欧州で防衛関連株急騰-域内のウクライナ支援の機運高まり受け

米国がウクライナへの支援を停止する懸念が強まる一方、欧州首脳らが支援を強化する方針を示したことを受け、欧州の防衛株は3日の取引開始直後から急騰した。

  ストックス欧州600指数は一時1.4%上昇し、特に防衛関連株が大幅に買われた。ドイツのラインメタルは16%、スウェーデンのサーブは15%、フランスのダッソー・アビアシオンは19%、それぞれ一時上昇した。

  ゴールドマン・サックス・グループの欧州防衛株バスケットは一時16%上昇して過去最高値を更新し、年初来の上昇率は63%に達した。フランスでは、代表的な株式の指標であるCAC40指数が1.6%高の8241.6と、昨年5月を上回り、過去最高を更新した。

  ナティシス・グローバル・アセット・マネジメントのグローバル市場戦略責任者、マブルーク・シェトゥアン氏は「間違いなく今四半期一の取引だ」述べ、欧州株の上昇に伴い、テクノロジーや防衛といった部門がさらに勢いづくとの見通しを示した。

  経済成長と防衛費の増加への期待の高まりから、欧州の通貨も買われている。ユーロは対ドルで一時1.2%上昇し、1ユーロ=1.0503ドルまで強含んだ。

  また、スウェーデン・クローナが対ドルで2%以上上昇した。スウェーデンの防衛企業は戦闘機や潜水艦から支援兵器、戦闘車両などあらゆるものを製造しており、主要経済国の中で、国内総生産(GDP)に占める防衛輸出の割合が最も大きい国の一つだ。防衛費増加の恩恵を受けやすいとの見方が広がった。

  防衛支出増に伴う政府の借入急増の可能性が意識され、欧州各国の国債利回りは急上昇した。ドイツ30年債の金利は一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、ここ約1年で最も高い2.82%に達した。

  ダンスケ銀行のチーフアナリスト、イェンス・ペーターセーレンセン氏は「防衛支出が大幅に増加することは疑いの余地がない。長期債の発行が増えるため、投資家はリスクプレミアムを求めている」と指摘した。

  欧州主要国の指導者らは2日、ロンドンで緊急首脳会合を開催し、ウクライナに安全保障を提供する「有志国連合」をつくろうと模索している。フランスのマクロン大統領は、この会合の後、仏紙フィガロに対し、欧州連合(EU)は防衛力強化のため、2000億ユーロ(約31兆3000億円)を拠出するべきだと述べた

  欧州各国による防衛支出急増の可能性が浮上したことで、関連する企業の株価は以前から急騰している。欧州最大の陸軍用機材供給業者のひとつであるラインメタルの株価は、今年に入ってすでに67%上昇している。2022年のロシアのウクライナ侵攻開始以来では、上昇幅は800%以上となる。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、ビンセント・ユビンス氏は「欧州が自らの将来を自らの手で切り開くという大きなコンセンサスが感じられ、軍事支出の増加が予想される」と述べた。

  ただし、欧州の防衛関連企業が生産量を増やすのに十分な生産能力を持っているかという疑問が、投資家を悩ませてもいる。産業のキャパシティー不足により、受注残は和平合意の成立後も、何年も続くことになる。

原題:European Defense Stocks Jump With Military Spending Set to Rise、European Currencies Rally on Growth Bets From Defense Spending、French Stocks Hit Record as Defense Rallies, Political Risk DimsBond Yields Jump as Defense Promises Ripple Around the World (抜粋)

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