インド空軍の中型輸送機調達、C

インド空軍の中型輸送機=An-32後継機調達(約60機、約105億ドル=約1.6兆円規模)が本格化し、この需要を巡ってロッキード・マーティンのC-130J-30とエンブラエルのC-390が3度目の直接対決を行う見込みで、C-130J-30はオランダと韓国でC-390に敗北しているためインドでの戦いで負けることは許されない。

参考:Embraer, Lockheed Martin vie for India’s $10.5B military transport aircraft deal 参考:Embraer, Mahindra Select Potential Indian C-390 Assembly Site

インド空軍は非常に多彩な輸送機戦力(C-17×11機、Il-76MD×17機、C-130J-30×12機、An-32×55機、An-32RE×47機、Avro748×57機、Do228×62機)を擁しているが、ヒンドスタン航空機が1961年にライセンス生産を行った双発輸送機=Avro748は最も老朽化が進んでいたため、インド政府は2015年にC-295MW調達計画を承認したものの技術的な問題やオフセットを含む価格交渉が長引き、実際の契約締結に至ったのは2021年で計56機(エアバス・スペインから完成品の輸入16機+インド企業タタによる現地生産40機)の調達が進められている最中だ。

出典:Indian Air Force

現在はラダック地域や北東部高地地帯で短距離離着陸が要求される中型輸送機=An-32後継機調達が本格化しており、この需要を巡ってロッキード・マーティンがC-130J-30(Block8.1.2)を、エンブラエルがC-390を、エアバスがA400Mを提案する動きを見せ、2026年8月に提案依頼書(RFP)が発行され正式な入札が始まると「エアバスが脱落してC-130J-30とC-390の一騎打ちになった」と報じられている。

An-32の後継機調達もC-295MWと同じBuy and Make方式(完成品の輸入12機+インド企業による現地生産48機)で、RFPの対象はインド企業に限られるためロッキード・マーティンとエンブラエルは現地パートナーと手を組む必要があり、ロッキード・マーティンはC-130Jの尾翼生産やC-130Jの整備拠点開設(2026年末まで完成予定)で協力関係にあるタタとC-130J-30提案で協定を締結し、エンブラエルもマヒンドラ・グループの防衛部門=マヒンドラ・ディフェンス・システムズ(MDS)と提携して入札準備を着々と進めている。

ロッキード・マーティンのC-130Jはオランダが実施したC-130H後継機調達、韓国が実施したC-130H/C-130J輸送戦力を拡張する追加調達でエンブラエルのC-390に敗れており、オランダ空軍の評価によればC-390は平均稼働率、運用性、メンテナンス性、技術要件の全てでC-130Jを上回り、基本設計が新しいにも関わらずC-390(5,000万ドル~6,000万ドル)はC-130J(約8,000万ドル)よりも調達コストが安価で、要求要件の2,400飛行時間をクリアするのにC-130Jなら5機必要だがC-390なら4機で済むらしい。

韓国が実施した5つの評価項目(性能、運用適性、価格、オフセット、国内企業との協力体制)でもC-390は運用適性以外の項目でC-130Jを上回り、エンブラエルも「欧米企業は武器を売っても整備権限を与えることに消極的で運用に支障をきたすことがある」と指摘し、ブラジル、ポルトガル、オーストリア、スウェーデン、ギリシャ、コロンビアもC-130の後継機にC-390を選択、ハンガリー、スロバキア、リトアニア、チェコ、ウズベキスタン、アラブ首長国連邦も新たにC-390を選択しており、特に2022年以降の海外受注ではC-390(36機+オプション10機)がC-130J(26機)を上回っている。

米沿岸警備隊が2026年9月に発注したHC-130J×6機を加えれば受注規模は計32機に増えるものの、輸出の顧客数や旧型C-130更新需要の取り込みではC-390がC-130Jを圧倒しており、インドの中型輸送機需要は単独で約60機(Il-76MD級の補充需要も含めると約80機)と見込まれ、契約額も約105億ドル(約1.6兆円)規模になると予想されているため、ロッキード・マーティンとしてはC-130J-30運用国の入札でC-390に負けるわけにはいかない。

逆にエンブラエルは3回目となる直接対決でC-130J-30を破れば中型輸送機市場における優位性を確固たるものにでき、しかも60機もの受注を獲得すれば総受注も120機を超えるため、C-390関連のエコシステムが生み出す価値や経済的利益も相当大きくなるだろう。

出典:Lockheed Martin

RFPの提出期限は12月上旬で、そこから提案内容の評価が始まるためAn-32の後継機が決まるのは来年以降になると思われるが、ロッキード・マーティンが中型輸送機市場でC-130Jの立場を守れるのか、エンブラエルがC-130J一択という中型輸送機市場の常識を覆すのか注目される。

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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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