米中摩擦懸念が継続、一時日経1900円安・ドル142円台:識者はこうみる
[11日 ロイター] - 4月11日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅に反落して始まった。前日からの下げ幅は一時1900円を超え、節目となる3万3000円を割り込んだ。トランプ米政権による関税政策で米中貿易摩擦につながるとの懸念がくすぶり、東京外国為替市場での円高基調も継続している。
市場関係者に見方を聞いた。
◎米中の報復合戦軽視できず、3万2000円台値固めが焦点
<いちよし証券 投資情報部 銘柄情報課課長 及川敬司氏>
米中に関しては関税を巡り報復合戦の様相を呈していいて、マーケットはその影響を軽視できない状況だ。ただ、それ以外の国についてはいったんは一番悪いところを見た、という感じではないか。今後は関税の停止期間中にどれだけ各国が交渉を進められるかが注目され、交渉の動向を確認しながら次第にマーケットも関税への耐性がついてくるだろう。トランプ米大統領の政策では、法人減税や規制緩和など経済にプラスの政策もまだあるので、そうした政策が出てくれば市場も前向きの評価になるのではないか。
目先の日経平均は、ひとまず3万2000円台で値固めできるかが焦点になりそうだ。為替相場のボラティリティーも高まっているが、1ドル=145円前後であれば歴史的にみてそこまで円高局面とは言えないだろう。足元の水準では企業業績への悪影響も大きくないとみられ、140円程度で踏みとどまれるか注目している。
◎中長期的には二点底形成、修復には時間要する
<ケイ・アセット CEO 平野憲一氏>
きょうの相場は急反落したものの、ここからさらに売ろうとしても、1000円、2000円幅で下げた後は簡単に崩せるものではない。その後の反発から、チャートの形は戻り基調に転じた格好となったが、いずれもセリング・クライマックスとなった昨年8月5日と今年4月7日の両安値で形成した二点底は、中長期的なトレンドでは強力なシグナルとなり、日本株は底打ちした可能性が高い。
ただ、日経平均の25日線、75日線、200日線といった長短移動平均線はいずれも大幅な下方かい離の状態となっており、これらは目先、長期といった投資スタンスにかかわらず、厳しい評価損を抱えた投資家が多いことを示す。ここからリバウンドに向かうとしても、大量の戻り売りが出てくると想定されるため、本格反騰には時間を要することになりそうだ。
焦点となる相互関税の問題にしても、延期された90日間で何が起きるかはっきり見通せない。需給、環境のいずれからみても、時間をかけて相場は修復していくものと想定される。
◎米中摩擦への警戒継続、円高が反動安を増幅
<岡三証券 チーフストラテジスト 松本史雄氏>
米国による対中関税が125%とみられていたところ145%と報じられており、米中摩擦のエスカレートが警戒されている。為替の円高が、前日高の反動を増幅している側面もありそうだ。米金利が上昇基調にあることへの懸念もくすぶる。
中国による景気対策への期待感がある一方、実体経済や会社計画への影響に対する警戒感は根強い。最悪期は抜けたとみているが、株価は一本調子で戻るわけではなく、しばらくはボラティリティーの高い状態が続きそうだ。
◎米中チキンレースの行方見極め、円高圧力続く
<日本総研 副主任研究員 松田健太郎氏>
90日間の米関税発動延期で市場マインドは一時持ち直したが、4─6月の世界経済見通しは厳しさを増しており、米国はゼロ近傍で日本はマイナス成長がほぼ避けられず、中国も4%台を割り込む可能性が出てきた。市場の懸念が和らぐような状況ではない。
米中の対立は、相次ぐ関税率の引き上げなどチキンレースの様相を呈している。米国債の売却などドル資産を嫌うような動きも見え始める中、対立がどこまで続き、どう収束するかを見定めようと、市場はその動向に一喜一憂する展開が続くとみている。リスクオフの円高圧力もまだ続くだろう。
高関税の対象が中国に限定されたことで、トランプ政権の矛先が中国に向いていることはある程度確認できた。しかし、今後の日米通商協議ではドル高/円安是正への取り組みが協議される可能性があり、日銀に早期利上げが求められる下、円高が進みやすい側面ある。ドルは2024年安値の140円割れに至ってもおかしくないとみている。
◎はしご外しリスクも、円買い一気には進まず
<ニッセイ基礎研究所 主席エコノミスト 上野剛志氏>
米国売りが続くかがポイントだが、米長期金利の急上昇など市場の混乱自体がトランプ米大統領に政策修正を促しているとみられるため、ドル/円は143円を割れて一時的な値動きは大きいものの、トレンドが形成されづらい状況が続いている。円買いを一気に進めたところで米政策の転換などではしごを外されるリスクがある。
ドル/円に関しては関税を巡る日米交渉で、通貨問題が取り上げられるかどうかの不透明感が円の下値を支えている。米国が円安是正を求めてくるかもしれず、日本側に交渉カードもほとんどない。米国が何を求めてくるのか分からない状況で、円売り方向に大幅に傾けづらい面もある。
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