パウエル議長を偽証罪で刑事訴追を、共和党議員が司法省に検討要請
米共和党のルナ下院議員は、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が議会公聴会で宣誓の上で虚偽の証言を行ったとして、司法省に刑事捜査と訴追の検討を要請した。
同下院議員はボンディ司法長官に宛てた今月19日付の書簡で、パウエル議長が6月25日に上院銀行委員会で、進行中のFRB本部改修工事の詳細について2度にわたり虚偽の証言を行ったと非難した。工費25億ドル(約3700億円)の改修工事には管理不備を問う批判が共和党から寄せられ、議論の的となっている。
議員の告発要請書は司法省に拘束力を持たない。FRBと司法省にコメントを求めたが、いずれの担当者からも返信がない。
ここ数週間、パウエル議長とFRBに対するトランプ政権からの非難がなかった日がない。矛先は今年に入って一貫して据え置かれている政策金利だ。FRB当局者の大半は、関税の影響を見極めてから利下げ再開を検討する考えを明らかにしている。政策金利は年内に引き下げられるという見通しだ。
こうした様子見姿勢はトランプ大統領の逆鱗(げきりん)に触れ、パウエル議長を「間抜け」、「史上最も間抜けで、有害な政府当局者」と罵倒するに至っている。大統領は今月16日、パウエル議長を近く解任すると報じられたが、「その可能性は低い」と自ら否定した。
6月の上院銀行委員会で、パウエル議長はFRB本部で過剰に華美な改修工事が行われているとの報道について、事実と異なると否定。FRB当局者は「公的資金を責任持って管理している」と証言した。
しかしルナ議員の書簡は、パウエル議長が「複数の重大な虚偽の証言を行った」と主張。具体的にはまず、VIP専用食堂や特別エレベーターといった豪華な設備は建設されていないとパウエル氏が否定したこと。次には1930年代以降、大がかりな改修工事は行われていないと議長が述べたことだという。ルナ議員は当局にFRBが提出した文書と、1999年から2003年にかけて行われた改修工事をその根拠としている。
またパウエル議長が行政管理予算局(OMB)のボート局長に宛てた17日付の書簡にも、虚偽の記述があるとルナ議員は主張。FRB本部の工事に対しボート局長は今月、調査を開始しており、パウエル議長は書簡でその詳細を説明した。
歴史的建造物2棟から成るFRB本部は高水位地域に位置し、地下深く建造されていることから技術的な課題がある。そのために工費は2023年当時の見積もり19億ドルから膨れ上がった。
改修計画はパウエル氏が議長に就任する数か月前の2017年にFRBが承認。論争を受け、FRBは同プロジェクトの情報をまとめた特設ページやビデオを公式サイトに掲載している。
ベッセント米財務長官は21日、経済専門局CNBCとのインタビューで、「われわれがすべきことは、米連邦準備制度という制度全体、そしてそれが成果を上げてきたかを検証することだ」と述べた。
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原題:GOP’s Luna Refers Powell Perjury Claim to Justice Department(抜粋)