)

  ドイツ連邦議会(下院)選を来月23日に控える中で、マスク氏が極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアリス・ワイデル共同代表の支持を表明するなど、極右政治家を後押しし始めたことから、EUはXへの監視を強めている。

  欧州委は、Xで先週ライブストリーミングされたマスク氏とワイデル氏の対談について、特定の候補者に不当な優位性をもたらすDSA違反に該当するかどうか検証している。EUはDSAに違反したオンラインプラットフォームに対し、世界年間収入の最大6%に相当する制裁金を科すことができる。

  ルーマニア憲法裁判所が先月、ロシアによる影響工作発覚を理由に大統領選挙の第1回投票のやり直しを命じたことを受け、欧州の選挙に対する介入への懸念が高まった。

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  しかし、強力な法的措置によって域外の大手デジタル企業をけん制しようとするEUの取り組みは、米国で第2次トランプ政権が20日に発足することで難しくなる公算が大きい。

  マスク氏がトランプ政権の中枢に入るほか、米ハイテク大手各社の経営陣はEUの規制を押し戻すようトランプ氏に働きかけている。

  マスク氏はXを巡りEU当局と公然と対立。同氏は以前、DSAに基づき不利な判断が下されば「法廷で闘う」意向をXで示している。一方、メタ・プラットフォームズのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は最近、EUの制裁金から米企業を守るようトランプ氏に求めた。

  ビルクネン氏はトランプ氏について、「米大統領に就任するのを楽しみにしている。緊密に協力する用意がある」と語った。

トランプ氏の大統領就任などについて語る欧州委員会のビルクネン副委員長(デジタル問題担当)

原題:EU Considers Expanding Probe Into Musk’s X, Digital Chief Says(抜粋)

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