「若ければ若いほどいい」「裸でマッサージをさせて」少女を捕まえ、50代男性と性交させ…英国育ちのインテリ女性が“モンスター”と呼ばれるまで(文春オンライン)|dメニューニュース

〈 「1日に3度の快感を得なければならなかった」“島”で少女を囲って性的虐待、著名セレブへの斡旋疑惑も…起訴後に突然死・米大富豪が残した“大きな謎” 〉から続く

 欧米の政財界の有力者を巻き込み、世界に衝撃を与えた性的スキャンダル「エプスタイン事件」。この事件の未公開資料、通称「エプスタイン・ファイル」を巡る問題が、米トランプ政権を揺るがす騒動に発展している。

 資産家のジェフリー・エプスタイン元被告(2019年に逮捕・起訴され、同年66歳で死亡)が、未成年の少女達に金銭を払い、性行為の相手をさせていたとして、児童買春で起訴されたこの事件。そもそも、一体何があったのか? 在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全4回の2回目/ 続き を読む)

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「エプスタイン事件」のカギを握る4人の人物。 #1 で取り上げたジェフリー・エプスタインに続く2人目は、彼の恋人・ギレーヌ・マクスウェルだ。

■ ギレーヌ・マクスウェル(Ghislaine Maxwell)

 ギレーヌ・マクスウェルはジェフリー・エプスタインの恋人と呼ばれ、公の場にはカップルとして登場していた。だが、背後ではエプスタインのために少女たちをリクルート、グルーミングし、エプスタイン以外の男たちのもとにも送り出し、さらにはマクスウェル自身もエプスタインとともに少女に性加害を加えていた。

2020年7月2日、米東部ニューヨーク州の連邦検察当局が記者会見で使用した、ジェフリー・エプスタイン(左)と元交際相手ギレーヌ・マクスウェルの写真 ©時事通信社

 エプスタインが2度目の逮捕の直後に自殺した、その翌年の2020年にマクスウェルも逮捕され、未成年者誘拐、児童性的人身売買を含む6つの連邦犯罪で起訴された。有罪となり、今は性犯罪者として懲役20年の刑を受け、刑務所に収監されている。

「14〜15歳」「若いほどいい」好みの少女を見つけては声をかけて

 のちに被害を訴え出た、今は成人となっている元少女たちによると、マクスウェルはフロリダやニューヨークでエプスタインの好みの少女を見つけては声を掛け、エプスタインの邸宅に連れ込み、裸でのマッサージから始めて性交を行わせていた。さらに少女たちにエプスタインの前でどう振る舞うかコーチし、他の少女を見つけて連れてくるよう指示もしていた。その際、「14〜15歳」「若いほどいい」と注文を付けていた。

 マクスウェルに声をかけられた少女たちは、イギリス訛りの教養ある英語を話し、洗練された立ち居振る舞いのマクスウェルを疑うどころか、姉のようにすら感じたと言う。また、少女たちの多くは恵まれない家庭に育っており、エプスタインが支払う現金にも抗えなかった。ある被害者は、物理的に拘束されているわけでもないのにエプスタインの元を去らなかった理由を「目に見えない鎖」と説明した。


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 エプスタインはカリブ海のヴァージン諸島に私有の島、通称「エプスタイン島」を持っており、自家用機に各界の名士と少女を乗せて飛び、島の邸宅でも性行為を行なわせた。島ではこのフライトは「ロリータ・エクスプレス」として知られていた。今、公表が求めてられている「エプスタイン・ファイル」の中で最も注視されているのが、どの著名人の名が「顧客リスト」に載っているか、だ。仮に司法省が主張するようにリストが存在しないとしても、顧客たちの名を、マクスウェルはもちろん知っている。

莫大な資金援助と引き換えに少女をあっせん

 マクスウェルは1961年にフランスで生まれ、イギリスで育っている。父親はチェコスロバキアからイギリスにわたって成功したメディア出版王。経済的に非常に恵まれた環境で育ち、成績も優秀でオックスフォード大学に進学している。大学の同級生にはボリス・ジョンソン元英国首相の妹がおり、マクスウェルは若き日のボリスとも知己だった。

 1991年、父親がニューヨークのタブロイド紙、デイリー・ニュースを買収した際に、マクスウェルは父によってニューヨークに派遣されている。同年11月に父が溺死し(マクスウェルは他殺説を唱えている)、続いて父とともにイギリスでビジネスを取り仕切っていた兄2人が、経営する企業の年金資金を不正流用したとして逮捕されている。

 このスキャンダルにも関わらず、すでに渡米していたマクスウェルはイギリス社交界に次いでニューヨーク社交界でも名士となり、エプスタインとも出会っている。

 マクスウェルは父の死と兄たちの逮捕により、父の信託基金から受け取る金額を減らされていた。アメリカでも上流階級のライフスタイルを渇望していたマクスウェルはエプスタインのために少女たちをリクルート、グルーミングした。加えて社交界の名士をエプスタインに紹介することも出来た。その代償としてエプスタインから莫大な資金援助を受けていたのだろう。


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 2008年にエプスタインが初回の逮捕をされたのち、被害者の女性が声を上げ始めた。その主張を「嘘だ」としたマクスウェルは2015年に名誉毀損で訴えられ、金額非公開の和解金を支払っている。その翌年、マクスウェルは14歳年下の男性と密かに結婚しており、結婚は2020年にマクスウェル自身が逮捕されるまで家族にも知らされていなかった。

 夫はマクスウェルの逮捕後に新たな恋人を作ってはいるものの離婚はしておらず、マクスウェルの資産を今も管理していると報じられている。このことから結婚は配偶者特権によるマクスウェルの資産保護が理由ではないかとされている。マクスウェルの純資産は2,000万ドルとも推測されているが、資産の多くはオフショア(税制優遇措置のある国や地域にある口座)にあり、金額は今も定かではない。

マクスウェルがエプスタインに「尽くした」理由

 もっとも、マクスウェルがエプスタインに「尽くした」のには他に理由があるとする説もある。マクスウェルが生まれて3日目に当時15歳の兄が交通事故に遭い、以後7年間、昏睡状態となった。両親は生まれたばかりの赤ん坊に目を向ける余裕がなく、マクスウェルは精神的な放置状態に置かれた。

 長じて父は9人の子供のうちマクスウェルを最も可愛がるようになったが、どの子供に対しても体罰や厳しい言葉を投げ付ける親だった。その父親の愛情に報おうとしたマクスウェルだが、父は不審な死を遂げた。そこに現れたのがエプスタインだった。

 こうした生い立ちと人生がマクスウェルにどのような影響を与えたのかは知る由もないが、被害者となった少女たちへの言い訳にはならない。マクスウェルが “リクルート” し、エプスタインの犠牲者となった女性はマクスウェルを「モンスター」と呼んだ。

「トランプ大統領は不適切な態度を取ったことはない」と証言

「エプスタイン・ファイルを公開せよ!」の声の大きさを恐れたトランプは、7月末に司法省副長官をマクスウェルのいるフロリダ州の最も警備が厳格な刑務所に送り、2日間にわたる面談を行わせた。

 面談の際に録音されたマクスウェルの応答が一部公開され、マクスウェルは「トランプ大統領は誰に対しても不適切な態度を取ったことはありません」「顧客リストはありません」と語っている。

 副長官との面談の直後、マクスウェルはテキサス州にある、警備の最も緩やかな刑務所に移され、今は恩赦、もしくは刑期の短縮を待ち望んでいる。

〈 《覚悟の実名告発》17歳で富豪から性的暴行、英アンドルー王子からの被害も訴え…世界中から注目された元少女の人生 〉へ続く

(堂本 かおる)

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