【米国市況】株が終盤失速、国債は軒並み上昇-ドル全面高144円付近

22日の米株式相場は終盤に失速。S&P500種株価指数は日中の大半をプラス圏で推移したが、上げを消す展開となった。一方、世界の市場を揺るがした米国債の売りは一巡した。ドルも上昇し、円は対ドルで144円付近となった。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5842.01 -2.60 -0.04% ダウ工業株30種平均 41859.09 -1.35 0.00% ナスダック総合指数 18925.73 53.09 0.28%

  S&P500種は小幅ながら3営業日続落。ナスダック100指数は0.2%高。大手テクノロジー株は総じてアウトパフォームしたが、アップルが終盤に下げて、S&P500種を押し下げた。

  ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー最高投資責任者(CIO)は、米国債市場への圧力はやや和らいだが、株式相場が最近の高値に戻るには、債券利回りが「かなり大幅に低下する」必要があるだろうと指摘した。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル最高投資責任者(CIO)は、「貿易政策や財政見通しを巡る不透明感が再燃する中、市場のボラティリティーがまたも表面化している」と指摘。「債券利回りは高止まりし、関税と財政のリスクが焦点となっている。投資家は今後の政策動向を注視しており、ボラティリティーは続く可能性がある」と話した。

  最近の米国債売りは米財政見通しに対する懸念を反映したものだった。投資家はトランプ米大統領の看板政策である大型税制・歳出法案について、既に膨らんでいる財政赤字をさらに拡大させると懸念している。同法案は下院を僅差で通過した。

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  シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は、市場のムードは不安定なままだと指摘。利回りの高止まりはリスク資産に「とりわけ不利だ」との見方を示した。

  「ウォール街の最近の下げは比較的限定的だったが、今後さらなる波乱が起こり得るという不安感が強い。米国株に対する強気な見方に疑問が生じている」と同氏は述べた。

  ゴールドマン・サックス・グループのトレーディングデスクによると、米10年債利回りは米株市場に痛みを与える節目の水準に近づいた。

  同部門の試算によれば、米10年債利回りが1カ月間で2標準偏差に相当する約60ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上上昇すると、株式市場に圧力がかかるという。

国債

  米国債は上昇(利回りは低下)。最近大きく売られていた長期債も持ち直した。30年債利回りはこの日一時5.15%に達したが、こうした水準が押し目買いを誘発した。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 5.04% -5.4 -1.06% 米10年債利回り 4.53% -7.2 -1.56% 米2年債利回り 3.99% -3.4 -0.84%     米東部時間 16時45分

  マッコーリーのティエリー・ウィズマン氏は、「米国が赤字を削減できないからといって、デフォルト(債務不履行)につながるとは限らない。それでも大幅な赤字は債券の供給拡大を意味する。恐らく最終的には、デフォルトを回避するために債務がマネタイズされることでインフレを引き起こすだろう」と指摘。「いずれにせよ、名目ベースの固定利付資産は長期的な投資対象としての妙味が薄れる」と述べた。

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  米国の企業活動と生産の見通しは5月に改善した。関税による価格上昇圧力は高まり続けているものの、貿易を巡る不安は後退した。先週の米新規失業保険申請件数は減少し、4週間ぶりの低水準となった。一方、4月の米中古住宅販売件数は市場予想に反して減少し、7カ月ぶりの低水準となった。

  ストラテガス・セキュリティーズのドン・リスミラー氏は「経済の『ハードデータ』は米経済が苦境にあることをまだ示していない」と指摘。「一部の経済活動は、関税の導入に先立ち前倒しで行われた可能性がある。その反動が出始めるはずだ。政治家に対する債券市場の規律が少しでも働けば、予算交渉が夏にかけて進む中、住宅や自動車など金利に敏感な分野への向かい風が強まる」と語った。

  「米金融当局は支援に動く準備がまだできていない」とリスミラー氏は付け加えた。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は、トランプ政権が貿易相手国に対して課している関税が10%前後で落ち着けば、FRBは2025年後半に利下げする可能性があると述べた。FOXビジネスで発言した。

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外為

  外国為替市場ではドルが主要10通貨に対して全面高。円は対ドルで下落し、前日付けた1ドル=144円40銭に迫った。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1220.88 2.04 0.17% ドル/円 ¥143.96 ¥0.28 0.19% ユーロ/ドル $1.1281 -$0.0050 -0.44%     米東部時間 16時45分

  この日は米企業活動と生産の見通しが改善したことなどもドルの支えになった。

  米大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長は、政府が密かにドル安誘導の国際的取り決めを画策しているとの見方を否定し、強いドルの利点を強調した。

  「米国は強いドル政策を維持している」とミラン氏はブルームバーグのポッドキャスト「ビッグテイクDC」で言明。為替についてはベッセント財務長官が政府の見解を公式に表明する役割を担うと指摘した上で、国際的なドル安協定の臆測について「われわれがひそかに進めているという事実はない。まったく根拠のない話だ」と話した。

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  JPモルガン・アセット・マネジメントの米州チーフ市場ストラテジスト、ガブリエラ・サントス氏は、ドルの下落はいったん落ち着いたものの、数年にわたるドル安トレンドは始まったばかりだと指摘。米国の財政見通しが焦点となっており、ドル一段安のきっかけとなる可能性があると述べた。

  ドイツ銀行のとティム・ベイカー氏は、米財政を巡る懸念が長引けば、最終的には米国債よりもドルがより大きな代償を払うことになるかもしれないと警告した。

原油・金

  原油先物相場は3営業日続落。貿易戦争による需要減が懸念される中、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成されるOPECプラスが7月の大規模な供給引き上げを協議していることが意識された。

  OPECプラスの主要8カ国は6月1日にビデオ会議を開催し、7月の生産水準を決定する。日量41万1000バレルの増産が検討されており、これは当初計画の3倍に相当する。実現すれば3カ月連続の供給拡大となる。

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  RBCキャピタル・マーケッツのチーフ商品ストラテジスト、ヘリマ・クロフト氏は「最も可能性が高いのは7月から日量41万1000バレルを追加する案であり、その大半はサウジアラビアによる供給になる見通しだ」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前営業日比37セント(0.6%)安の1バレル=61.20 ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限は0.7%下落し64.44ドル。

  金相場は反落。金スポット価格はニューヨーク時間午後3時21分現在、前日比20.07ドル(0.6%)安の1オンス=3294.89ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、18.30ドル(0.55%)安の3323.60ドルで引けた。

原題:Stocks Lose Steam in Final Minutes of US Trading: Markets Wrap(抜粋)

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