米国から逃げたい女性たち…44歳までの40%が「機会があれば海外で永住希望」 トランプ氏の人気取り政策と「男性優位」傾向で社会の分断が止まらない

写真拡大

 トランプ氏が米大統領に就任してから1年が経とうとしている。だが、トランプ氏の心中は穏やかではないだろう。アフォーダビリティー(価格の手ごろさ)という難題を突きつけられているからだ。

【写真】ロングヘアのゴージャス系美女がずらり…トランプ政権を支える女性たち

 就任前のトランプ氏は物価を下げると豪語していたが、高関税などのせいで国民の多くが物価高に悩まされる日々を送っている。このため、トランプ氏への支持率は不支持率を大きく下回ったままだ。

 トランプ氏は12月17日、クリスマス休暇を前に国民向けテレビ演説を行った。約20分間の演説で特に時間を割いたのは物価への言及だった。

2026年も多難の年か

 価格上昇はバイデン前政権の失策によるものだったと繰り返し、政権発足後にガソリンや卵が値下がりしたことを強調した。トランプ氏は新年に米国史上最も大胆な住宅改革計画を発表することも明らかにしたが、詳細を述べることはなかった。

 自身の政策を精一杯アピールした形だが、来年も物価高が続く可能性が高く、逆風が収まる気配はないのが現状だ。

強力なトランプ支持者は減少の一途

 17日に公表された米地区連邦準備銀行の四半期調査によれば、企業の財務責任者は引き続き関税を最大の懸案事項として挙げており、来年は平均して物価が4.2%上昇すると見込んでいる。

 雇用市場の変調も頭の痛い問題だ。米国の11月の失業率は4.6%と、政府閉鎖前の9月の4.4%より0.2ポイント上昇した。2021年9月以降で最も高水準となった。雇用市場の悪化が続けば、トランプ氏の支持率がさらに低下するのは確実だ。

 気がかりなのは、トランプ氏の強力な支持者の割合が最低水準となっていることだ。NBCなどが14日に発表した世論調査では21%と4月(26%)から5ポイント下落し、過去最低を記録した。

人気取りの強気政策を乱発

 窮地に陥りつつあるトランプ氏は12月に入り、支持者にアピールできる政策を乱発している感がある。

 トランプ氏は15日、合成麻薬フェンタニルとその前駆体を「大量破壊兵器」に指定する大統領令に署名した。違法フェンタニルが“化学兵器に近い”と位置づけられたことで、国防総省が司法省の取り締まり活動を支援することが可能となる。来年の中間選挙をにらみ、米国民、特に共和党支持者の関心が高い治安問題への取り組みを誇示した形だ。

 18日にもトランプ氏は、大麻に関する大統領令に署名した。大麻は現在、ヘロインなどとともに乱用や依存の危険性が高い1類薬物に分類されているが、大統領令は危険度が低い3類薬物への変更を最も迅速な方法で進めるよう連邦政府機関に指示する内容だ。

 大麻の規制緩和は若年層を始め、黒人やヒスパニックなどから強い支持を受けており、中間選挙を意識した対応だとの指摘が出ている。

アフリカや中東地域を“狙い撃ち”

 筆者が注目しているのは、入国制限の強化だ。

 トランプ氏は16日、今年6月に公布した入国制限対象国19カ国を39カ国に拡大する大統領令に署名した(来年1月から発効)。国家安全保障などを理由とした措置だが、入国制限対象国の数の多さと、そのほとんどがアフリカや中東地域に集中していることが特徴だ。

 米紙ニューヨーク・タイムズは16日、今回の措置は特定の人種や国籍を狙い撃ちにした差別的政策という印象を強めたと報じている。

 専門家からはトランプ政権は米国の移民制度を100年前の人種割当制時代に戻そうとしているのではないかとの指摘が出ているほどだ。

 100年前の米国では移民規制を通じて欧州出身者を優遇する一方、アジア出身者を冷遇するという差別的な運用がなされてきた。この悪弊は公民権が盛んになった1960年代に撤廃されたが、半世紀を経て復活しつつあるというわけだ。

「男性優位化」傾向を後押し

 トランプ政権2期目の関係者は100年前の米国を理想とする傾向があるが、当時の米国社会は女性差別の傾向が強かった。そのせいだろうか、米国社会ではこのところ「男性優位化」の傾向が強まっており、トランプ政権はこれを後押しする運動を展開している。

 AFPは19日、トランプ政権は多様性・公平性・包括制(DEI)プログラムを棚上げにする試みの一環として、白人男性に対し、職場で人種または性別に基づく差別を受けたとして損害賠償訴訟を起こすよう奨励していると報じた。

 トランプ政権の反DEI政策の深層には「有能な白人のポジションが無能なマイノリティに奪われてきた」とする白人男性の被害者意識があると言われている。逆境に立たされていると感じる彼らにとってトランプ氏は“救世主”だった。

 だが、女性からすればこれほど不愉快なことはない。それを痛感しているのは若年層だ。

 世論調査企業ギャラップの最近の調査で、機会があれば外国に永住したいと回答した15~44歳の米国人女性が40%に達した。2014年(10%)の4倍に匹敵する水準だ。他の年代の女性も同様の傾向にあり、全体でも約10%~20%上昇している。

 このように、米国社会の分断は深刻化する一方だ。悩める超大国の今後の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。

藤和彦経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

外部サイト

関連記事: