【米国市況】S&P500、週間で2023年以来の大幅高-円は143円台後半
11日の米株式相場は反発。S&P500種株価指数は週間で2023年以来の大幅高を記録した。ここ数日、外国投資家が米国資産から撤退しているのではないかとの懸念が強まっていたが、長期国債とドルへの売り圧力はやや弱まった。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5363.36 95.31 1.81% ダウ工業株30種平均 40212.71 619.05 1.56% ナスダック総合指数 16724.46 337.15 2.06%トランプ大統領の急速に展開する通商政策が世界経済を揺るがしているだけでなく、世界の安全な避難場所としての米国の地位を脅かしているのではないかとの懸念から、ボラティリティーはまだ落ち着く気配を見せていない。ボストン連銀のコリンズ総裁が、金融市場が無秩序な状況になれば、連邦準備制度理事会(FRB)は安定化に向けて支援する用意があると述べたとの報道を受け、S&P500種は約2%上昇した。
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オーシャン・パーク・アセット・マネジメントのジェームズ・セント・オービン最高投資責任者(CIO)は「FRBプットが動き出した。これで当面の不安はいくらか和らぐだろう」と述べた。「ボラティリティー自体は健全な兆候ではない。日中の急激な上昇は表面的には安心感を与えるかもしれないが、乱高下は全体的な不確実性の表れだ」と指摘した。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「市場はまだ感情的になっている」と述べた。「貿易摩擦の解消が見込めず、業績の行方が不透明で、マクロ経済の逆風が吹く中、市場は依然として足場を模索している。今週の上昇は心強いが、明確な転換点と見なすべきではない」と語った。
「不確実性」、「未知数」、「混乱」といった言葉が米銀大手3行の決算報告では何度も繰り返し使われた。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、米国債市場で「混乱」が生じ、それがFRBの介入を促すことになると予想した。
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米金融当局が何かしらの対応を見せ、米国と中国がエスカレートする世界的な貿易戦争を緩和させるまで、S&P500種の戻り売りが賢明だと、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は助言した。
同氏はトランプ大統領の関税とそれによる市場の混乱で、米国例外主義は「米国敬遠」へと変化しつつあるとの見解を示した。S&P500種が4800に達するまでは株式のショートポジションを、米2年債に対してはロングポジションを推奨している。
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米国債
米国債相場は短期債を中心に下落した。米国資産から資金を引き揚げる動きが続き、10年債利回りは週間ベースで2001年以来の大幅上昇となった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.87% 0.5 0.11% 米10年債利回り 4.50% 7.1 1.59% 米2年債利回り 3.97% 10.4 2.70% 米東部時間 16時50分10年債利回りはこの日、一時16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.6%近くを付けた。先週末からは50bp余りの上昇となったが、終盤にやや上げ幅を縮小した。30年債利回りは一時、前日比12bp上昇して5%に迫った。
UBSグループのチーフストラテジスト、バーヌ・バウェジャ氏は「非常に恐ろしい。われわれは世界のリスクフリーレートを定義し直しているところだ。世界のリスクフリーレートにボラティリティーを組み込んでしまったら、全ての市場がひっくり返る」と述べた。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「市場が直面している問題は米国の政策に対する信頼感喪失だ」と指摘。「関税政策が突然変更されたことで、レバレッジを効かせた取引はうまくいかなくなり、買い手は様子見に回っている」と述べた。
バークレイズのアジェイ・ラジャディアクシャ氏は「今週の価格動向で最も懸念されるのは米国債市場の動きだ。米国債が安定し、正常な動きを取り戻すまで、リスク資産は苦戦を強いられるだろう」と述べた。
外為
外国為替市場ではドル指数が4日連続で下げ、6カ月ぶりの低水準を付けた。中国が関税を引き上げたことに加え、3月の米生産者物価指数(PPI)が予想外に前月比で低下したため、ドル売りが続いた。主要10通貨の中では、ユーロとスイス・フランの上げが目立った。
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為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1233.74 -12.52 -1.00% ドル/円 ¥143.62 -¥0.83 -0.57% ユーロ/ドル $1.1349 $0.0148 1.32% 米東部時間 16時50分円は対ドルで小幅続伸。欧州の取引時間帯に1ドル=142円07銭と、昨年9月30日以来の高値を付けた。ニューヨーク市場では144円近辺まで伸び悩む場面もあった。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のシニア市場ストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「米経済はスタグフレーションの瀬戸際にある」と指摘。「ドルはさらに下げやすい状態にある」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物は反発。ただ、米中の貿易戦争激化に伴いボラティリティーが高まる中、週間では2週連続の下落となった。
中国はこの日、米国への関税を125%に引き上げると発表。一方で、米国が今後関税を引き上げても取り合わないとして、打ち止めも示唆した。また米長期債への売りが和らぐ一方、米国株が上昇し、終盤の取引で原油相場を支援した。
フィッチ・ソリューションズ傘下のBMIは「原油などマクロ経済に敏感なコモディティー(商品)にとって、経済を巡る高い不確実性は重しであり、価格は引き続き圧力を受けると予想される」とリポートで指摘。さらに、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラスによる減産の段階的かつ継続的な巻き戻しを当社では現時点で織り込んでいる」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は、前日比1.43ドル(2.4%)高い1バレル=61.50ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は2.3%上げて64.76ドル。
金
金スポット価格は初めて1オンス=3200ドルを上抜け、最高値を再び更新した。関税による世界経済への影響が懸念される中、安全資産としての金の妙味が増した。
金は一時、2.2%高のオンス当たり3245.48ドルまで買われた。週間では6.5%近い値上がりだ。
めまぐるしく変更されるトランプ氏の関税政策により、金融市場は混乱。通常なら逃避マネーの受け皿になる米国債も売り込まれており、安全資産としての金の評価が改めて高まった。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「金が力強く持ち直し、再び最高値を更新したことは、状況が決して良好ではないことの裏返しでもある」と指摘。「金の一段高は、関税の一時停止にもかかわらず、地政学的および経済的な緊張や財政悪化といった根本的な懸念がくすぶっていることを示している。中央銀行による金購入の継続も相場の押し上げ要因だ」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時38分現在、前日比61.15ドル上げて1オンス=3237.38ドル。COMEXの金先物6月限は67.10ドル(2.1%)高い3244.60ドルで引けた。
原題:S&P 500 Notches Its Best Week Since November 2023: Markets Wrap(抜粋)
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