J1清水のGK沖悠哉 権田が退団しても「自分の良さ、存在感を出していく」…16日・開幕戦で東京Vと対戦

 静岡県内のJクラブが15、16日に各地で開幕を迎える。担当記者が各クラブの「推し」を紹介する企画の最終回は、J1清水エスパルスのGK沖悠哉(25)。元日本代表GK権田修一(35)が昨季限りで退団し、GK陣では最年長となった副将が守備に安定感をもたらす。清水は12日、東京Vとの開幕戦(16日・国立)に向け三保で一部非公開調整。MF中原輝(28)が古巣たたきを誓った。

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  落ち着き払った言動は、ベテランの風格すら漂わせる。権田が抜けた今季の清水GK5人の平均年齢は22・4歳。25歳ながらGKグループ最年長となり、昨季就任した副将も継続する沖は「競争と団結感でチームにいい影響を与えていきたい」と、頼もしい言葉で所信表明した。

 鹿島の下部組織で育ち、18年にトップ昇格。6年を過ごし、昨季から清水に加入した。「まずは試合に出続けること。それが(移籍の)決め手だった」。安定したセービングとキック精度に定評があり、21年にはJ1で自己最多の33試合に出場した実績もあるが、昨季は権田の牙城を崩せずリーグ2試合の出場にとどまった。元日本代表守護神から「見習うことは多かった」と話しつつ「権田さんと同じことはできない。自分の良さ、存在感を出していく」と強調する。

 ストイックさはチーム屈指だと言い切れる。シーズンオフも三保の駐車場には常に沖の愛車が止まっており、自主トレに励んでいたという。全体練習後には長ければ1時間近く居残り。キャンプ中、フィールド陣が半休になってもGK陣だけは練習していたと聞く。「自分にストレスをかけることも必要」。常勝軍団でもまれ、培ってきた意識の高さはだてではない。

 開幕・東京V戦は国立で開催される。聖地のピッチは自身初。「たくさんのお客さんの前でプレーできるのはサッカー選手として幸せ。気負いなくプレーすれば必然的に結果は付いてくる」と白星発進に向け気合は十分。沖が万全なら、権田の退団は決して“穴”にはならないと確信している。

(清水担当=武藤 瑞基)

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 偶然にも移籍初戦は2年前に所属していた古巣が相手となった。右MFでの先発が濃厚な清水・中原は「国立という舞台で個人的にも楽しみ。燃えるものがある」と、J1では21年以来4年ぶりの開幕白星に意欲を見せた。

 熊本やC大阪に所属し、23年夏から同年末まで東京Vでプレーした。同年12月のJ1昇格プレーオフ決勝では清水と対峙(たいじ)。後半アディショナルタイム、相手DFの背後へ絶妙なボールを送り、東京Vの昇格を呼ぶPK獲得につながった。「半年だけど、濃い時間を過ごさせてもらい充実していた」と古巣に感謝しつつ「僕の成長も見せたいし、負けたくない気持ちがある」と宣言した。

 東京Vは昨季、16年ぶりのJ1で6位の好成績を残した。一方、自身が所属した鳥栖は降格。「僕自身が苦しんだ中で、ヴェルディの躍進は刺激になっていた」という。新天地ではキャンプを通じて左足の精度の高さをアピール。「フィットしている感覚がある」の言葉通り、攻撃のキーマンになることは間違いない。

 「開幕に勝てば自信になる。大事な一戦」。グリーンからオレンジへ立場を変えたレフティーが、再び国立で輝きを放つ。(武藤 瑞基)

  〇…昨季の主力ではFWブラガ、MF中村、原、GK権田が退団したがMFカピシャーバ、中原らが加入。レンタル組のMF宇野、DF蓮川、住吉も完全へ移行して戦力を整えた。4―2―3―1をベースとするならばGK沖、左サイドバック(SB)の山原、右SBの高木、ボランチの宇野、2列目のカピシャーバ、乾、中原は開幕スタメンに当確ランプ。センターバック2枠は住吉、高橋、蓮川で争い、ボランチの残り1枠は宮本、マテウスらが名乗り。1トップはエースの北川、キャンプ好調のタンキ、新加入のアフメドフが候補に挙がる。

 〇…練習後には静岡市内のホテルで「激励会」が開催された。スポンサー、行政、サッカー関係者ら220人を招待し、チームからは秋葉監督、選手らが出席した。あいさつに立った山室晋也社長(65)は「最低1ケタ順位で感動をお届けできれば」と約束。静岡市の難波喬司市長(68)は「(目標を)上方修正して優勝を狙っていただきたい」とエールを送った。

 〇…チームは開幕3日前の13日を異例のオフとする。秋葉忠宏監督(49)は「(休みを挟むことで練習の)強度を上げられる」と説明。一部非公開だったこの日も通常より30分練習時間を長く確保し、厳しいメニューに取り組んだという。「今後もこのような日程はあると思う。試してみてどうなるか」。初の試みは吉と出るか。

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