米国債市場、FRBの方向転換を予想-インフレよりも景気鈍化を憂慮
米国債市場は米金融当局が粘り強いインフレを懸念するよりも、経済成長の鈍化を憂慮する方向に近く転換する必要があると予想し始めている。
この見方を背景に、米10年債は6日続伸。利回りは今年最低水準に低下した。モルガン・スタンレーのストラテジストは米金融当局に対する見方が多少変化すれば、10年債利回りは4%を下回る可能性があるとみている。
今週の短期金融市場では、連邦準備制度理事会(FOMC)が0.25ポイントの利下げを今年2回、来年にはさらに1回実施するとの見通しが再び完全に織り込まれ、政策金利は3.65%前後まで低下すると予測されている。モルガン・スタンレーは、3.25%への利下げが織り込まれた場合、10年債利回りは4%を割り込む可能性があるとの見方を示した。同行は、28日に発表される1月の個人消費支出(PCE)価格指数が伸びが鈍化すると予想。そうなれば決定的な要因となり得る。
マシュー・ホーンバック氏率いるモルガン・スタンレーのストラテジストチームはリポートで「コアPCE価格指数の改善を受けて、FOMCの姿勢がハト派寄りになる場合、投資家はデュレーションを長くし、市場が織り込む金利の最低水準がさらに低下するだろう」と指摘した。
この日の10年債利回りは一時4.24%に低下。昨年後半には数カ月にわたり4%を下回る局面があった。7月の雇用統計が著しく低調だったため、FOMCが年末までに金利を1ポイント引き下げるとの見方が強まったことが背景にあった。
その後、インフレ率の低下傾向が止まり、FOMCは今年1月に金利据え置きを決め、利下げを急ぐ必要はないとの姿勢を示した。現在は経済指標だけでなく、米国の財政および移民政策にも利回り低下の根拠を投資家は見いだしている。
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ホーンバック氏は「すでに移民政策の強引な変更により、来年の国内総生産(GDP)成長率は短期的に潜在成長率を下回る可能性がある」と指摘。「移民動向に対する注目が高まることで、依然として高い中立金利の見通しは低下するはずだ」と記述した。
25日発表の消費者信頼感指数が大幅低下したことは、米経済の低迷を示す最新の兆候に過ぎない。シティグループの米経済サプライズ指数は9月以来の水準まで低下し、データが市場予想に届いていないことを示している。
モルガン・スタンレーは、先月トランプ大統領が就任して以来、政府職員の解雇による連邦支出削減が実施されていることも金利低下見通しにつながっていると指摘する。
同時に、トランプ政権とそれに同調する議員は大幅な減税を推進している。大幅減税が実施されれば、財政赤字が拡大し、追加の借り入れを必要とする可能性がある。25日夜に下院が可決した予算決議案では、相殺策として大幅な歳出削減を求めている。
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ビアンコ・リサーチの社長兼マクロストラテジスト、ジム・ビアンコ氏はブルームバーグ・テレビジョンで「債券市場は供給減少の可能性に反応している」と発言。「それが実現するかどうかは、年内に判明するだろう。それが景気を刺激するか、あるいはインフレにつながるかも年内に分かるだろう」と述べた。
インフレに関しては、食料品とエネルギーを除くPCEコア価格指数は3カ月連続で2.8%前後で推移している。6月の利下げを予測しているモルガン・スタンレーのエコノミストは、1月の数値は2.58%まで鈍化すると予想している。
原題:Treasury Investors Anticipate Fed Shift Back to Growth Risks(抜粋)