関税50%をトランプ氏が示唆した欧州、首脳ら「冷静さ」呼び掛け

欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を課す意向を示したトランプ米大統領に対し、欧州の政府首脳は一致して平静を装おうとしている。この関税引き上げが実行に移されれば事態は大きくエスカレートするため、貿易戦争が通商や投資で深く結びつく米欧関係を破壊するとの懸念から、23日の市場では両地域の株価が急落した。

  トランプ氏がソーシャルメディアに投稿したのは、米欧の交渉担当者が合意に向け次の措置を協議することになっていた数時間前だった。同氏は23日朝、トゥルース・ソーシャルでEUを激しく非難し、「協議に進展の見込みが全くなく」、「対処が難しい」と書き込んだ。

  トランプ氏はEUに対し、一律10%の基本税率に20%の上乗せを加えた合計30%の追加関税を4月に打ち出したが、その後で90日間は10%の関税にとどめ、上乗せ分の導入は停止すると発表。この期限は7月9日前後にやって来る。

  EUに対し高関税をちらつかせるトランプ氏のやり方は、対中関税を一時145%まで引き上げた手法に通じる。ただ、金融市場が急落すると同氏は姿勢を後退させ、今月12日には交渉時間を確保するための猶予として90日間の大幅な関税率引き下げに合意した。

  カナダで行われた主要7カ国(G7)財務相会合を終えたばかりのベッセント財務長官は、トランプ氏の投稿についてFOXニュースに、「これがEUに迅速な行動を促すことを望む」と述べた。

  これに対し、欧州各国の政権幹部は自制と交渉継続の決意を示そうとした。最大の貿易相手との経済関係に亀裂が入る恐れに直面したEUにとって、必要なのは「冷静さ」だと複数が口にした。

  オランダのスホーフ首相は週次の記者会見で、トランプ氏の投稿は「全て交渉の一部」だとの認識を示し、「提案を冷静に検討し、きぜんとした対応をとる」と述べた。

  欧州にとって問題の一部は、米国が何を望んでいるのか詳細が不明なことだ。「以前に示唆されたEUの一方的な関税引き下げ以外に、トランプ政権が合意を結ぶため実際何を期待しているのか依然不明なままだ」と、INGのインガ・フェフナー氏らエコノミストは23日のリポートで指摘した。

  スウェーデンのスバンテソン財務相は、「米欧両方の経済を傷つけ得る理不尽なエスカレート」だとトランプ氏の投稿について表現し、「われわれが必要としているのは自由貿易の拡大で、縮小ではない」と主張。フランスのサンマルタン貿易担当相は「欧州はこれまでと同じ姿勢を維持する。対立緩和を目指すが、対抗措置をとる用意はあるということだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。

原題:European Officials Urge ‘Calm’ Facing Trump 50% Tariff Threat(抜粋)

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