芦屋で中国人増えトラブルも|ニフティニュース

「このままでは芦屋はチャイナタウンになる…」日本最強の高級住宅街で起きている"外国人トラブル"の中身

2025年12月04日 17時15分PRESIDENT Online

芦屋市の南側、海沿いにある涼風町 - 筆者提供

関西の高級住宅街、芦屋に異変が起きている。急激に中国人オーナーが増え、騒音トラブルなどが起きているという。だが、地域住民が恐れているのはトラブル増加や治安悪化だけではなかった。『誰も知らない「芦屋」の真実 最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか』(講談社+α新書)を書いたフリーライターの加藤慶さんに聞いた――。(第2回) ■芦屋における“北”と“南”の格差

――芦屋市には独特の「南北格差」があると聞きました。

はい。芦屋市はJR東海道本線を境に、街の空気が大きく異なります。北側の山手エリア、とりわけ六麓荘町周辺は、関西財界の重鎮たちが居を構える聖域のような場所です。ここの住民たちの間では、JR線より南側のエリアを単に「南」や「海沿い」と呼び、自分たちの住む山手とは明確に区別する意識があります。この「南北格差」が顕著に表れるのが、選挙の際の政治家の動きです。市議会議員選挙の際、候補者たちは人の出入りが多く人口も密集している南側では熱心に選挙活動を行いますが、北側の六麓荘エリアにはほとんど足を運びません。高い塀に囲まれた豪邸が並ぶこの地域では、街頭演説をしたところで聴衆が集まるわけでもなく、票田としての性質がまったく異なるからです。一方で、国会議員クラスの大物政治家となると話は別です。彼らは南側には目もくれず、ハイヤーで六麓荘へ向かいます。選挙活動のためではなく、そこに住む財界有力者や企業のトップに挨拶をするためです。かつては安倍晋三氏や菅義偉氏といった首相経験者も、六麓荘のパーティーに姿を見せていたといいます。六麓荘の住民は自分たちのビジネスが有利に働くように政治家に働きかけたいでしょうし、政治家にとって多くの従業員を抱える経営者は重要な票田です。同じ選挙活動でも、北側と南側では政治のスケールが大きく異なっているのです。■“南”で生活を始め、六麓荘を目指す――関西圏の富裕層の多くが、六麓荘に住むことを目指しているのでしょうか。芦屋市内に住むこと自体がステータスですが、住民の中にはさらなる高みを目指す“あがり”のような考え方があります。最初から六麓荘に住むのではなく、まずは市内の他の高級住宅街、例えば岩園町などに居を構えるのです。そこで生活の基盤を築き、事業を成功させ、資産を形成していく。そして最終的なゴールとして、六麓荘の物件が出るのを虎視眈々と待ち続けます。六麓荘の物件は市場に出回ることが少なく、希望の土地を手に入れるために数年、時には十数年待つことも珍しくありません。ある富裕層は、岩園町に住みながら六麓荘の物件情報を待ち続け、ついに理想の土地を手に入れたといいます。芦屋市内でステップアップを重ね、最後に六麓荘の住人となる。これは芦屋に住む人々にとっての“あがり”であり、成功者としての究極の証しなのです。■「芦屋のハワイ」は大盛況――六麓荘がある伝統的な山側に対し、海側のエリアはどのような雰囲気なのでしょうか。山手の伝統と格式に守られた高級住宅街に対し、海側のエリアもまた違った形でバブル的な賑わいを見せています。特に「芦屋のハワイ」とも称される南芦屋浜の「芦屋マリーナ」周辺は、独特の熱気を帯びています。ここには約150艇ものクルーザーが停泊し、その中には数十億円クラスの超豪華船も含まれています。停泊料は近隣に比べて割高ですが、「芦屋に船を置く」というステータスを求めて、関西一円から富裕層が集まってきます。隣接する会員制リゾートホテル「芦屋ベイコート倶楽部」は、豪華客船を模した外観で異彩を放ち、約4900万円もするロイヤルスイートの会員権が完売するほどの人気ぶりです。さらに象徴的なのが、マリーナに隣接する「レジデンシャルコーヴ」と呼ばれる超高級住宅街です。ここは周囲をフェンスで囲まれていて、邸宅にプライベートバース(専用桟橋)が接続されており、自宅から直接クルーザーで出かけられるという、まるで海外映画のようなライフスタイルが実現されています。週末にはここから淡路島へクルージングに出かけたり、夏には海上から花火大会を鑑賞したりと、優雅な時間を過ごすのです。このエリアの利用者は必ずしも芦屋市民ばかりではありません。市外からも多くの新興富裕層が訪れ、フェラーリなどの高級車の展示即売会が開かれれば、数千万円の車が飛ぶように売れていくといいます。伝統と静寂を重んじる山手とは対照的に、こちらは分かりやすい富の象徴と、バブリーな華やかさが肯定されるエリアとして確立されており、芦屋というブランドが持つもう一つの顔を覗かせています。■中国人顧客に大人気な涼風町――最近は、海側のエリアに中国人富裕層が増えているそうですね。この南芦屋浜にある「涼風(すずかぜ)町」というエリアが今、中国人富裕層の熱い視線を浴びています。もともとこの一帯は、ハマチなどが釣れる関西有数の釣りスポットとして知られていました。しかし近年、ここが中国人の別荘地として爆発的な人気を博しているのです。理由は「風水」と「価格」にあります。彼らにとって、目の前に水(海)があり、背後に山が見えるこの立地は、風水的には最高の環境なんだそうです。さらに驚くべきはその価格差です。中国の北京近郊で同様の条件の別荘を購入しようとすれば、日本円にして20億円は下らないといいます。それが涼風町であれば、1億円程度で購入可能です。彼らにとっては破格の価格で最高級の物件が手に入るのです。加えて、中国では土地は国家のものであり、住宅用の土地を買っても個人は「70年の使用権」しか持てませんが、日本では土地の所有権が得られます。資産防衛の観点からも、中国国内で土地を買うよりも日本の不動産、それもブランド力のある「芦屋」で不動産を取得したほうが合理的という判断が働いているようです。中国本土でも「ASHIYA」という地名はすでに高級住宅街の代名詞として浸透しつつあるのです。■「芦屋がチャイナタウンになる」と嘆くセレブたち――外国人住民が増えていくことに不安を抱いている住民もいるそうですね。はい、こうした状況に、古くからの住民たちは危機感を募らせています。特に涼風町においては、エリアの一角が事実上の「チャイナタウン」化することは避けられないだろうと地元住民は考えているようです。その勢いは凄まじく、ある中国人富裕層は、妻の名義も使って涼風町の家を5軒も購入し、それらをすべて繋げて一軒の巨大な邸宅を建てたいと語っていたといいます。涼風町では一人の名義では3つの区画しか所有できないため、妻名義も使って不動産を購入しているようですが、地域の規約をもすり抜けるような強引な手法とスケールの大きさに、地元住民は唖然とするほかありません。懸念は涼風町だけにとどまりません。伝統ある六麓荘町にも、徐々に中国人の所有者が増え始めているといいます。六麓荘の住民が恐れているのは、一度中国人に買われた物件はほとんど日本人の手には戻って来ないということです。中国人オーナーが物件を手放す場合、より高値で売却するために、日本人ではなく中国人の友人に売却するケースがほとんどなのです。なので、一度中国人の手に渡った土地は、仲間内で転売が繰り返され、日本人の手には戻ってきません。また、中国人オーナーが友人や家族に家を又貸しすることも珍しくなく、気づかぬうちに住人が入れ替わっていることもよくあるそうです。■ゴミ出しのルールを守らず、夜中にBBQを始める――文化の違いによるトラブルも起きているのでしょうか。急激な住民の入れ替わりは、生活習慣の違いによるトラブルを招いています。特に深刻なのが、ゴミ出しや騒音の問題です。日本の細かなゴミ分別のルールや、決められた収集日を守らないケースが頻発しています。注意しようにも、所有者が実際に住んでいるのか、あるいは民泊のように貸し出されているのか実態が掴めず、コミュニケーションすら取れないこともあります。また、夜遅くに庭でバーベキューを始め、大声で騒ぐといった騒音トラブルも報告されています。さらに、交通マナーの違いも懸念材料です。日本は歩行者優先の交通ルールが徹底されていますが、中国は日本に比べれば車優先の社会です。そうした文化の違いから、閑静な芦屋の住宅街の道路を、中国人オーナーの高級車が猛スピードで走り抜ける光景が増えているそうです。■最強の高級住宅街が、大きな岐路に立たされている――トラブルだけでなく、事件に発展するケースもあるのでしょうか。2025年1月に、涼風町の路上でショッキングな事件が発生しました。マレーシア国籍の男2人が、35歳の男性をハンマーで殴ったり、包丁で刺したりするなどして重傷を負わせたのです。この2人の男は、殺人未遂と銃刀法違反の罪で起訴されています。この事件で実行役への指示役として逮捕されたのは、涼風町に住む中国籍の無職の男でした(後に不起訴)。治安の良さを誇ってきた芦屋において、こうした凶悪事件が身近で起きたことは、住民に大きな衝撃と不安を与えました。憧れのブランド・芦屋を守ってきたのは、住民たちが共有してきた「文化」と「秩序」でした。その前提が崩れつつある今、日本最強の高級住宅街は大きな岐路に立たされています。----------加藤 慶(かとう・けい)フリーライター、カメラマン1972年、愛知県生まれ、大阪市在住。2002年から編集プロダクション「スタジオKEIF」を主宰。週刊誌や月刊誌、ネット媒体で事件から政治、スポーツまで幅広く取材する。YouTubeチャンネル「デザイナーtoジャーナリスト」を手掛けている。共著に『猛虎遺伝子 タテジマを脱いだ男たち』(双葉社)、『プロ野球 戦力外通告を受けた男たちの涙』(宝島SUGOI文庫)、『誰も知らない「芦屋」の真実 最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか』(講談社+α新書)などがある。----------

(フリーライター、カメラマン 加藤 慶 聞き手=プレジデントオンライン編集部)

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