NHK Eテレ特撮番組「タローマン」が想定外の反響 藤井亮監督、国際映画祭出品に驚き「海外の方に伝わると思って作っていない」
芸術家・岡本太郎の作品や名言などをモチーフにした、NHK Eテレの特撮モキュメンタリー番組の劇場版『大長編 タローマン 万博大爆発』(公開中)の舞台挨拶が23日に都内で行われ、藤井亮監督、劇中の巨人・タローマンが登壇。本作が第58回シッチェス・カタロニア国際映画祭(スペイン・10月9日~19日)、第18回ストラスブール・ヨーロピアン・ファンタスティック映画祭(フランス・9月26日~10月5日)に出品されることが発表され、藤井監督がテレビシリーズからの想定外の反響を振り返った。
本作は、「1970 年代に放送された特撮ヒーロー番組」という体裁のもと岡本太郎のことばと作品をモチーフに制作されたNHK Eテレの特撮モキュメンタリー番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」の劇場版。万博で沸き立つ1970年の日本を舞台に、地球防衛軍(CBG)と巨人タローマンが、未来からやってきた奇獣に立ち向かうさまを描く。
ADVERTISEMENT同作では8月22 日から24日にかけて東京・大阪・名古屋の3都市を巡る「縦断キャラバン舞台挨拶」を開催。23日にTOHOシネマズ日本橋で行われた東京の舞台挨拶では冒頭、タローマンが客席を練り歩き、ファンに絡んで会場を沸かせた。藤井監督は「105分、でたらめな映画を観ていただいてお疲れ様でしょうが……」と照れくさそうにあいさつし、前日は大阪で舞台あいさつを行ったことを報告。「大阪は舞台あいさつというよりお祭りでした。最終的にみんな上映前の体操というていで踊っていたりして……」と大阪会場での盛り上がりを振り返る。
テレビシリーズの制作秘話を問われると、藤井監督は「元々、NHKから岡本太郎の想いと言葉、作品を伝えるようなものを作りたいと相談されたんです。岡本太郎さんのドキュメンタリーや映画などの名作がたくさん作られている中、何を作ろうかとなったけど、太陽の塔を実際に見ると、これは太陽の塔が動いた方が面白いなって。特撮かなって思ったんです」と特撮作品になった経緯を回顧。「怒られるかなって思ったけど、(NHKに)話したらその場で『タローマンにしましょう』って言ってもらえました」と笑顔を見せる。
ADVERTISEMENT結果、番組は大人気となったが、藤井監督は「深夜のカルトな番組になると思っていたので、ここまで人気になると思わなかった。グッズまでできて。僕の作品はグッズになったりしないと思っていたのに」と予想を上回る反響に驚き。映画化のオファーまで来ると、今度は長編化の困難に直面したと振り返る。
藤井監督は「どうしたら映画になるだろうって。あれは5分だから面白い。SNSにも5分以上見ると脳がダメになるって。最初の話の時はテレビの総集編を中心にというお話をもらったけど、作るなら長編のものをちゃんと作ろうという思いでした。岡本太郎さんの万博への思いを含め、何かアイデアを出せば面白いものができるのではないかって」と話す。
終盤、第58回シッチェス・カタロニア国際映画祭、第18回仏ストラスブール・ヨーロピアン・ファンタスティック映画祭に出品されることも発表されると「海外の方に伝わると思って作っていない(笑)。(話が来て)驚いた」と心境を語り、「タローマンを海外に連れて行ったら楽しいでしょうね」とにっこり。続編に関しては「全く考えていない。何か(展示会など)岡本太郎に対するいいタイミングがないと作れない」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)
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高難度アクションのつるべ打ちで知られる『ジョン・ウィック』シリーズ最新作『バレリーナ:The World of John Wick』で主人公イヴを演じたアナ・デ・アルマスと監督のレン・ワイズマンが来日時にインタビューに応じ、並々ならぬ覚悟で挑んだ本作への思いを明かした。
幼少期に暗殺教団に父を殺されたことで、孤児を集めて暗殺者とバレリーナを養成するロシア系犯罪組織「ルスカ・ロマ」に加わったイヴの殺し屋としての成長と壮絶な復讐を描く本作。ワイズマン監督は「僕にとって本作とこれまでのシリーズの大きな違いは、ジョン・ウィックがこの世界から出ようとしている一方で、イヴはこの世界に入ろうとしている点」と切り出す。「難しかったのは、『ジョン・ウィック』の世界だと間違いなく感じられるように何を以前の映画から取り入れ、そして何を新たなものとして提示するか、そのバランスを見つけることだった。イヴをジョン・ウィックの単なる複製にはしないようにすることが重要だった」とその違いを際立たせるようアプローチした。
ADVERTISEMENT レン・ワイズマン監督とアナ・デ・アルマス『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に始まり『グレイマン』『ゴーステッド』と立て続けに出演し、アクションもできる女優として定評があったアナにとっても、本作は別次元の苛烈さだった。本作への出演を経て「間違いなく、今までよりずっと準備ができていて、スキルが備わっていると感じる」と自身の変化を実感しているというアナは、「わたし個人としては、新たなレベルに到達できた。これまでに出演したアクション映画はこのジャンルへの素晴らしい導入となったけれど、本作は間違いなくより過酷で挑戦的! モンスターレベルね」とチャーミングに笑う。
撮影前、過酷なアクション撮影に備えるために3~4か月のトレーニングを行ったというアナだが、「でもそれで終わりじゃないの」と力を込める。「トレーニングは撮影中も継続。アクションの振り付けに関しては事前に少し学び始めていたけれど、全てを事前に学ぶ時間はなかったから。だから撮影中も、テイクの合間や、週末や、その日の撮影終わりとかに、傍に設置されたテントやスタントチームがいるスタジオで、次のファイトシーンの練習をしていた。だから決して終わることのないプロセスだった」と振り返った。
ADVERTISEMENTその過程で体も激変したという。「まさにアスリートのようなトレーニングといえるかもしれない。トレーニングだけじゃなくて、リカバリー方法などたくさんのことを学んだの。カイロプラクターと体を調整したり、理学療法をやったり、ふさわしい食事やよい睡眠を取ることも重要。ちょっと甘やかされているように聞こえるかもしれないけれど、そうすることが本当に必要で。もしわたしがケガをしたりしたら、撮影はそこで止まってしまうから。だから間違いなく、体は大きく変わった。時々、本当に(イヴが鍛えられた)ルスカ・ロマにいるみたいだって感じた!」とトレーニングの過酷さを明かした。
本作への参加で、体だけでなく精神も大きく変わったというアナ。「この規模の作品を引き受けるのが、どういうことを意味するのかを理解した。本当に無私無欲にならないといけないの。準備から撮影まで7、8か月という長い時間がかかり、それに自分のすべてをささげ、その期間は常に全力投球しないとならない。だから、かなりの決意が必要になる。もちろん“簡単な映画”なんてものは存在しないけれど、本作は本当に強烈!(笑)」と打ち明けていた。(編集部・市川遥)
映画『バレリーナ:The World of John Wick』は公開中
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