「今日のウクライナは明日の東アジア」…インドを代表するジャーナリスト、ラジャ・モハンが警告!その中身とは?(Wedge(ウェッジ))

 インドを代表するジャーナリストの一人であるRaja Mohan氏がForeign Policy誌(ウェブ版)に8月20日付けで掲載された論説‘Is Ukraine the Future of Asia?’において、「今日のウクライナは明日の東アジア」との警告を発しつつ、改めて米国に依存することのリスクを強調している。要旨は次の通り。  2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻した際、当時の岸田文雄首相は、この戦争とその結末がアジアの未来を予兆すると警告した。  ところが3年後、トランプはゼレンスキーに対し、不確実な和平と引き換えに領土を明け渡すよう圧力をかけ、これに欧州の同盟国も従うことを求めている。アジアにとりトランプの高圧的な外交は、米国がインド太平洋地域の安全保障にとって信頼できる保証人であり続けられるのかという、懸念すべき疑問を提起している。  日本は、西側諸国によるロシアへの抵抗を支持するだけでなく、積極的な参加者となった。日本は豪州、ニュージーランド、韓国とともに、22年の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加し、大西洋同盟の安全保障をアジアの懸念事項に組み込む意欲を示した。  しかし、これらのアジア太平洋諸国にとり、この決定は今や誤った判断だったように思える。トランプ大統領がウクライナ政策を転換したことで、彼らは危険にさらされている。  これに対し中国、インド、そして東南アジアの大半の国々は、ロシアの侵攻を直接非難することを避けた。彼らは、今では先見の明があったようにも見える。米国が方針を転換し、ウクライナを犠牲にしてロシアとの妥協を模索していることで、これらの国々は西側諸国の圧力に抵抗したことの正当性を主張できるだろう。

 一方、アジア自身の安全保障上のジレンマは、さらに深刻化するばかりだ。この地域における中国の力は、欧州におけるロシアの力をはるかに凌駕している。欧州の端に位置するロシアと異なり、中国はアジアの中心に位置し、多くの国々と長い国境線と戦略的な海域を共有している。  ウクライナにおいて武力による国境変更を禁じる規範が揺らいでいることは、中国を勢いづかせる可能性がある。もしロシアが、何の責任も負うことなく領土獲得のための武力行使を許され、さらに領土まで与えられることになれば、中国の近隣諸国は海上で中国が同様の戦術をとることを恐れるだろう。台湾は、特に危険に直面している。  米露関係の改善は、インドにとり戦略的な救済にならない。ワシントンは、インドのロシアからの原油輸入を標的にしながら、もう一つの主要輸入国である中国には手を出さない。トランプは、二大国との関係再構築を優先する中で、アジア全域の同盟国やパートナーを軽視するリスクを冒している。  二国間あるいは非公式のミニラテラル形式で活動するアジアの同盟国は、NATOや欧州連合(EU)といった制度的緩衝材の恩恵を受けている欧州とは異なり、はるかに米国の政策変更の影響を受け易くなっている。  トランプのウクライナ戦略は、彼の「アメリカ第一主義」の世界観の本質を浮き彫りにするものだ。同盟関係や安全保障上の利益は脇に追いやられ、経済ナショナリズムが優先されている。ウクライナ問題におけるプーチンとの外交は、同盟国の安全保障上の懸念さえも、トランプの中露両国との安定的な関係構築というビジョンと衝突すれば犠牲になる可能性があることを示唆している。  アジアの同盟国にとって、米国のコミットメントが不確実かつ不安定になり、地域の安全保障の負担が自らの肩にさらに重くのしかかる将来に備える必要があるかもしれない。 *   *   *

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