ヘッジファンド運用者の独立相次ぐ、M&A復活が好機-強みは柔軟性
ヘッジファンドのベテラントレーダー、エド・クーパー氏は5年前、組織に属さないで運用する方式をやめ、業界大手ミレニアム・マネジメントで企業の合併・買収(M&A)成否などに賭ける戦略に取り組むグループに加わった。しかし今、再び独立の道を選んだ。
クーパー氏を含め、企業イベントに着目するイベントドリブン戦略で運用する複数のポートフォリオマネジャーが、マルチ戦略の大手ファンドを離れる道を選んでいる。イベントドリブン戦略に内在する価格変動の大きさに、大手ヘッジファンド会社の一部が及び腰になっていることが背景にある。
M&Aを巡る環境が改善しつつあることも、独立を目指すトレーダーにとって追い風だ。機関投資家からの資金も引き寄せやすくなっている。
トライアム・キャピタルの共同最高経営責任者(CEO)でマルチ戦略の責任者を務めるドナルド・ペッパー氏はインタビューで「大手に非常に適した戦略もあれば、そうではないものもある」と指摘。「M&A裁定取引は後者であり、この戦略の本来の居場所は大手ではないと考える」と語った。
イベントドリブン戦略分野ではここ数年、ミレニアムから著名トレーダーの離脱が相次いだ。ディール案件数が10年ぶり低水準に落ち込んだことなどが背景にある。
クーパー氏のほか、ローラン・プジャデ氏、オマール・サイード氏などが、2023年から25年序盤にかけてミレニアムを離れた。シタデルからも、ショーン・マーフィー氏が同時期に退社している。
彼らの一部が今、表舞台に戻りつつある。クーパー氏は、自身がかつて手がけていたヘッジファンド戦略を再始動させ、パートナーズ・キャピタルやカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)など、複数の著名機関投資家から資金を得ている。ブルームバーグ・ニュースが報じたところによれば、当初の運用額は4億-5億ドル(約588億-735億円)に達する見通しだという。
サイード氏は自身の戦略を考案中で、運用開始に向けた準備を進めていると述べた。マーフィー氏は25年末にも、自分の新たなファンドで取引を開始する計画。
トライアムのペッパー氏は、マルチ戦略ファンドの多くが損失局面でリスクを削減する傾向にあると指摘。独立してヘッジファンドを立ち上げる利点の一つとして、「より腰の据わった、長期的な視点を持つ投資家を引きつけることができる」点を挙げた。
M&A回復に対する楽観的な見通しは、こうした新たなファンドにとって朗報となっている。ブルームバーグがまとめたデータによると、今年6月以降に発表された企業のM&A取引総額は1兆ドルを超え前年同期比で30%増加。21年の記録的な夏以降で最も高い水準となっている。
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ベレンベルクの上級ポートフォリオマネジャー、オリバー・シャーピング氏は「表に見える以上に活発な動きがある」と話す。「金額が大型の案件はそれほど多くないので大手はあまり動けないかもしれないが、より小規模なファンドにとっては、数値データには表れない好機が存在している」という。
イベントドリブン戦略で利益を上げるには、確固たる信念と相当な忍耐力が求められるが、これは多くの大手ファンドのルールと相いれない。投資家が求める安定的なリターンを実現するため、損失許容範囲が厳しく設定されているのが一般的で、成績が振るわなかったり戦略がうまく機能しなかったりすれば、トレーダーを容赦なく入れ替えることも珍しくないからだ。
今年はヘッジファンドにとって資金調達が難しい環境だが、新興ファンドには興味深いことに、業界の著名企業から資金が集まっている。その中には一部のマルチ戦略ファンド会社も含まれる。
こうしたマルチ戦略ファンド会社にとっては、外部ファンドに資金を割り当てることは自社のリスク管理体制を変えずにイベントドリブン戦略の成果を享受できる機会だ。一方、独立した運用者らは、価格変動の大きさを受け入れる多様な投資家層にアクセスできる可能性が広がる。
モナコを拠点とする自身の運用会社を設立し認可を待っているマヌエル・ブランコ氏は「自分のビジネスを自由に運営し、成長させたいと人々は望んでいる」と指摘。大手ヘッジファンドが優秀な人材確保に苦しむ状況にある中で、「外部に資本を配分するという発想は理にかなっている」と述べた。
原題:An Old-School Hedge Fund Strategy Reboots Outside Giant Podshops(抜粋)