古代ローマのコンクリート、ポンペイ遺跡の発掘で製造法が明らかに

ベズビオ火山の噴火で破壊されたポンペイ遺跡のカリグラ門/Frank Bienewald/LightRocket/Getty Images/FILE

(CNN) 古代ローマの建築に使われていたコンクリートは、自己修復機能を持つことが知られている。当時の都市ポンペイの遺跡で、このコンクリートがどのように作られていたかを明確に示す建築現場の跡が発掘された。

古代ローマ帝国では多くの技術革新とともに、建築分野にも大改革が起き、大規模なアーチやドーム屋根などが登場した。建築物の多くは2000年以上経った今も残っている。

そのすべてを可能にしたのが当時の完璧な建材、つまり自己修復するコンクリートだ。

ポンペイは紀元79年、ベズビオ火山の噴火で6メートルもの灰に埋もれた。ちょうどこの時、1軒の家で修繕、改築工事が進められていた。2023年に国際共同チームが発掘した当時の工事現場では、部分的に完成した壁のほか、資材や工具も見つかった。

この発見についての研究論文が今月、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表された。研究を率いた米マサチューセッツ工科大学(MIT)のアドミル・マシック准教授は「発掘現場に足を踏み入れると、何もかもが鮮烈で、ほぼ完璧に保存され、当時の状況がはっきり見えるようだった」と振り返る。「時間が止まったままになっている。文字通りのタイムカプセルだ」

MITの発表によると、今回の発見は古代ローマのコンクリート製造法を示す最も明確な証拠となった。マシック氏はCNNとのインタビューで、「ローマの技術についてこれまで出せなかった結論、少なくともこれほどの確信は持てなかった結論を導き出すことができた」と述べた。

建築現場の状況が明らかに

ポンペイ遺跡の3分の1は未発掘のままで、当時の暮らしをめぐる新たな発見が今も続いている。今回の研究が取り上げた建築現場は1880年代末に初めて調査されたが、発掘は中止されていた。2023年の再開時になって、マシック氏らのチームがその重要性に気づいた。

「ポンペイではよくあること。発掘は少しずつ、しかし着実に進められている」と、マシック氏は説明する。「私が思うに、とても慎重な発掘が標準のようになっている。いったん発掘するとタイムカプセルを破ることになり、劣化が始まるからだ。すべてを完璧に保存していた保護を外すことになる」

研究チームは発掘作業の後、見つかった遺物を分析した。この中には、作業員たちがコンクリートを作るのに使っていた材料の山や、建てかけの壁、完成した構造壁などが含まれていた。

マシック氏が古代ローマのコンクリート製造法に関する発見を報告したのは、実はこれが初めてではない。同氏は23年の論文で、イタリア中部プリベルノにある2000年前の城壁のサンプルを分析していた。その中に含まれる小さな石灰の粒が、コンクリートに自己修復機能をもたらすという。壁にひびが入って水や雨が入ると、石灰の粒が溶け出し、それが乾いて再結晶化することによってひびがふさがれる。

作り方の違い

マシック氏らのチームによると、この粒は石灰と乾いた火山灰などを混ぜた後で水を加える「熱混合」という工程で形成されたとみられる。水を入れると化学反応で熱が発生し、溶けきれなかった石灰の粒がコンクリートの中に閉じ込められる。

ただしチームは当初、城壁の例が当時の建築を代表しているのかどうか確信を持てなかった。この工程は、古代ローマの有名な建築家ウィトルウィウスが書いた著作「建築について」のコンクリート製造法とは異なっていたからだ。

ウィトルウィウスが示したのは熱混合でなく、石灰にまず水だけを加えてからほかの材料と混ぜる方法だった。だが今回ポンペイで発掘された建築現場では、材料を乾燥した状態で混ぜていたことが分かり、熱混合が採用されていたことが確認された。

マシック氏は「ウィトルウィウスが間違っていたとは非常に考えにくい。私はウィトルウィウスを尊敬し、すべての研究で影響を受けてきた」と話す。同氏によれば、ウィトルウィウスの製造法がローマ帝国内のほかの場所で採用されていた可能性や、著作が誤解されたり、十分に読み解かれていなかったりする可能性もあるという。

今回の研究に参加していない米アリゾナ大学のジョン・センセニー准教授は、ポンペイの建築現場でウィトルウィウスの方法が使われていなくても驚くことではないと述べた。同氏によると、ウィトルウィウスの著作は1000年以上経ったルネサンス時代の建築家に大きな影響を及ぼしたが、ローマ帝国時代の建物に反映された例を見つけるのは難しい。

センセニー氏は「今回のような発見によって、平民の労働者や、さらには奴隷が古代史に大きくかかわっていた事実が浮き彫りになる。知識人の著作からは直接感じ取れないことだ」と説明。神殿や円形闘技場などの古代建築を例に挙げ、「それぞれの技能にたけていた庶民の専門知識や技術革新」が表れていると指摘した。

マシック氏は、今回の発見をきっかけにウィトルウィウスと現存のローマ建築に関する研究が進むことを期待すると述べた。

また「現在の建築が2000年後にどれだけ残っているか確信が持てない」とも話し、古代ローマの工程を現在に活用する方法を検討したいと意欲を示した。

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