「NO CAT NO LIFE」な小泉今日子さん、「猫をお母さんのように思っている」その理由は
歌手で俳優の小泉今日子さんをゲストに迎えた「小泉今日子×ニャンコロジー 猫学フォーラムSpecial」(読売新聞社主催、協賛・いなばペットフード)が7月24日夜、東京都千代田区のよみうり大手町ホールで開かれた。読売新聞オンラインの連載コラム「 猫学(ニャンコロジー) 」の2周年を記念したフォーラムの模様をダイジェストで紹介したい。
第1部 小泉さんが語る「猫のいる暮らし」
まずは、第1部の「小泉さんが語る『猫のいる暮らし』」から――。
家族は4匹の猫
「小泉今日子×ニャンコロジ- 猫学フォーラムSpecial」に出演した俳優・歌手の小泉今日子さん(7月24日、東京都千代田区で)=安川純撮影「NO CAT NO LIFE」。この日の小泉さんは「猫がいない人生は考えられない」という意味を英語で書いたTシャツを着て、ステージに登場。大型スクリーンには、4匹の猫の愛くるしい姿が次々と映し出された。
「実家ではいつも猫が身近にいました」。しかし16歳で歌手デビューし、一人暮らしを始めてからは、猫に寂しい思いをさせたくないと、飼うのは諦めていた。
約20年の年月が過ぎ、私生活の変化もあった頃。「一人暮らしには相棒が必要だと感じて、ついに猫を迎えました」。子どもの頃以来の猫との暮らしが新たに始まった。
猫との出会いは運命
「猫との出会いは、運命で決まっていると信じています」。小泉さんは自身の経験を基に、次のようなエピソードを教えてくれた。
出会った日に優しい雨が降っていたことから、「 小雨(こさめ) 」と名付けたロシアンブルーの猫。日々の暮らしを「小雨日記」のタイトルで著すほど愛したのに、突然の別れが訪れる。以後は猫を飼う気持ちになれず、洋服に亡き愛猫の毛が付いているのを見て、ドラマのロケ先で涙が止まらなくなったことも。そんなある日、不思議な夢を見る。
「小雨が現れ、海岸で2人で鬼ごっこみたいなことをして、楽しくてずっと笑っている夢を見たんです」
何かのメッセージのような夢。翌日、友人から、保護猫のボランティアのところに黒猫がいるという連絡が入る。「あの夢は、『次の猫ちゃんをかわいがってね、もう大丈夫』って、小雨に言ってもらえたのだと思いました」。黒猫は姉妹だったため小泉さんは両方とも引き取ることにした。
スクリーンの黒猫は音楽ユニット「黒猫同盟」結成のきっかけにも黒猫姉妹は、黒猫好きの上田ケンジさんとの音楽ユニット「黒猫同盟」を結成するきっかけにもなった。
「猫は私のお母さん」
現在は、他界した母親が飼っていた三毛猫と暮らす。猫のいない生活はいまや想像もできない。そんな小泉さんにとって猫とは何か――。
「猫の存在は、一人暮らしに、最低限の秩序をもたらしてくれる」。猫の視線を感じるので、きちんとしなければと思うのだ。「猫を自分の子どものようだという人がよくいますが、私は猫を自分のお母さんのように思っています」
「自分の猫がもちろん一番かわいいですが、猫をかわいいと感じる気持ちが芽生えると、ハトでもスズメでも、他の生き物たちもかわいく感じて、猫に見えてきちゃうの」。その話しぶりに、会場も和やかな笑いに包まれた。
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自身の経験から、猫と暮らすことは、人と同じような覚悟が必要だとも説く。「私は来年60歳、還暦を迎えるので、猫を飼っても大丈夫なものだろうか、と。私自身、長生きできるものなのかなと思っています」
自分の身に何かあった場合に備え、信頼のおける友人らに日頃から猫を会わせるようにしている。新たな飼い主になってもらう際、互いに慣れていれば安心だからだ。
「還暦を前にした一人暮らしの女が、猫とばかり話していたら『かわいそう』と思われるかもしれません。でも私は猫と韓国ドラマがあれば、これからの人生も、楽しく暮らしていけると思います」。自嘲気味の口調に、会場はどっと沸いた。
第2部 人生100年時代の猫との暮らし方…高齢者こそ猫を飼うべし
エンディングでは「ミー太郎」の登場で会場ともども笑顔があふれた。(右から)石田会長、小泉さん、ミー太郎、宮沢次長第2部は、ねこ医学会の石田卓夫会長を交え、トークセッションが行われた。テーマは「人生100年時代の猫との暮らし方」。コラムの執筆者で読売新聞科学部の宮沢輝夫次長が進行を務めた。
「還暦になっても猫を飼えるのかしら」。小泉さんの問いに、石田会長は「還暦の方はむろん、高齢者でも猫を飼うべきですね」ときっぱり。
孤独がストレスになる高齢者にとって、猫は「話し相手になり、心身への好影響が期待できる」。「ペットと見つめ合うと、幸せホルモン『オキシトシン』が出てくる」と石田会長。
「60歳はまだ若い。70歳からでも猫は飼える。日本の女性の平均寿命が87歳で、猫の平均寿命が16~17歳。ちょうど同じ頃に寿命を迎えるわけです」。そう話す石田会長は、心構えや準備についてもアドバイス。
「猫の主治医を作ることが大切です」。信頼できる獣医師を見つけ、飼い主が入院するようなことがあっても、預かってもらえるような関係を築いておくことがポイントだ。「話をよく聞いてくれて、説明もよくしてくれる。そういう先生がいいですね」
「猫は1年で人間の4~5歳分、年を取ります。人間並みの高度な検査も可能ですが、費用もかかる。であれば年に2回の総合検診をして、あとは時々の問診だけでも、病気の早期発見に役立つでしょう」。石田会長の助言に、小泉さんは何度もうなずいていた。
保護猫活動に寄付も
この日の収益の一部は、保護猫活動をする団体に贈られた。フォーラムの冒頭で宮沢次長が「ここ千代田区で活動するNPO法人『ちよだニャンとなる会』さんに寄付します」と発表。会場から大きな拍手が起きた。
終幕前には、読売新聞日曜版の人気漫画「猫ピッチャー」のミー太郎の着ぐるみが登場し、小泉さんは両手を広げて出迎えた。来場者が席から、出演者一同を撮影できる時間も設けられ、猫愛に満たされたホールは最後まで盛り上がった。
東京都文京区の会社員女性(43)は「小泉さんの猫愛がひしひしと感じられる語りに聞きほれた。石田会長の助言は実践的で学ぶことが多く、参加できて本当に良かった」と話していた。
こいずみ・きょうこ 1966年生まれ。82年、歌手デビュー。俳優としても映画やテレビドラマ、舞台に多数出演。2015年には株式会社明後日を設立し、舞台や映像、音楽イベントなどのプロデュースを始めた。05年から14年まで読売新聞の読書委員を務め、多くの書評を執筆した。