【秋の園遊会】瑶子さま「金髪ピンクメッシュ」と友禅の美しい調和 彬子さまの「みごとな帯留め」 華子さま「格調高い松菱の帯」にうっとり
天皇、皇后主催の秋の園遊会が10月30日、赤坂御苑で開かれた。今回、女性皇族は和装で、緑豊かな赤坂御苑に美しく映えた。主催者のひとりである、皇后雅子さまは帯留めやアクセサリーを控えた装いだったが、やや自由な立場の宮家の女性皇族は「らしさ」が光る柄行や小物づかいで、奥深い和装の世界を見せてくれた。
【写真】瑶子さま「金髪ピンクメッシュ」と着物の美しい調和はこちら!
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朝から降っていた雨は昼前には止んだ。芝生も乾きはじめ、静寂に包まれた赤坂御苑の上には、青空が広がっていた。
午後1時45分ごろ、三笠山と呼ばれる丘に、天皇陛下と皇后雅子さま、秋篠宮ご夫妻、両陛下の長女の愛子さま、秋篠宮家の次女の佳子さま、常陸宮妃華子さま、寛仁親王妃信子さま、長女の彬子さま、次女の瑤子さま、高円宮妃久子さま、長女の承子さまが順番に並ばれた。
皇宮警察音楽隊による「君が代」の演奏が、赤坂御苑に響き渡った。
両陛下は石破茂内閣総理大臣、三権の長から挨拶を受けたのち、式部官長の先導で陛下と雅子さま、続けて皇族方が三笠山を降りて招待客らの方へ向かった。
一般の人が、皇族方の和装を目にするのは園遊会などのごく限られた場だ。
なかでも、一目置かれるのは華子さまだ。高齢で外に出る機会は減ったものの、和装を心待ちにするひとは多い。
金髪ピンクメッシュと和装の調和
この日も華子さまは、三笠山を降りたところで退席したが、「見事な装いでいらした」と呉服業界の関係者は話す。
24年秋の園遊会で華子さま(中央)がお召しであったのは、友禅で紅葉を染め上げ手刺繍が施された訪問着。「摺箔(すりはく)」の技による本金箔の斜め取りが、友禅を豪華に輝かせる=2024年10月30日、赤坂御苑、JMPAお召しになったのは、銀がかった灰色を指す「銀鼠(ぎんねず)」の地に、友禅で紅葉を染め上げた訪問着。
紅葉には、手刺繍が施されて一層、艶やか。「摺箔(すりはく)」の伝統技術が用いられた本金箔の斜め取りが、友禅を豪華に輝かせていた。
華子さまがお使いの、帯を楽しみにするファンも少なくない。この日は、松葉を菱形に配した格調高い松菱文様の帯を合わせていらした。
正統派の華子さまの装いに対して、現代的な着こなしで目を引いたのが、寛仁親王の次女、瑶子さまだ。
話題を集めたのは、和装に調和したヘアスタイル。はちみつ色の金髪「ハニーブロンド」と両サイドに入れたピンクのメッシュが目を引くまとめ髪だった。10月の佐賀県訪問でも、すでにこの色味になさっていた。
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スタイリッシュな髪色に合わせのは、やわらかな色と柄行の友禅の着物。
淡い黄緑に似た「裏葉柳(うらはやなぎ)」のやさしい地色。大小の色紙がふわりと舞い上がる絵柄には、糊をおいて金箔をのせる「摺箔(すりはく)」の技法が用いられている。
色紙に絡むように、牡丹や菊が友禅染と手刺繍で施され、肩から胸にかけては、風にそよぐ薄紫色の春蘭の花弁と葉があしらわれている。白い菊を主役に朱色が効いた帯と白の帯揚げが品よく調和する。
流行と伝統が美しく調和した瑶子さまの和装は、よくお似合いだった。
着物業界の関係者は、こう話す。
「お姉さまの彬子さまは、日本文化に造詣が深くむろん着物にもお詳しい。瑶子さまはお姉さまに、相談されながら選ばれたのではないでしょうか」
彬子さまの訪問着も、卵の殻のようなごく淡い黄色が混じる「鳥の子」色の地に、大小の紅葉が配された柄行だ。
彬子さまのみごとな帯留め
24年秋の園遊会。大小の紅葉があしらわれた訪問着。べっ甲の扇型の帯留めが「みごと」、と専門家=2024年10月30日、赤坂御苑、JMPA昭和の時代から皇室に着物をつくり、納めてきた「染の聚楽」(京都市)代表の高橋泰三さんが、「特に素晴らしいお品」と話すのは、彬子さまの帯留めだ。
「緑の地に金や白の濃淡で織りだされた正倉院華文の帯。そこに合わせていらっしゃるのが、扇型のべっ甲の帯留めです」
べっ甲は、インド洋の海域に生息するタイマイというウミガメの甲羅から取れる天然素材。ワシントン条約で国際取引が禁止されているため、和装小物としても希少な品だ。
「このようなみごとな細工には、なかなか出会えません。宮家の方々から受け継いだお品かもしれませんね」
彬子さまの母、信子さまの帯からは、組紐とそれにつながる翡翠のような玉飾りがのぞく。
「おそらく懐中時計ではないでしょうか。和装の場合、腕時計のように着物の袖からのぞく姿は、美しさにかけます。帯に懐中時計を挟むのが、和装の小物づかいです」
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紫を基調にまとめられた訪問着も「みごとな着こなし」、と泰三さん。
灰色がかった鈍い紅色を指す、「長春(ちょうしゅん)」色の地に、松の意匠の着物。合わせているのは、深みのある紫地に金糸を用いた白金の「雲取り」文様の帯。
「二色の斜め織りの帯紐と真珠の帯留めが華やかさを添えています」(泰三さん)
紀子さまの楽しげな楽器文様
高円宮妃の久子さまは、躍動感のある流水文様が美しい裾濃(すそご)の訪問着を選ばれた。
紅葉を主役に、梅や水仙、牡丹など四季の草花を散らした柄行だ。
長女の承子さまは、淡い地色の訪問着。紅葉や菊、梅といった四季の草花の柄行で、藍色の紐文様が優美な変化をつけている。
皇嗣妃である紀子さまも、他の女性皇族と同じ三つ紋の訪問着。やや赤みのある灰色の「素色(そしょく)」の地に、紅葉や菊、桜などの四季の草花があしらわれている。琵琶や笛といった「楽器尽くし(がっきづくし)」の文様が楽しげな雰囲気だ。
園遊会では、2009年にユネスコ無形文化遺産に登録された宮内庁の楽部による雅楽も演奏される。
緑豊かな赤坂御苑で奏でられる古式ゆかしい雅楽と、皇族方の美しい和装は、招待者の記憶にも深く刻まれたに違いない。
(AERA dot.編集部・永井貴子)