北朝鮮に送ろうと米入りペットボトルを海に流す行為が「災害安全法」違反? /仁川・江華島

 仁川市江華島から海に流して米やドル紙幣、聖書などの入ったペットボトル1300本を北朝鮮に送ろうとした米国人6人が警察に身柄を拘束された。李在明(イ・ジェミョン)大統領が北朝鮮へのビラ散布に厳しく対処するよう指示した中、外国人が西海を通じて北朝鮮にペットボトルを送ろうとしたとして摘発されたのだ。外国人が北朝鮮にペットボトルを送ろうとして逮捕されるのは異例だ。

【写真】米入りペットボトル

 仁川江華警察署は6月27日午前1時6分ごろ、仁川市江華郡下店面望月墩台で20-50代の米国人男性6人を逮捕したと発表した。6人が北朝鮮に1300本のペットボトルを流そうとしたところ、出動した警察官に逮捕された。2リットルサイズのペットボトルの中には米、1ドル紙幣、韓国映画が保存されたUSBメモリー、小さく巻かれた聖書などが入っていた。警察の関係者によると、ペットボトルの中に北朝鮮の体制を批判するビラは入っていなかったという。

 6人は警察の取り調べに「宣教活動を目的に米国から来た」と供述したという。6人は数日前に観光ビザで入国したようだ。警察の関係者は「韓国語が全く話せず通訳を介して事件の経緯について調べている」と伝えた。

 望月墩台は江華島西端の遺跡で、6人は周辺の空き地に車を止めペットボトルを海に流したようだ。江華郡関係者によると、満ち潮の時に墩台から海にペットボトルを流せば潮に乗って北朝鮮に流れ着くことがあるという。

 専門家は「政府が北朝鮮へのビラ散布を禁じているので、海からペットボトルを流そうとしたようだ」と語る。北朝鮮向けのビラはヘリウムガスの風船に載せて飛ばされてきたが、大型の風船やガスボンベを運ぼうとすればどうしても目立つ。しかしペットボトルは車に乗せるだけで運べる。ただしビラに比べて散布の効果は低いようだ。

■ペットボトルを流した行為により災害安全法違反で逮捕

 警察はペットボトルを流そうとした外国人を災害安全管理基本法(災害安全法)違反容疑で逮捕した。李在明大統領は6月10日、北朝鮮へのビラ散布に対しては厳しく対応し、航空安全法や災害安全法、高圧ガス安全法などにより処罰するよう指示した。

 警察の関係者は「今回は北朝鮮向けビラを風船で飛ばしたわけではないため、航空安全法や高圧ガス安全法ではなく災害安全法違反容疑で逮捕した」と説明した。江華郡は昨年11月、江華島全域を災害安全法上の「危険区域」に指定し、北朝鮮へのビラ散布を禁止した。北朝鮮がビラを理由に「汚物風船」を韓国に飛ばし、「対南放送」を行っていた時期だ。同法第41条によると、地方自治体の長は災害が発生するかあるいは発生する懸念がある場合、危険区域を指定して立ち入りを制限、または特定の行為を禁止することができる。これに違反した場合は1年以下の懲役または1000万ウォン(約105万円)以下の罰金刑に処すとされている。

 一連の対応を巡っては「北朝鮮が挑発するとの懸念を災害と見なせるか疑問」との指摘もある。統一研究院の趙漢凡(チョ・ハンボム)先任研究委員は「ペットボトルを流すことを災害を誘発する行為と判断して処罰するなら、耳にかかればイヤリング、鼻にかかれば鼻輪と見なす処罰だ」と批判した。

 韓国行政安全部(省に相当)の関係者は「災害安全法上の災害とは洪水、土石流、山火事などを意味するもので、立法の趣旨から考えて北朝鮮の挑発行為を災害とは考えていない」としながらも「危険区域設定権限を持つ地方自治体と捜査当局は災害の範囲を幅広く解釈する流れにある」とコメントした。昨年11月にも江華島の席毛大橋周辺から米が入ったペットボトル121本を海に流そうとした50代の男性が災害安全法違反容疑で警察に逮捕された。梨花女子大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「(当局が)憲法裁判所の違憲決定を回避するため別の法律を適用したのではないか」と指摘する。憲法裁判所は2023年「北朝鮮ビラ禁止法」について「表現の自由に対する過度な制限」として違憲との決定を下した。

■警察は125人体制で江華島を封鎖

 警察は6人がどのようにして検問をすり抜け1300本のペットボトルを持ち込んだかについても調べている。

 警察は6月13日、江華島から北朝鮮に風船でビラを飛ばした容疑(航空安全法違反)で40代の男を逮捕し、その後125人の警察官を動員し島を事実上封鎖するため、江華島につながる江華大橋と草芝大橋での検問を強化している。

 江華島住民の間からは「北朝鮮のスパイが来たわけでもないのに、国民の移動権を過度に制限している」との声や「北朝鮮へのビラ散布を阻止するためにはやむを得ない」などさまざまな反応が出ている。

 江華島に住む45歳のある男性は「最近は検問のため住民はもちろん、観光客も不便を強いられている」「地域経済に悪影響が出ないか心配だ」と語る。この日の午後、望月墩台で取材に応じた63歳の観光客は「全部上からの指示だから(検問を)やるんだろう」と述べた。

江華=キム・スオン記者、江華=イ・ヒョンジュン記者、キム・ヨンウ記者

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