「痛み伴う改革の前に議員定数削減 自ら身分にメス入れ覚悟示せ」維新元代表、松井一郎氏 インタビュー詳報(上)
日本維新の会代表を務め、令和5年4月に政界を引退した松井一郎元大阪府知事は産経新聞のインタビューで、今臨時国会で焦点となる衆院議員定数削減について「政治家がまず自らの身分にメスを入れて、覚悟を示すのは当然だ」と述べた。インタビューの詳報は次の通り。
政治に「百点満点」なし
――自民と維新が連立政権を樹立した
「まあスタートやね。自民は(衆参両院で)過半数割れしている中で首相を選出し、内閣を形成しないといけない。野党の野合談合、政策バラバラで固まっても、日本を動かすことはできませんよ。自民側から『維新の政策も前向きにとらえて実現していく』との答えがあったから、(維新代表の)吉村(洋文)さんと(共同代表の)藤田(文武)さんが党内をまとめて決断したということ」
《維新の母体である地域政党「大阪維新の会」は平成22年に設立。いずれも当時、自民の大阪府議だった松井氏が大阪府知事の橋下徹氏と改革を旗印に創設し、24年に国政政党の維新が生まれた》
――もともと自民とたもとをわかって立ち上げた維新の連立入りには、有権者から反発もあるのでは
「政治に百点満点はありません。維新の支持者から、なぜ自民と組むんだというご意見もあると思う。でもね、多数を作らなければ政策を実現できませんから。今回は12項目の政策を自民側に提示して、実現していくという約束ができたからこそ、閣外協力するということだと思う」
足跡残す政策実現を
――維新と自民は国家観など共通点も多い。連立となると、存在感が消えるリスクもある
「僕が現役時代ずっと言っていたのは、政党のために仕事しているんじゃないということ。政党なんていうのは、政策を実現していく結社。だから結果として維新が消滅したとしても、日本のために足跡を残せる。そういう政策を一つでも二つでも実現することができて、少しでもましな日本をつくっていけばいいと思う」
――維新が一連の改革の成否を左右する「センターピン」に掲げる衆院議員定数削減は、松井さんが提案したのか
「いやいや、そうじゃない」
「大阪ではかつてなれ合い、もたれ合いの政治が続き、大胆なことができなかった。僕はそれが嫌で、大阪維新の会をスタートさせた。当時の大阪府は本当に財政が厳しかった。最初は府民の皆さんにとっても痛みを伴う改革をやった」
「知事が提案した団体の補助金削減や職員の給与カットを決定するのは議会だ。だから議会の責任は非常に重い。府民に痛みを伴うことをお願いするなら、まず議員の身分にメスを入れる。議員報酬3割カットに加えて、政治家が一番嫌がる定数削減。自分が座る椅子がなくなるんだから。それをやってこそ、説得力がある」
《大阪維新の会は結党後初めて臨んだ23年4月の統一地方選で、府議会の過半数の議席を獲得。同6月に改正条例を成立させ、府議会の定数を109から2割削減し、88とした》
玉木さんも賛成して
「政治家自ら覚悟を示すことで、府民にも痛みを伴う改革を理解してもらう。ここからスタートしたわけですよ。維新の覚悟を打ち出してこそ、改革ができた」
「今回の(連立協議で維新が絶対条件とした)社会保障改革でも、痛みを伴う部分が出ますよ。改革っていうのは、いいことばかりじゃない。痛みを伴っても持続可能な国にしていくために(当事者には)協力してほしい。そうであれば、政治家がまず自らの身分にメスを入れて覚悟を示すというのは当然だ。だから吉村さんは、大阪維新の会の覚悟を示す、決意を持ってやり切る部分をセンターピンに据えたということです」
《自民と維新の連立政権合意書では衆院議員定数の「1割削減」を目標とし、臨時国会で関連法案を提出し成立を目指すとしている》
――議員定数削減が実現できなければ、維新は連立から離脱すべきか
「法案を提出したところで、自民と維新で(成立に必要な)過半数の議席はない。自民と維新だけでは実現できないわけです。だから自民も維新も汗をかいて、野党の協力をちゃんと取り付ける。国民民主党(代表)の玉木(雄一郎)さんにも賛成してもらいたい。そうなれば成立します」
=(中)に続く