ロンドン中心部のパブに「立ち飲み」規制案 伝統揺るがす動きに怒りと反発の声
ロンドン(CNN) めったに熱くならない英国人だが、由緒あるパブの伝統を規制しようとする提案には、さすがに怒りを隠せないようだ。 写真特集:ロンドンでヌードパブを楽しむ ロンドン中心部の大部分を管轄するウェストミンスター区議会は、管轄区域内のパブで、立ったまま酒を飲む「立ち飲み」行為を減らす方針を打ち出した。この管轄内には、決定的なことにナイトライフの中心地であるウェストエンドのソーホーが含まれている。 9日に一般からの意見公募を終えたこの提案は、パブの利用客から英首相官邸の住人まで、あらゆる人々をいら立たせているようだ。 区議会が6月に公表した計画は、酒類販売の許認可に関する方針の草案に盛り込まれている。草案では、「過度の酩酊(めいてい)を抑制するとともに、酒類を提供する店舗において、大量の立ち飲み客に対応するオープンなバースペースに代わり、人々が着席して飲み物を楽しみ、テーブルサービスで食事を注文できる座席の増設を促すこと」を提案している。 地元メディアがこの問題を報じると、怒りの声が噴出し、首相官邸までが意見を表明する事態となった。 首相官邸の報道官は7日、英PA通信に対し、「人々が談笑するにぎやかなパブは公共の迷惑などではなく、英国の生活文化そのものであり、何千もの雇用を生み出しているのだ」と述べた。 報道官はさらに、「ソーホーが世界的に有名になったのは、早い時間にラストオーダーを取り、午後10時に明かりを消してきたからではない」と指摘。「首相は、パブが今後も繁栄を続けられるよう、地元の指導者に業界と協力することを促している」と語った。
この問題が引き起こした反発の激しさに驚いたのか、区議会は、パブでの立ち飲みを「禁止」しようとしているわけではないと否定した。 だが区議会が6日、X(旧ツイッター)に「でたらめな見出しは無視してほしい」と投稿すると、怒りの声が相次いだ。 あるユーザーは、「立ち飲みに制限が加えられれば、パブの利益はさらに減り、閉店につながるだろう」と書き込んだ。 別のユーザーは、「何百年もの間、人々はパブの外で安全に立ち飲みをしてきた。頼むから放っておいてくれ!」と訴えた。 ウェストミンスター区議会の代表を務めるポール・スワドル氏はCNNに寄せた声明で、この問題をめぐる報道が「混乱を招いている」と指摘。「率直に伝えたい」「ウェストミンスターのパブで立ち飲みを禁止する計画はないし、これまで一度もなかった」と語った。 スワドル氏によると、意見公募の目的は一般の意見を把握することであり、区議会は寄せられた意見を詳しく検討するという。「我々が何を達成しようとしているのか、はっきりさせておきたい。これは安全に関するものであり、ビールを手にバーに立つ人を止めるものではない。我々はウェストミンスターを、人々が外出して酒を楽しむことができない街にすることを決して許さない」 それでも、区議会が提示した計画では、「立ち飲み」が問題のある行為として繰り返し言及されている。 ロンドン市長のサディク・カーン氏もウェストミンスターの提案に反応し、Xに「世界的に有名なナイトライフ地区を、村の集会所のような発想で運営することはできない」と投稿した。 市長室の広報担当者は、この動きを「制限的で成長を阻害するもの」と表現。「ナイトライフやホスピタリティー業界がこれまで以上に支援を必要としている時に、このような政策は店舗を存続の危機にさらすことになる。また、ロンドンを観光客にとって魅力の乏しい場所にしてしまうだろう」と述べた。 現在、ロンドンの33の区はそれぞれ異なる営業認可の方針の下で運用されているが、市長室はより多くの管理権限を得ようとしている。 一方、ソーホーの有名パブ「フレンチ・ハウス」を37年間経営するレスリー・ルイス氏はPA通信に、「人々はソーホーで楽しみたい。外で酒を飲みたいし、踊りたい。座って、その場にとどまるのではなく、人と出会い、会話をしたいのだ」と語った。 英国のナイトライフ関連企業を代表する業界団体「ナイトタイム・インダストリーズ協会」のマイケル・キル最高経営責任者(CEO)は「パブで立つことは、常に英国のパブ文化の一部だった。そうやって人々は友人と会い、スポーツの生中継を観戦し、注文を待ち、何世代にもわたってパブが提供してきた独自の雰囲気を楽しんできたのだ」と述べた。