【米国市況】日米金利差意識で円売り、3月以来の150円台後半-株下落
31日のニューヨーク外国為替市場で、円はドルに対して続落。3月28日以来となる1ドル=150円台後半で推移した。日米の金融政策決定会合を受け、両国の金利差がすぐには縮まらないとの見方から円売り・ドル買いが優勢となった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1221.65 2.40 0.20% ドル/円 ¥150.77 ¥1.26 0.84% ユーロ/ドル $1.1415 $0.0010 0.09% 米東部時間 16時57分円は一時0.9%安の150円84銭に沈んだ。主要通貨の中で、円の下げが最もきつかった。
日本銀行の植田和男総裁の会見で、期待されたほど利上げに積極的な姿勢が示されず、円売り圧力が強まった。米国ではパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を受けて利下げ期待が後退した。
ペッパーストーングループのシニアストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は植田総裁が特に新しいことを話さない一方、利上げに前向きなタカ派的な発言も行っていないため、近いうちに追加利上げが行われるとの期待がやや後退した可能性があるとの見方を示した。
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一方、ドルは堅調。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は6営業日続伸となった。
朝方に発表された米個人消費支出(PCE)コア価格指数は前年同月比の伸びが市場予想を上回り、インフレ抑制の進展が限定的であることが示された。これを受け、ドル指数はこの日の高値を付けた。
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ドル指数は7月に月間で2.7%上昇。トランプ政権2期目が始まった1月から月間ベースの騰落率はマイナスが続いていたが、ようやくプラスに浮上した。堅調な米経済と通商合意がドル買いを促している。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は「ドルはかなり軟調だったが、米経済データの底堅さや関税交渉の進展、売り一巡感を背景に一定の買いを集めている」と述べた。
マクロ・ハイブの為替ストラテジスト、ベン・フォード氏は「通貨バスケットに対してドルを引き続きショートにするには、トランプ氏による何らかの劇的な材料、もしくは米国を中心とした景気減速が必要になるだろう」と話した。
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イン・タッチ・キャピタル・マーケッツのシニア通貨アナリスト、ピョートル・マティス氏は、米経済の堅調さを確認できるデータが今後も続き、トランプ大統領によるパウエルFRB議長批判が実際の行動につながらなければ、足元のドルの「修正的反発」は向こう数週間、あるいは数カ月にわたって続く可能性があるとみている。
ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は「労働市場軟化のより明確な兆候をFRBは待っており、9月の米利下げは確定ではない。一方で、関税の圧力によりインフレは押し上げられている」と指摘。
「経済データの悪化やFRBのハト派転換を待つ間、ドルをショートにしてネガティブキャリーの状態を維持するのは困難であることに投資家は気づき始めている」とし、ドルは今後2、3カ月にわたって上昇基調を維持するとの見方を示した。
株式
米株式市場ではS&P500種株価指数が続落。堅調な業績を発表したハイテク大手の一角が相場を押し上げたが、8月1日の関税発動期限を控え、失速する展開となった。トランプ米大統領は製薬会社に値下げを要求した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6339.39 -23.51 -0.37% ダウ工業株30種平均 44130.98 -330.30 -0.74% ナスダック総合指数 21122.45 -7.22 -0.03%S&P500種は朝方に前日比1%高まで上昇したが、勢いを持続できなかった。トランプ氏はイーライリリーやノボノルディスク、ファイザーといった世界的な製薬大手17社に、米メディケイド(低所得者向け医療保険)対象薬品の価格を引き下げるよう書簡で要求した。またホワイトハウスによると、トランプ氏は貿易相手国・地域に対して8月1日発効の新たな関税率を課す大統領令に31日に署名する。
前日に発表した業績が好感されたマイクロソフトは、時価総額が一時4兆ドル(約603兆円)台に乗った。メタ・プラットフォームズも株価が一時12%余り上昇した。「マグニフィセント・セブン」の指数は最高値を更新して引けた。
通常取引終了後にアップルが4-6月決算を発表。売上高がアナリスト予想を上回った。アマゾン・ドット・コムが示した7-9月の営業利益見通しは市場予想を下回った。
6月の米PCE統計では、コア価格指数の前月比の伸びが加速する一方、支出はわずかな増加にとどまった。利下げへの道筋を巡って金融当局内の見解を二分する力が働いていることをうかがわせる内容となった。
市場関係者は、1日に発表される雇用統計で経済・金融見通しに関する新たな手掛かりを得ることになる。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「利下げは好材料ではあるが、米国株が上昇を続けるために必要というわけではない」と指摘。「むしろ企業業績が上昇持続シナリオを左右しており、きょうはマイクロソフトとメタが前日に発表した決算が注目された」と述べた。
ベルウェザー・ウェルスのクラーク・ベリン氏は「インフレには粘着性があり、30日のFOMC会合での政策金利据え置きは正当化される」と指摘。「株式相場は今年これまでのところ、利下げなしでも力強い上昇を遂げてきた」と話した。
米国債
米国債市場は下落。年限が短めの国債がアンダーパフォームした。PCE統計のほか、雇用コスト指数、新規失業保険申請件数などの米経済指標が発表されたが、相場の反応は総じて限られた。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.90% 0.2 0.04% 米10年債利回り 4.37% 0.4 0.09% 米2年債利回り 3.95% 1.2 0.31% 米東部時間 16時57分原油
ニューヨーク原油先物相場は4営業日ぶりに下落。米国のインフレ指標が予想以上に悪化したことなどを背景に、株式相場が弱含んだ流れが波及した。前日に6週間ぶり高値をつけていたこともあり、利益確定の動きも出た。
ただ、市場は需給バランスに関する明確な兆候を待っており、この日の値動きはおおむねレンジの範囲内にとどまった。
バッファロー・バイユー・コモディティーズのマクロトレーディング部門責任者、フランク・モンカム氏は「この週末を通じて、石油輸出国機構(OPEC)やロシアの動向に関する一段の明確性が得られるまで、投資家は過度に上値を追わないよう慎重姿勢を取っている」とし、8月1日に関税の期限が迫っていることも意識されていると述べた。
トランプ米大統領はインドからの輸入品に対し、8月1日から少なくとも25%の関税を賦課すると表明。同国がロシアから軍装備品やエネルギーを購入していることを問題視し、追加のペナルティーを科す考えも示した。
インドの購入が停止されれば、ロシアは最大級の顧客を失い、新たな買い手を見つけなければならなくなるため、市場への影響は大きくなり得る。だが、市場の反応が相対的に小さいことから、トランプ氏が今回の措置を実行に移すとは現時点で予想されていないことがうかがえる。
ゴールドマン・サックス・グループのユリア・ジェストコヴァ・グリグスビー氏は、「ロシア産原油の代替を見つけるのは困難だ」とリポートで指摘。「経済制裁の具体的な内容は依然として不透明だが、投資家はロシア産原油を輸入する国々に対して最大100%の関税が課されるリスクに注目している」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は前日比74セント(1.1%)安の1バレル=69.26ドル。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.1%下げて71.70ドルで引けた。
金
金先物相場は小幅続落。投資家の関心は8月1日に期限を迎える貿易協議や、同日発表される7月の米雇用統計に移っている。雇用統計では雇用者数の伸び鈍化と失業率の上昇が予想されている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、4.20ドル(0.1%)安の1オンス=3348.60ドルで引けた。一方、スポット価格はニューヨーク時間午後3時15分現在、前日比19.45ドル(0.6%)高の3294.63ドル。
原題:Dollar Rises; Yen Lags Behind Peers After BOJ: Inside G-10
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