自維連立、早くもスピード離婚の危機…自民ベテラン「定数削減は維新に協力するふりして…」維新古株「ふたりの青年将校を止めたれや」(集英社オンライン)

 「公明、大変だと思うけど、がんばってください」 旧知の知人をただ励ますつもりで送った何げないメールが、この国に新たな連立政権を誕生させるきっかけになった。 10月9日。日本維新の会の遠藤敬国会対策委員長は、長年にわたって交流があった高市早苗・自民党新総裁に携帯電話のショートメッセージを送った。まさに公明党が連立離脱を高市氏に通告する前日だった。 遠藤氏は長年にわたって維新の国会対策委員長を歴任してきた。政党の国会対策委員長は国会日程や審議する法案の順番を各党と交渉する窓口だ。必然的に与野党に限らず他党との人脈が広がる。公明党や創価学会にも独自のパイプを持つ。

「公明、今回は本気なんやないか」 そんな胸騒ぎから高市氏を心配してメールを送った。高市氏とは今年の夏ごろに食事をするなど、連絡を取り合う関係だった。高市氏にしてみれば維新で唯一、つながりがあるのが遠藤氏だった。 遠藤氏のメールから30分後、高市氏が遠藤氏の携帯を鳴らす。 「メールありがとう。公明が連立離脱なんてありえんやろ? それより維新はどうなん? 私は維新ともうまくやっていきたい」 高市氏は自公を前提に維新にも「ラブコール」を送ってきた。翌10日には自公党首会談があり、正式に公明から離脱を告げられた。高市氏は改めて遠藤氏に電話した。 「政策の話をしましょう!」 遠藤氏が「うちの政策が実現できるならいいですよ」と応じ、急きょ、自民と維新の交渉が水面下で始まった。 11日〜13日の3連休。中日の12日、議員は地元に戻っているため、衆院議員の赤坂宿舎は閑散としていた。2階にある会議室で高市氏と維新の藤田文武共同代表が向き合った。9日の遠藤氏から高市氏へのメールから3日後だった。 藤田氏は会議室に後から入ってきた高市氏の姿に驚いた。維新の政策提言書を抱えていた。その提言書には付箋やマーキングがあり、赤ボールペンでの書き込みもされていた。


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「この人は本気や」 藤田氏はそう受け止めた。公明党も離れ、超少数与党に陥った高市自民党。「何が何でも総理になってやる」という高市氏の気合が藤田氏の心を動かす。初対面の二人の政策協議はこの日だけでも3時間に及んだという。 翌13日には維新の前共同代表の前原誠司氏も赤坂宿舎で高市氏と向き合った。前原氏は高市氏の松下政経塾での後輩だ。後輩から維新の人間関係や吉村氏の性格などを聞き取った。そして、大阪万博閉会日の13日夕方、高市氏は遠藤氏から聞いた吉村氏の携帯番号を鳴らした。 「党首会談をしましょう」 そう呼びかける高市氏にこう応じた。 「15日なら東京に行けます」 15日の党首会談を経て政策協議が加速した。翌16日には赤坂宿舎で藤田氏と高市氏に加えて官房長官に内定していた木原稔氏が夜中の3時過ぎまで協議を続けた。 政策協議が進む一方で、連立政権の形態をめぐって意見が平行線だった。自民との連立に突き進む吉村氏と藤田氏に対し、維新のベテラン勢は「あの二人の青年将校を止めたれや」と冷めた声も行き交った。おもに大阪で府議や市議という形で自民党に所属した経験のあるベテラン勢だ。 維新創設者の松井一郎氏も「あんまり安売りさせるな。連立なんて入ったら自民党に何もかもからめとられて維新は終わるで」 高市氏からは閣僚ポスト二つを打診された、と吉村氏や藤田氏がメディアの取材に認める一方で、16日夕には吉村氏がテレビ出演で軌道修正した。「議員定数の1割削減は絶対条件だ」。そして、その約束が履行されるまでは「閣外協力」にとどめたい。 松井氏や馬場氏ら重鎮勢がブレーキをかけた それまで絶対条件に掲げたのは「副首都構想」、「社会保障改革」の二つだった。大臣ポストも受けて閣内に入る「フルスペックの連立政権」(藤田氏)を想定していた。 しかし、水面下では別の動きが強まった。ある維新のベテランが打ち明ける。 「自民党をよく知る松井氏や馬場氏ら重鎮勢が、連立にまっしぐらの『吉村・藤田の青年将校コンビ』にブレーキをかけた」。 松井氏が大阪府議時代に都議だったことで長年の盟友である萩生田光一幹事長代行も水面下で交渉に参戦し、政権がより安定する閣内協力を打診したが、維新は閣僚を内閣に出さない閣外協力を選んだ。 あくまで定数削減という約束が果たされなければ、いつでも離脱できる「半身」での政権への参加を選んだ。

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