『崖の上のポニョ』のモデルは「金魚」ではない! 何の「さかなの子」なの?

『崖の上のポニョ』のヒロイン的存在、ポニョは人魚的な見た目から人間的な見た目まで、さまざまな姿に変化します。作中で「さかなの子」といわれているポニョはいったい、何の魚の子供なのでしょうか? 彼女の母、グランマンマーレの驚きの設定とともに、この疑問の答えを探りました。

ポニョは何の「さかなの子」? 画像は『崖の上のポニョ』静止画より (C)2008 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDHDMT

 2025年8月22日に放送される「金曜ロードショー」にて、スタジオジブリの名作『崖の上のポニョ』が放送されます。今作では、小さな魚から半魚人、そして人間の女の子とさまざまな姿に変わる、さかなの子「ポニョ」のコミカルな姿が楽しめます。このポニョについて、作品説明や主題歌でも一貫して「さかなの子」と表現されていて、なんの魚なのかは明確にされていません。

 そんなポニョの正体について、宮崎駿監督がカリフォルニア大学バークレー校の日本研究センターの記念講演にて語っているシーンがあります。実は当初、ポニョはブリキの赤いカエルという設定が与えられていたそうです。しかし、キャラクターのデザインを描いているうち、見覚えのあるものしか描けなかったということで、金魚という設定へと変わりました。

 そこから、「本来は淡水魚である金魚が海に存在するのは矛盾するのでは?」ということで、この設定もお蔵入りに。結果、ポニョはあくまで「さかなの子」という説明がされるにとどまり、具体的な種類については公式に語られることはありませんでした。

 それでも、金魚っぽいカラーリングやカエルっぽい見た目など、キャラクターのデザインには過去の設定を随所に感じることができます。中国のタイトルも、当初は『懸崖上的金魚姫(懸崖の上の金魚姫)』だったのが上映発表時には『崖上的波●』というタイトルに変わっています。これもまた、ポニョの設定が金魚だったことの名残なのかもしれません。

 なお、ポニョの母親「グランマンマーレ」については著書『続・風の帰る場所―映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』にて、そのモチーフが明言されています。なんと、グランマンマーレの正体は「体長が1kmほどの超巨大なチョウチンアンコウの化け物」なのだそうです。

 チョウチンアンコウは非常に繁殖方法が独特です。メスよりもはるかに小さなオスは、メスに噛みつく形でそのまま融合し、メスから栄養をもらいつつ精子を提供する、いわば器官となるのです。1匹のメスが複数のオスを寄生させることも多いとされています。

 グランマンマーレは、偉大な海の母という神様的な特性も持っており、何千人も亭主がいるという特徴があります。数ある亭主のひとりであり、元人間の「フジモト」との間に生まれた子供が、さかなの子であるポニョなのです。

※「崖上的波●」の「●」は「女」+「丑」が正しい表記。

(サトートモロー)

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