AIが医師のがん発見力をひそかに浸食、導入数カ月で技能低下-研究
- 医師がAIの推奨に過度に依存か、支援なしでは集中力や責任感低下
- AIの性能向上に伴いスキル低下の影響は増大へ-オスロ大学の森氏
人工知能(AI)は医療を変革する可能性があると期待されているが、新たな研究によれば、導入からわずか数カ月で一部の医師のスキル低下を招いていた。
13日に医学誌「ランセット消化器学および肝臓学」に掲載された研究結果によれば、AIは大腸の前がん性病変の発見率向上に寄与したが、AIによる支援を外すと、医師の腫瘍発見率は導入前と比べて約20%低下した。
世界各地の医療制度は、患者の治療成績や生産性の向上を目的にAIの活用を進めている。英政府は今年、AIによる乳がん早期発見の効果を検証する新たな臨床試験に1100万ポンド(約22億円)を拠出すると発表した。
論文によれば、医師らはAIの推奨に過度に依存するようになった可能性が高く「AIの支援がない状況で認知的判断を下す際に、意欲や集中力、責任感が低下した」という。
研究チームはポーランド国内4カ所の内視鏡センターを対象に調査。AI導入前3カ月と導入後3カ月の発見率を比較した。大腸内視鏡検査は無作為にAIあり・なしで行われた。
オスロ大学の研究者で調査に関わった森悠一氏は、AIの性能が向上するにつれてスキル低下の影響はさらに大きくなるだろうと予測した。
今回の研究に参加した医師19人は、いずれも2000件以上の大腸内視鏡経験を持つ熟練者だった。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン病院の消化器内科医、オマー・アフマド氏は、研修医や初心者では影響がさらに顕著になる可能性があると指摘。「AIは引き続き臨床成績向上に大きな可能性を持つ一方で、質の高い内視鏡検査に必要な基礎的スキルがひそかに浸食される事態を防がなければならない」と論評した。
原題:AI Eroded Doctors’ Ability to Spot Cancer Within Months in Study(抜粋)