富士通「らくらくホン」の継承企業がなぜ破綻?年商800億円の裏の“危うい構造”とは(ダイヤモンド・オンライン)

 今やスマートフォンを持つのが当たり前だが、かつては日本のガラケーが主流の時代があった。そんな時代の転換期において、あの「富士通」の商品を引き継いだ端末メーカーが倒産に追い込まれていた。一体なにがあったのか。※本稿は、帝国データバンク情報統括部『なぜ倒産 運命の分かれ道』(講談社+α新書)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 大手スマホメーカーとしては 初の法的整理となる事態 社名 FCNTなど3社 事業内容 携帯端末製造、販売 負債 約872億5505万円 グループ3社の負債合計 約1193億円(グループ会社間の債権債務を除く)  携帯端末市場は2000年代後半から海外勢の攻勢が続くなか、国内メーカーは守勢に回り、撤退や統合を余儀なくされてきた。民事再生法を申請したFCNT株式会社など3社も、富士通株式会社が展開していた携帯端末事業を承継するにあたり設立された企業グループである。  円安などが追い打ちをかける形になったとはいえ、大手スマホメーカーでは初の法的整理となった今回の事態は、携帯端末メーカーの苦境を強く印象づけることとなった。  民事再生法の適用申請日となった2023年5月30日、「再生対策室」に連絡を入れると「債権者に通知し始めた段階であり、詳細については夕刻までお待ちいただきたい」との返答。  事業を引き継いで以降も厳しい採算状況にあったFCNTだが、間もなく「昨今の円安進行、半導体不足などによる原価高騰によってグループの収益・資金繰りが急速に悪化していた」こと、「法的整理によることなくスポンサー支援を受けることが困難な状況」であったことを明らかにした。

 富士通との出資関係は解消されているとはいえ、同社から事業を引き継いだ年商800億円超の企業であり、グループ会社には携帯端末の製造を手がける年商700億円企業のジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(以下、JEMS)も抱える。法的整理によらない再建の道はなかったのかとの思いがよぎる関係者も少なくなかったかもしれない。 ● 少ない元手で大企業を買収する 投資ファンドの手法「LBO」  投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ株式会社が富士通から携帯端末の開発・製造事業を譲り受けることが発表されたのは、2018年1月。ポラリス社の出資のもと、REINOWAホールディングス株式会社(以下、REINOWA)が設立され、スマートフォンのプロダクト&サービス事業(企画・開発・販売事業〈以下、P&S事業〉)はFCNTへ、製造についてはJEMSへと、傘下の2社へ承継された。  携帯端末事業のコモディティ化とグローバルベンダーとの競争激化が進むなかで、次世代端末の開発、新たなサービスビジネスへの展開を加速させていくことを目的とした決断であった。  その際に用いられたのがLBO(レバレッジド・バイアウト)による買収スキーム。買収対象企業の資産や収益力を担保として金融機関などから買収資金を調達する仕組みで、少ない元手で大企業の買収が可能となるため、投資ファンドなど買い手側にとって投資効率を高めることができるとされる手法だ。 ● iPhoneのシェア拡大で 苦戦を強いられた携帯事業  ここで、富士通の携帯事業を中心に、事業譲渡までの動きを簡単に振り返っておきたい。国内における携帯電話で、当時画期的なサービスとして注目されたのがNTTドコモによる「iモード」だ。その第1号機が1999年に発売された富士通製の「F501i HYPER」であった。  2000年代に入ってからも「らくらくホン」の発売を開始、その後開設したシニア向けSNSサービス「らくらくコミュニティ」の会員数は200万人(2020年時点)を突破するなどサービス強化に努めてきた。一方で、2010年には同社初となるスマートフォンを発売、翌年にはスマホおよびタブレットの新ブランドを「arrows」として、「arrows」「らくらく」シリーズなどスマートフォン事業を中心に展開してきた。  この間、国内の携帯端末メーカーにとって大きな脅威となったのが米アップル社のiPhoneであった。iPhoneが市場シェアを拡大していく一方で、国内メーカーは2000年代後半〜2010年代前半にかけて携帯事業からの撤退や統合を余儀なくされている。そうしたなかにあっても携帯事業を続けてきた富士通だが、前述の通りついに切り離すこととなった。

ダイヤモンド・オンライン
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