本当に頭のいい人は「営業日報」の書き方が違う…「小さな1件」から大きな成果を生むための"さりげない一言" 工夫一つで上司との「良い壁打ち」になる
仕事で高い成果をあげる人は、どんなことを心がけているのか。企業の新規事業開発を支援する「インキュベータ」代表の石川明さんは「デジタル化が進んで便利になった半面、多くの企業で『壁打ちが少ない』という新たな問題が出てきている」という――。
※本稿は、石川明『すごい壁打ち』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
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なぜ社内の会話は減少し続けているのか
ビジネスパーソンの基礎能力として「コミュニケーション力」が重視されるようになって、随分と時が経たちます。今や、多くの企業が採用の基準で重視する基本スキルの一つです。
また、企業はITを活用して、社内のコミュニケーションを活性化しようとさまざまな取り組みを続けています。ですが感覚的には、データとしての「情報」は増える一方で、人と人との直接的な「対話」の量は減っているように感じませんか?
「組織を活性化したい」。この言葉をよく耳にします。では「活性化された組織」とは具体的にどんな状態を指すのでしょう。その定義は簡単ではありませんが、少なくとも「活発な対話が行われている」という要素は外せないのではないでしょうか。大事なのは、対話の量・頻度・幅の広さです。
現代の組織内の対話量が減りがちなことには、いくつかの理由が考えられます。
デジタル化が奪った「ワイワイガヤガヤ」の場
現代のオフィスの風景を見てみましょう。多くの人が、黙々とパソコンの画面に向かって仕事をしています。かつては当たり前だった電話の呼び出し音も、同僚との会話も、めっきり聞こえなくなりました。最近では、「話をするなら会議室や打ち合わせスペースへ」が暗黙のルールになっているオフィスも増えています。静かに集中したい人への配慮という名目です。
もちろん、人々は決して孤立しているわけではありません。メールやチャット、ビデオ会議などを使って常にいろいろな人とやり取りはしているはずです。
それでも、パソコンが普及する前の職場で、フロアの中で皆がワイワイガヤガヤやっていた時代と比べれば、デジタル化が進んだ今では、人と人との直接的な対話は、確実に減っているように思います。
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組織の生産性や効率を追求した結果、対話の量が減っているのは、ある意味で自然な流れかもしれません。ただ、その変化が長期的には組織のパフォーマンスを低下させる可能性を、私は強く懸念しています。
特に懸念されるのが「風通しの悪さ」です。組織の風通しが悪くなると、上下の意思疎通が滞り、部門間(横)の連携も弱くなります。問題が表面化しにくくなり、「気づいたときには手遅れ」ということも起こりかねません。
風通しが悪い組織では、小さな気づきや、まだ形になっていないアイデアは、組織の中で声を上げにくくなります。リスクのある新しいことへのチャレンジや変革の機運も生まれにくく、組織は次第に保守的になり、停滞していきます。
こうした事態を避けようと、組織はさまざまな工夫を重ねています。かつての「飲みニケーション」やタバコ部屋(喫煙ルーム)に代わるものをと、さまざまな取り組みが行われています。
1on1で何を話せばいいのか問題
オフィスにカフェスペースを設けたり、部署を超えたランチ会や「井戸端会議(よもやま会などとネーミングされる組織もある)」を企画したりしています。他にもオンライン上でのコミュニティづくりや、1on1ミーティングの制度化など、対話の機会を意図的に作り出そうとする動きも増えています。
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これらの取り組みにも、確かに意味はあるでしょう。しかし、本当に大切なのは「場」や「機会」を用意することだけではありません。そこで「どんな対話を交わすのか」、その中身こそが重要なのです。実際のところ「1on1で何を話せばいいかわからない」という声はよく聞きます。
埼玉大学の宇田川元一氏の著書『企業変革のジレンマ』(日本経済新聞出版)では、組織内での「対話」こそが変革を進めていくための鍵と紹介されています。
拙著『すごい壁打ち』(サンマーク出版)では、そんな「対話」の一つの形として壁打ちというスタイルをご紹介しました。壁打ちは組織の風通しを良くし、活性化する効果的な方法の一つになり得ます。形式張った会議とは別に、組織の中で壁打ちが日常的に行われるようになれば、部署や立場を超えた対話が自然と増えていくはずです。
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コロナ禍は、私たちの働き方を大きく変えました。リモートワークが当たり前になり、多くの仕事がオンラインで進められるようになりました。通勤時間がなくなり、時間を効率的に使えるようになった人も多いでしょう。
しかし、この変化は人と人との対話の量を確実に減らす方向に働いているように思います。
オフィスにいれば、隣の席の人に「ちょっといいですか?」と気軽に声をかけられます。「最近どう?」といった何気ない一言から、自然と会話が広がることもあります。一方、オンラインではそういったカジュアルな声かけが、なんとなく面倒に感じてしまいませんか? 「わざわざ」連絡を取らなければならない感覚が、ついつい対話への一歩を遠ざけてしまうのです。
メールやチャット、ビデオ会議といったツールは、確かに便利です。工夫次第で離れた場所にいる人とも効率的にやり取りができます。けれども、一緒にランチを食べたり、雑談をしたり、何気ない時間を共有したりする機会は明らかに減っています。結果として、人と人との直接的な対話の総量は、やはり減少しているように思えます。
状況把握しづらいが、面談するまでもないし…
さらに、近年の仕事のやり方の特徴として、「パーソナル化」が進んでいることも挙げられます。
もちろん、誰もが完全に独立して仕事をしているわけではありませんが、個人で処理できる仕事の範囲は広がっています。多くの作業がパソコンとサーバーの間で完結し、周りの人からは何をしているのかが見えにくくなっています。
かつては当たり前だった「全員集まっての会議」も、今では非効率の代名詞さながらにいわれるように……。ファイルの共有やメールの一斉送信で済ませることが、新しい常識になりつつあります。
確かに、これらの変化は組織の生産性を高めることに繋つながっています。しかし、チームを率いる立場の人にとっては、新たな悩みの種となっているかもしれません。メンバーの様子が把握しづらい。かといって、わざわざ声をかけて状況を確認しようとすると、大げさな「面談」のようになってしまう。そんなジレンマを感じている管理職の方も多いのではないでしょうか。