ベラルーシ「終身大統領」へ道 ロシアは支配固める

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旧ソ連のベラルーシで26日に投開票された大統領選で、独裁的な体制を敷くアレクサンドル・ルカシェンコ氏(70)の7選が確実となった。任期は2030年までの5年間。1994年から続く長期支配体制を固め、同盟国であるロシアとの結束を一段と強める方針だ。

ベラルーシ中央選管は27日、ルカシェンコ氏の得票率が暫定結果として約87%だったと発表した。国営ベルタ通信によると、事前の調査では国民の82%超が現職のルカシェンコ氏に投票すると答え、同氏の当選が確実な情勢とみられていた。

ルカシェンコ氏を除く有力な候補者は不在の状況だった。政権に批判的な候補者を実質的に排除するため立候補資格を厳しくし、対抗馬は政権に近い政党などからの4人に限られた。

ベラルーシは22年の憲法改正で大統領任期を2期10年に制限する規定を復活させ、現職の任期をリセットした。ルカシェンコ氏は最長で35年まで大統領を務めることが可能で、独裁的な権力基盤を維持しようとしている。

ロシアのプーチン大統領も20年の改憲で36年までの続投が可能になった。両氏とも実質的な「終身大統領」を視野に入れる。

当局は今回の選挙に向けて警備や監視などの統制を強化してきた。ベラルーシの人権団体「ビャスナ(春)」によると、24年は少なくとも1700人超が政治犯として有罪判決を受けた。

前回20年のベラルーシ大統領選では、政権側による大規模な不正があったとして、市民や野党勢力は選挙日の夜から全国で抗議デモを展開。首都ミンスクでは10万人を超すデモ参加者が大統領府に迫ったが、今回は国内で目立った抗議の動きはなかった。

国外からは批判が相次ぐ。前回選挙に立候補して得票率で2位だったスベトラーナ・チハノフスカヤ氏は今回の選挙を「茶番劇」と批判した。ロイター通信は1月、同氏が「民主主義の世界で選挙と呼ばれているものはベラルーシでは異なる」と述べたと報じた。

チハノフスカヤ氏は前回選挙に立候補しようとして拘束された夫に代わって出馬し、結果への異議を申し立てた。その後政権の圧力で出国を強いられ、現在は隣国のリトアニアなど国外で活動している。

欧州連合(EU)の欧州議会は20日にベラルーシ大統領選を「民主的選挙の最低限の国際基準を満たしていない」と非難する声明を発表した。欧州安保協力機構(OSCE)は監視団を派遣しない。

ベラルーシは経済制裁を科す西側諸国との対立を深めている。同国では在留外国人が拘束される事態が続いており、24年12月には2人目となる邦人拘束が明らかになった。

ロシアはルカシェンコ氏の7選でベラルーシへの支配を一層固める。ベラルーシは東側の国境をロシア、南側をウクライナ、西側をポーランドに接する旧ソ連諸国だ。ロシアにとっては北大西洋条約機構(NATO)加盟国と対峙する上でも重要な同盟国となる。

プーチン氏は19日のルカシェンコ氏との電話協議で「選挙の成功を祈る」と述べた。ロシアの駐ベラルーシ大使は妨害行為などがあった場合はベラルーシを支援する意向を示すなど、干渉姿勢が明らかだ。

ロシアはウクライナを支援する欧米諸国に対抗し、23年にはロシアの戦術核をベラルーシ国内に配備するなど軍事面での連携を強めた。

プーチン氏は24年12月に新型の中距離弾道ミサイル(IRBM)「オレシニク」を25年後半にもベラルーシに配備する可能性について言及した。

IRBMは一般的に射程が3000〜5500キロメートルとされ、欧米諸国を威嚇できる。ルカシェンコ氏は26日の記者会見でオレシニクについて「近日中にベラルーシに配備される」との見方を示した。同国東部への配備を予定しているという。

ベラルーシ経済はロシア同様、軍需産業に下支えされ比較的堅調だ。ベラルーシのゴロフチェンコ首相はベラルーシの24年国内総生産(GDP)成長率が4%になったと述べた。国営ベルタ通信が伝えた。

ウクライナ侵略が起きた22年はマイナスだったが、23年以降はプラスに転じた。ロシアのウクライナ侵略を軍事的に側面支援していることが経済をけん引しているとみられる。

ルカシェンコ氏の選挙公約は「ロシアと協力し信頼できる安全保障を確保する」とうたう。軍事・経済の両面で2国間の結びつきがさらに強まるのは確実だ。

ルカシェンコ氏はベラルーシ北部で生まれた。大学卒業後に農業を学び1987年には国営農場長に抜擢(ばってき)された。旧ソ連でペレストロイカ(改革)の動きが盛んになる中で政治家を志す。ソ連から独立後の94年大統領選で当選し「欧州最後の独裁者」と呼ばれる。

2023年6月にロシアで反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの武装蜂起では、20年来の知人というプリゴジン氏(故人)とプーチン大統領の仲介役を担った。プリゴジン氏はロシアの首都モスクワの南方約200キロメートルにまで接近していたワグネルの部隊を撤退させた。

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