「博打ではないんです」冨安健洋とリバプールサポ感嘆…遠藤航が明かす“あの極上守備”「サラーさん、もう1点取ってね」出場時間少ない問題も言及(Number Web)
遠藤航は戦術の基本や理想を理解しながら、勝つ確率を上げるために、セオリーから外れた、現場での判断をしていける貴重な選手だ。 プレミアリーグで活躍を続けるための頭脳を明かした貴重な機会があった。今年6月、「月刊・遠藤航 The REAL PICK UP MATCH」という自身のオウンドメディアでのイベントが行なわれた。 映画館のスクリーンを借りきり、プレミアリーグのライツホルダーであるU-NEXTの協力を仰いで試合映像を使い、冨安健洋をゲストに招いてのプレー解説中のことだ。 スロット監督の指示を踏まえながら、そこにアレンジを加えた試合の一つとして遠藤が挙げたのが今年2月に行なわれたマンチェスター・シティ戦だった。 73分にピッチへと送り込まれるとき、相手の2列目中央――マカティやギュンドガン――を一度つかまえたらマンツーマンで、という指示を受けていた。 しかし、それ以外の仕事をすることが重要だった。 たとえば、シティのアタッカーであるドグはリバプールから見た右サイドで一対一の勝負を再三仕掛けきた。そこで右サイドバックを務めていたアーノルドを助けに行った。本来のタスクである、中央2列目の選手のマークをいったん離してまで……。遠藤はこう振り返る。 「俺の判断で2対1を作っていた感じですね。それは残り15分の守備の個人戦術になると思います」
そんな遠藤のレクチャーを受け、司会者や冨安との間で話題に挙がったのが、右ウイングのサラーの仕事について。もしもチーム戦術を機械的に実行するのであれば、サラーが自陣の低いところまでしっかり戻ってくるべきだろう。 もちろん、遠藤は“原則論”を踏まえたうえで、自身のプレーと立ち位置を通じてチームのキングであるサラーに対して、こんな考えを表現していたという。 「サラーさん、戻ってこなくても大丈夫! 前線でステイしていて」 遠藤はその意図を強調する。 「残り15分で入る意味は、そこで俺が“無駄に動く”ことだから。勝っているシチュエーションで、フレッシュな状態でボランチとして出るからには、それくらいのタスクをこなさないと。 前提として、サラーはちゃんと守備をやっていますよ。ただ、(先発した選手にとって)試合の残り10分から15分になると、キツくなってくる時間帯だから。あの時間帯でオレがいれば、サラーのようなウイングの選手は前に残れるから。それがチームのためにプレーするということ」 ただ、心のなかでは、こう願ってはいた。 「サラーさん、そのかわり、カウンターからもう1点取ってね(笑)」
Page 2
自身の得意なプレーを自ら言うのは気が引けるが、日本を代表するディフェンダーから指摘されれば遠藤も口を開く。 「もはや、相手が足を出すのを待っているから。ボールを(相手が)触れない感じのところに置いて、相手の足が見えたら自分の足を出す。そうすれば絶対に(相手の足が自分の足に)当たるじゃないですか。体が前に入ってしまえば、あとは相手が押してくれれば、『ありがとうございます』という感じです」 冨安はそれを聞いて、こう付け足すのを忘れなかった。 「しかも、博打ではないんですよ。倒されたけどノーファールになってしまうということがないから」 そのあたりは代表でもシント・トロイデンでも一緒に戦った冨安ならではの感想でもあった。
ちなみに、第1回でも触れた日本代表の遠藤について挙がる不安の声について、本人がどう考えているのか。その答えが先のイベントでは明かされていたので紹介しよう。 不安の声とは――出場時間を踏まえた体力面についてだ。2つの数字を並べてみる。 24-25シーズン、リバプールでの出場総時間:261分 シュツットガルト時代の3シーズン平均出場時間:2928分 およそ91%も減ったことに不安視する声がある。32歳とまだ老け込む歳ではない。昨シーズンはプレミアリーグのトロフィーも掲げたとはいえ、「今シーズンは次のステップへ」と考えたとしても、決して不思議ではない――というのは、どうやら外野の勝手な意見だったようだ。 当の遠藤が以下のように語ったのだから。 「『クローザー』というのは、自分が置かれた立場で、最終的に勝ちとったポジション。与えられた役割をしっかり全うした結果、『クローザー』と呼ばれるようになったわけです。今シーズン(2024-25シーズン)で自分の存在意義を見出した最大の成果なので」 このイベントで改めて明確になったことがある。スロット監督から与えられた役割について、リバプールファンを除く大半の人が想像している以上に、遠藤は手ごたえを得ていたことだ。 「自分が『クローザー』という(仕事人の)新しいモデルになるくらいの感じで、プレーしていければいいかなと思うんです」 「新しいモデル」になるというのは、遠藤の生き方を象徴するテーマかもしれない。遠藤は、日本代表キャプテンとしても、新しいモデルを見せている。 先代の吉田麻也は細かく選手たちに声をかける「昭和の母親的」、その前の長谷部誠(現日本代表コーチ)は口を開く必要があるときには誰だろうと厳しく声をかける「昭和の父親的」リーダーシップだった。