日本中が「りくりゅう」に“コンビ萌え”したワケ…「絶望で折れた」木原龍一(33)を9歳下の三浦璃来が“静かに見守った”金メダルへの物語(文春オンライン)

「りくりゅう」ペアは、オリンピック史上、最強の物語を提示したのではないか?  ショートプログラム、得点源とするリフトでミスが生じ、まさかの5位スタート。直後の「キス&クライ」で33歳の木原龍一が激しく動揺した姿は尋常ではなかった。 【写真】「龍一君がずっと泣いているんですよ」「璃来ちゃんじゃなければ…」りくりゅうの“仲良し&息ぴったり”な瞬間を振り返る  あれは、間違いなく荒ぶっていた。  アスリートが感情を爆発させるのは珍しいことではないにせよ、相棒がいる競技でこれだけ感情を露にする人は珍しい。  24歳の三浦璃来も普通ではいられなかったはずだ。しかし、木原の感情表現がストレートすぎたため、相対的に冷静にならざるを得ないように見えた。年齢が下の三浦が、木原を慰める“構造”になったのが印象深かった。  いま、日本は「コンビ」「ペア」の物語を求めている。 『M-1グランプリ』もそうだ。ふたりがどんな道をたどって来てコンビを組んだのか、それがひとつのストーリーとなる。オリンピックでも選手たちの関係性に焦点が当たっている。以前より、その傾向が強くなっていると思う。  りくりゅうの場合、ショートプログラムのシーンひとつ取っても、「コンビ萌え」の要素は十分だったが、ふたりのキャラクターがひじょうに立っているのも強い。木原は、自分の性格をこのように分析している。 「自分で言うのもなんですが、自分は結構真面目で、考えすぎてしまう癖があって、どんどんマイナスに思ってしまう癖があって」  真面目で内向的。画面からでも、なんとなくそれは分かってしまう。なにか「こと」が起きると、ネガティブに振れやすいようで、優勝後の会見でも、ミスを犯した後の感情を「絶望」という単語を使って表現していた。

「ショートが終わった後は絶望的な感じで、点数差も絶望しか残っていなかったので、僕自身の心というのはすごく折れてしまっていたんですけど」  あの夜は絶望で睡眠不足に陥ったという。この言葉を聞いていると、逆転の目はないように思える。  自分の傍に、これだけ「ダウナー」な人がいたとしたら、どんな言葉をかければいいのだろう? 正直、分からない。  三浦はどうしたのか? 優勝後の会見で、その時の自分の感情のことはあまり語らず、相棒の姿をこう描写した。 「龍一くんが、演技が終わったあとに大泣きする場面というのは、1年に1回のイベントなので、まったく珍しいものではなかったですが、フリーの当日練習から、ぽろぽろぽろぽろ泣いていて」 「ぽろ」が4回。だいぶ多い。どうやら励ますのではなく、木原が「戻ってくる」のを静かに待つスタイルのようだ。それは7年間、一緒に組んできての「知恵」なのだろう。  では、どうやって木原は戻ってきたのか?   昼寝だった。 「フリーの公式練習のあとに1時間ほどしっかり寝たら、逆に気持ちもリフレッシュできて。そこから、『もう強い自分に戻ったから』と璃来ちゃんに宣言しました」  木原が強烈なキャラを見せる一方で、三浦の印象的なシーンは、フリーの演技が終わってから「暫定王者席」で他の選手たちの演技を見守り、その結果、金メダル獲得が決まったあとの「スポーツマンシップ」を見せた場面である。  フリーの最終滑走はドイツペア。このボロディン・ハーゼ組の得点が発表されると、三浦は喜んでいいものかどうか、しばし戸惑っていたように見えた。  銅メダルを手にしたとはいえ、近くには失意のドイツペアがいた(『M-1グランプリ』のような暫定王者席はスポーツでは残酷だと思う)。  三浦が見せた感情は遠慮であり、情であり、気づかいだった。  三浦の「日本人的な美徳」が見えた瞬間だったが、一方の木原がショートプログラムの時とはうって変わって、「ハグ・モード」になっていたのも、なんだか微笑ましかった。

文春オンライン
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