「安全を第一に取り組む」 島根原発2号機、13年ぶりの営業運転

堀田浩一 垣花昌弘

 中国電力島根原発2号機(松江市、82万キロワット)が10日、営業運転を再開した。2012年1月に定期検査で運転停止して以来、約13年ぶり。

 2号機は、11年3月の東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉。昨年12月7日に原子炉を起動し、調整運転を続けてきた。この日は、中国電が最終検査となる「総合負荷性能検査」を実施し、原子力規制委員会による「使用前確認」も完了。午後3時10分、確認証が交付され、調整運転から営業運転に移った。

 構内で原子力規制庁の検査官から確認証を受け取った島根原発の岩崎晃所長は「原子力発電所の運転は地域のみなさまの信頼があってこそ成り立つもの。安全を第一に取り組んでいく」と述べた。

 丸山達也・島根県知事は営業運転再開の直前にあった定例会見で「中国電力には安全を最優先に運転してもらう必要がある」と述べた。さらに「ミスやトラブルの未然防止に努めてもらうのは当然だが、ミスやトラブルが発生した場合には事案の内容に応じて速やかに公表し、原因を究明した上で必要な改善、対策を講じることを徹底してほしい」と注文した。

 平井伸治鳥取県知事は「中国電力には、安全を第一義として緊張感をもって運転に当たるとともに、周辺地域にも運転状況の報告を定期的に行うよう強く求める。米子市境港市と連携し、安全協定に基づき引き続き厳重に安全を監視していく」との談話を出した。

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 中国電力島根原発2号機の再稼働で、立地自治体などに国から入る交付金と、島根県が中国電に課している核燃料税の収入は増える。

 2023年度は電源三法交付金が50.1億円、核燃料税が7.5億円だった。県は再稼働により、電力を他県に供給することで交付される「電力移出県等交付金」が年間約4千万円増えると見込む。また、再稼働に伴う交付金が、県や30キロ圏内の県内4市に計10億円交付される予定。

 核燃料税は原子炉に核燃料を挿入すると課税額が増えるため、年によって収入額は一定しないが、今年度は5億円の増収を見込む。

 一方、中国電は新年度から県と県内4市の原発関連業務を担う職員の人件費として、年間5億円程度を負担する予定だ。

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 原発が立地する松江市には2023年度、計25億円弱の電源三法交付金が国から交付された。使い道は、道路整備や観光施設の管理料、学校への電子黒板の配備など様々だ。一般会計の歳入に占める割合は2%程度だが、市は立地自治体ならではの「有利な財源」(市政策企画課)と位置付けている。

 市交通局は23年度、交付金を活用してバス3台を購入した。13年度から毎年バスを購入しており、路線バス50台のうち40台が「原発マネー」によって刷新された形だ。市交通局の佐藤広樹課長は「バス事業は赤字経営。本来なら中古車で賄うべきところだが、交付金により計画的に購入できている」と話す。

 交付金は03年10月に使途が緩和され、それまで公民館や体育館といった施設整備などに限られていたのが、地場産業振興や福祉サービスなどのソフト事業にも使えるようになった。松江市では現在、大半を消防職員の人件費や路線バスの高齢者割引、施設の指定管理料など必要経費に振り向けている。

 だが、島根大学法文学部の関耕平教授(地方財政論)は「電源三法交付金は原発の稼働・停止・廃止などによって交付額が変わる不安定な財源。住民生活に欠かせない福祉・住民サービスは本来、恒常的かつ安定的な財源で賄われるべきで、交付金で支えられることは望ましくない」と指摘する。

 実際、子ども医療費助成の財源となっている、島根原発1号機の廃止措置に伴う交付金(23年度1.2億円)は25年度で交付が終了する。これについて市政策企画課の担当者は「交付金で全額を賄っているわけではないので事業の継続に影響はない。別の財源を充てることになるだろう」としている。

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 〈電源三法交付金〉 電源三法(電源開発促進税法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法)をもとに、電気料金を原資に電力会社が支払う電源開発促進税を財源として、主に原発の立地地域に交付される。立地可能性の調査や環境影響評価を始めた時点から交付されるものや、廃炉に伴い交付されるものなどさまざまな種類がある。

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