「ヤレバデキル」のハットトリック。 ロペスの大爆発で完勝を収める [J29節 磐田戦レビュー]
ロペスが満足しなかった理由
キックオフから降り続いた小雨は、最後まで止まなかった。試合終了を告げるホイッスルがヤマハスタジアムに響き渡る。雨に濡れながら声を枯らして応援したマリノスサポーターが歓喜する瞬間だ。
狂喜乱舞のゴール裏とは対照的に、背番号10は呆然と立ち尽くしていた。首を横に振り、手で顔を覆い、次に頭を抱える。整列するためにセンターサークル近くまで歩くのも、すぐには動き出せなかった。ハットトリックを決めてチームが勝利したのにもかかわらず、だ。
理由は試合終了間際のワンプレーにあった。右サイドの井上健太がグラウンダーで鋭いクロスを送る。ゴール前で待ち構えていたアンデルソン・ロペスは左足のインサイドで合わせたが、シュートは左ポストに弾かれてしまう。この日、自身4点目のチャンスを逃してしまった。
少し時間が経ってからのメディア対応時には勝利とハットトリックの喜びで表情を緩ませていたが、前述のシーンについては「今日はバーとポストに1回ずつ当たったし、最後に決められなかったのは本当に痛い」と苦笑い。前半にもシュートがバーに阻まれており、そこで決めていれば試合展開がもっとラクになっていたはず。
最高の結果を残してもなお、それ以上を求める。この日の3ゴールで、ついにレオ・セアラを抜いてリーディングスコアラーとなった。さらに昨季の22得点も上回り、今季はすでに23得点。いったいどこまで数字を積み上げるのか。「得点感覚が去年よりも優れていると感じる」と自信たっぷりだから期待せずにはいられない。
ゴール前ではエゴを出すストライカーだが、チームへの賛辞と仲間への感謝を決して忘れない。この日の第一声もそうだった。
「チームを称えないといけない。チャンスを多く作って、相手にチャンスを作らせなった。チームとして素晴らしいパフォーマンスを見せたし、アウェイの地でも勝ち点3をしっかりと取れた」
点を取れる理由が、そこにある。「チームメイトも僕のためにプレーしてくれている感じもあった」(ロペス)のは偶然ではない。試合だけでなく練習を含めた日々の積み重ねと徳を積んでいるからこそ、チャンスボールが集まってくる。
2年連続得点王へ「ヤレバデキル」。ロペスは残り2試合でさらにゴール数を伸ばすだろう。
2アシストの左サイドバック
最終的に違いを作ったのは間違いなくロペスで、サッカーにおいてストライカーの存在と出来が試合結果を大きく左右する。高給取りになるのも当然だ。
ここでは、もうひとり違いを生み出した選手を取り上げたい。
(残り 1020文字/全文: 2239文字)
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。