遅きに失した関税一時停止、米国離れが既に進行中-MLIV調査
トランプ米大統領が広範な関税措置の一時停止を発表したにもかかわらず、投資家は引き続き米国資産を敬遠し、欧州やその他の先進国市場を選好している。最新のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査で明らかになった。
トランプ氏は9日、米国に報復措置を講じていない国・地域を対象に上乗せ関税を90日間停止すると発表。今回のMLIV調査はこの発表後である9日から11日にかけて実施された。
それによると、回答者203人のうち81%が米国資産へのエクスポージャーを「維持」または「減らす」と答えた。4分の1余りが、今月初めに大統領が最大50%の世界的な関税を発表する前の想定よりも、投資を抑制する計画だと回答した。
米国以外の市場に目を向ける投資家は半数を超え、中でも欧州が代替先として人気があり、約3分の2が選好している。先進国市場が新興国市場よりも好ましいと答えた投資家は81%に上った。
当初の関税発表から一時停止前までの期間である4日から9日にかけて実施された別の調査でも同様の傾向が見られた。回答者647人のうち半数余りが米国資産への投資を減らす予定だと回答した。
「不確実性プレミアム」
ブルームバーグ・エコノミクスによると、関税一時停止後も米国の平均関税率は26%強と、トランプ大統領の2期目スタート以降に約24ポイント上昇している。
S&P500種株価指数は、関税ショックで大幅下落を記録していたが、関税一時停止の発表後に急反発。週間で2023年以来の大幅高を記録した。
一方、ブルームバーグ米国債インデックスは先週、2019年9月以来の大幅下落となる場面があった。一部の投資家は、これを貿易の混乱によって引き起こされた持続的なダメージの表れと受け止めている。
「『政策の不確実性プレミアム』と呼べるだろう」と、ジェフリーズ・インターナショナルのチーフストラテジスト、モヒト・クマール氏は指摘。引き続き米国市場からの資産シフトを投資家に推奨している。
成長見通し
過去1週間にわたるトランプ政権の貿易政策の混乱は、今年の米経済見通しに暗い影を落としている。
3月に公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の経済見通しでは、25年の実質国内総生産(GDP)成長率予想が2.1%から1.7%に下方修正された。関税一時停止後に実施されたMLIV調査では、回答者の3分の2が米金融当局の予想よりもさらに低い成長率を見込んでいる。
連邦準備制度の内部でもそうした見方が広がりつつあり、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11日、今年の実質GDP成長率が「おそらく1%を下回る」との見通しを示した。
投資家はドルに対しても悲観的な見方を強めている。向こう1カ月間のブルームバーグ・ドル・スポット指数について、回答者の77%は下落を予想。2022年までさかのぼるデータで最も弱気になっている。同指数は11日に6カ月ぶりの安値を付け、昨年11月の大統領選でのトランプ氏勝利後の上昇分を消し続けている。
原題:Tariff Pause Comes Too Late With US Exodus Underway: MLIV Pulse(抜粋)