【日本市況】円下げ縮小、トランプ政権が対中関税発動-株上げ縮める
4日の日本市場は米トランプ政権の関税政策に揺さぶられた。円は対ドルで下落、株式は上昇したが、中国に対する10%の追加関税を予定通り発動したことを受けて上げ幅を急速に縮小する場面があった。
円相場は1ドル=155円41銭まで下落した後、対中関税発動を受けて一時154円台後半まで買い戻された。株式は電機や自動車などの輸出関連が伸び悩んだ。債券は日本銀行の利上げに対する警戒感が根強く、長期金利が2011年以来の高水準を更新した。
金融市場は、カナダやメキシコへの関税発動延期を受けて3日の動きの巻き戻しが生じていたが、対中関税発動で再び揺り動かされた。引き続きトランプ政権の政策がリスク要因になっている。
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SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、米国は今後も中国やカナダ、メキシコとの交渉を続けるとみられ、「いちいち市場が反応する必要はないが、結局は揺さぶられてしまう」として、金融市場はしばらく不安定な展開が続くとの見方を示した。7日と伝わる日米首脳会談を見極めたいとも述べた。
国内為替・債券・株式相場の動き-午後4時過ぎ- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.3%安の155円27銭
- 朝方に155円41銭まで下落した後、一時154円80銭台まで下げ幅縮小
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.6%高の2738.02
- 日経平均株価は0.7%高の3万8798円37銭
- 長期国債先物3月物の終値は前日比30銭安の140円45銭
- 新発10年債利回りは2.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.27%と11年4月以来の高水準を更新
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=155円台前半に下落。米トランプ政権がメキシコやカナダに対する関税発動を延期したことを受けてリスク回避の動きが和らぎ、円が売り戻された。一方、中国に対する追加関税は発動され、一時154円台後半まで下げ幅を縮小する場面もあった。
三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、カナダとメキシコに対する関税発動が延期され「最悪のシナリオが回避されて安心感が出ている」と語った。円は前日までは相対的な優位性から買われていたが、この日は反動で売られていると言う。また、対中関税が発動されても「あまりエスカレートしそうにないことを考えると、ドルの下値は堅い」とみていた。
大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、次の注目は日米首脳会談で、「トランプ大統領が円安や対日貿易赤字に言及したら円が買われる」と予想する。
株式
東京株式相場は上昇。米国がメキシコとカナダに対する追加関税賦課を先送りしたことを受けて大幅に反発した後、対中関税の発動を受けて、朝に買われていた電機や自動車などの輸出関連を中心に上げ幅を縮小した。
T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、「トランプ砲に驚いて、マーケットが右往左往するというところの再認識だ」と述べた。
アドバンテストやディスコなどの人工知能(AI)・半導体関連株も、ソフトバンクグループと米オープンAIが日本のAIインフラへの投資を共同で進めることを受けて強かった。京セラは自己株取得を3日に発表したことを受けて一時12%上がり、18年以来の上昇率となった。
一方、三菱自動車は利益見通しを下方修正したことで一時15%安と16年以来の下落率を記録した。
債券
債券相場は下落。長期金利が一時11年以来、2年や5年の中期債利回りが一時08年以来の高水準を更新した。日銀の利上げ継続姿勢を警戒して売りが優勢だった。この日の10年国債入札は強めの結果になったが、相場の支えにならなかった。米国の対中関税発動を受けて下げ幅を縮小する場面もあった。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジスは、10年債入札は投資家の応札も最低限の印象だとし、「中立金利など見極めにくいテーマがある中で、日銀の利上げが意識されている状況では買いづらさがある」と指摘。日銀からタカ派的な情報発信が続いており、「投資家も金利水準が見合っていないわけではないが、タイミングが悪い」と述べた。
10年債の入札結果によると、最低落札価格は99円44銭と市場予想(99円42銭)を上回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.18倍と、前回の3.36倍から低下。小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は3銭と前回1銭からやや拡大した。
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新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.735% 0.925% 1.270% 1.985% 2.325% 2.680% 前日比 +1.5bp +3.0bp +2.5bp +3.0bp +2.5bp +1.0bpこの記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。