ゴルフ・ライダーカップで米国選抜が勝てなくなったわけ
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米メディアの中でも楽観的な記者は、米国で行われる今年のゴルフ、ライダーカップ(2年に1度行われる米国選抜と欧州選抜の対抗戦)は、ホームで戦う米国選抜が有利だとみている。やはり米国で行われた2016年は17対11、21年は19対9で圧勝しており、ホーム・フィールド・アドバンテージがある、というわけだ。
ただ、その指摘にはあまり説得力がない。欧州選抜の方はホームで圧倒的に強く、1997年のスペイン大会以来、欧州が舞台となった大会では7連勝中だ。しかも、スペイン、イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリアと通貨も言語も違う7つの国・地域で戦ったが、結果は同じ。米国のファンはもはや、欧州でライダーカップが行われるときは、眠い目を目をこすり、時差に抗ってまでテレビをつけるというモチベーションが低い。
95年以降、アメリカで行われた7大会において、米国選抜は4勝を挙げているものの、3敗を喫している。ほぼ同じ期間、欧州選抜がホームで7勝を挙げているのと比べれば、勝敗が拮抗しており、よって今回は米国選抜が有利だという根拠としては、弱い。
来月26〜28日にニューヨーク郊外のベスページ・ブラックで行われるライダーカップの行方を冷静に予想するなら、米国代表が苦戦するのでは、とみる条件の方がそろっている。
例えば、本来であれば、米国選抜の柱となるべきザンダー・シャウフェレ、パトリック・カントレー、ジョーダン・スピースらが今季は精彩を欠き、カントレー、スピースは選抜漏れの可能性もある。今季未勝利のスピースは、プレーオフ(フェデックス・カップ)の2戦目(BMW選手権)の出場権さえ得られなかった。シャウフェレはライダーカップのランキングで3位だが、彼も今季は未勝利。トップ10に入ったのも3回しかない。本来の実力から考えれば、物足りない。
そうした一方、今季のプレーオフ初戦(セント・ジュード選手権)では、ジャスティン・ローズ(英国)がJ・J・スポーン(米国)とのプレーオフを制して優勝したが、3位タイにはトミー・フリートウッド(英国)が入るなど、欧州勢の躍動が目立った。
同2戦目にもライダーカップの欧州選抜として出場見込みの選手――ローリー・マキロイ、トミー・フリートウッド、マシュー・フィッツパトリック、ロバート・マッキンタイア(すべて英国)、シェーン・ローリー(アイルランド)、ルドビグ・オーベリ(スウェーデン)、ビクトル・ホブラン(ノルウェー)、トーマス・デトリ(ベルギー)らが、そろって駒を進めている。
おそらく彼らが米国のゴルフコースを苦にしないのは、普段からこの国を主戦場としており、コースにも慣れているからだろう。ライダーカップが欧州で行われる際、米国選抜の選手らが、「こんなコースは初めてだ」と漏らすケースがあるが、逆のパターンはまれなのだ。
そもそも、以前とは状況がまるで異なる。米国選抜が最後に欧州で勝ったのは93年。その後、90年代後半に入ると欧州勢が勢力を拡大し、タイガー・ウッズ(米国)がゴルフ界の頂点に立った2000年以降になって、さらに増えた。ウッズ人気により、テレビの放映権料、賞金総額がアップ。お金が集まるようになると同時に欧州の若手も米国を目指すようになった。
まだ、米国選抜がライダーカップで圧勝していた時代、米国ファンは欧州の選手らを普段から見ることはなかった。彼らは、欧州PGAツアー(現DPワールドツアー)を主戦場とし、四大大会になると、アメリカにやってくる――というのが一般的だった。しかしいまや、欧州のトップは米男子ツアーを中心にプレーし、DPワールドツアーはそのためのステップストーン(足がかり)となっている。
もちろん、サウジアラビア政府系ファンドが支援するLIVゴルフでプレーする選択肢がないわけではなく、同ツアーの資金力は桁外れではあるものの、〝商品〟としては欠陥が目立つ。結果、世界のトッププロが、米男子ツアーで戦うという構図に変化はなく、それが米国選抜がライダーカップでかつてのように勝てなくなった、という事態を招いている一因だろう。
もちろん絶対数では、米出身のプロの方が多いが、ライダーカップは少数精鋭の戦い。そのレベルではもはや実力に差はない。
こうして俯瞰(ふかん)すると、米国選抜がホームだから有利、というのはファンの声援があるから、という程度しかない。それもゴルフではどの程度、効果があるのか。例えば、バスケットボールやアメリカンフットボールの世界ではホームアドバンテージが意味を持つが、野球ではそれほどでもない。
ゴルフではどうかだが、欧州選抜が欧州で強いのは、やはり米国選抜が欧州のコースを知らないから――と考えられ、一方、米国で行われたここ7大会は、米国選抜の4勝3敗。ほぼ五分という結果が、その答えかもしれない。
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