トランプ氏こだわる米中首脳会談、見込み薄く-習氏は徹底抗戦の構え

トランプ米大統領は今回の貿易戦争が始まって以降、複数回にわたって中国の習近平国家主席との首脳会談の可能性に言及している。だが実のところ、実現する見込みは遠のいているだろう。米中による関税の応酬がピークに達したかに見えてもだ。

  貿易を通じて中国に痛みを与えても、習氏を交渉の場に引き出せる可能性は低い。中国当局はむしろ、米国よりも多くの経済的・政治的困難に耐えられると証明しようとしているかのようだ。

  中国政府は11日、米国からの全輸入品に対する関税を84%から125%に引き上げると発表した。一方で、これ以上関税を賦課しても経済的な意味はないとして打ち止めを示唆しつつ、他の措置を使って「最後まで闘う」と表明した。

   キャピタル・エコノミクスの中国経済責任者ジュリアン・エバンスプリチャード氏は、「中国当局が再び関税を引き上げて米国に対抗したことは、トランプ政権との交渉を急いでいないことを示している」と話す。

   中国が交渉の場につくには、トランプ氏が他の貿易相手国・地域に与えた90日間の猶予以上のものを要求するだろう。これまでも対等な立場での、相互尊重に基づいた対話を求めてきた。トランプ氏は中国からの報復に対しては常にさらなる関税の上乗せで応酬しており、米中の対立は長期化の様相を呈している。

  調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は「中国側にとっての不満は、トランプ政権の要求に一貫性がないことだ」と指摘。「相手が何を求めているのか分からず、また要求がコロコロ変われば、交渉するのは難しい」と述べた。

  もっとも、トランプ氏は習氏との交渉を楽観視している。ここ1週間に習氏を「友人」と呼び、「多大なる敬意を持っている」と発言。交渉の初期段階であっても、トランプ氏が首脳同士の直接協議を好むことを浮き彫りにしている。また報復ではなく対話を選んだ他の貿易相手国・地域については称賛しており、中国にも同様の対応を望んでいることをうかがわせる。

   「中国も合意を強く望んでいるが、どう始めたらいいかわからない。私たちは彼らからの電話を待っている。いずれ起こるだろう」と、トランプ氏は今週ソーシャルメディアに書き込んだ。

  トランプ政権高官は、高水準の関税が最終的には習氏を交渉のテーブルに引き出すとの立場だ。ハセット国家経済会議(NEC)委員長は「中国への圧力が非常に強まっていることから、交渉は時間の問題だ」と述べている。

  習氏は11日、激化する貿易戦争について初めて公に発言。中国はいかなる「不当な抑圧」も恐れず、外部環境がどう変わろうとも自国の道を進み続けると表明した。

  パンテオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、ダンカン・リグレー氏は「米中双方とも現時点で交渉する意思はなく、国内で痛みが表面化するまで交渉は始まらないだろう」と指摘。その上で「米国では市場の動向と、特にトランプ支持層への影響が鍵を握る。中国側では輸出や雇用への経済的影響がポイントになるだろう」と語った。

  中国は依然として、関税以外にも米国への圧力を強める手段を有している。 10日には、トランプ米大統領による中国製品への関税発動を受け、米国映画の輸入を減らすと発表。米国が対中で数少ない貿易黒字を維持しているサービス分野を狙い撃ちし、貿易戦争の新たな戦線を開いた格好だ。

  ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミストであるアリシア・ガルシア・エレーロ氏によれば、中国にはさらなる元安誘導、あるいは米国債売却の臆測をあおるといった選択肢がある。

   「中国はまだ多くのレバレッジ(交渉上の切り札)を持っている」と同氏。「とりわけ今年後半に米経済が弱含めば、その影響力は減るどころか、むしろ増すだろう」と指摘した。

原題:Trump-Xi Truce Appears Elusive as China Prepares to Dig In(抜粋)

関連記事: