TikTokがアメリカ企業への事業売却に向けて最終交渉中との報道
TikTokのアメリカでの事業について「停止か、アメリカ企業への売却か」の期限が来ましたが、ドナルド・トランプ大統領が期限をさらに3カ月延期する大統領令を出したことがわかりました。これで延期は4度目です。なお、事業を巡っては直接の会談を経てアメリカと中国が「枠組み」に合意していて、新たに、株式の約8割をアメリカ側、残りを中国側が保有するアメリカ企業を設立して事業を受け継ぐ計画の存在が報じられています。
U.S. Investors, Trump Close In on TikTok Deal With China - WSJ
https://www.wsj.com/tech/details-emerge-on-u-s-china-tiktok-deal-594e009fTikTok in Final Talks to Be Bought by Oracle, Silver Lake, Andreessen Horowitz
https://www.thewrap.com/tiktok-purchase-close-oracle-silver-lake-andreessen-horowitz/TikTokは、ジョー・バイデン政権下で成立した「外国の敵対者が管理するアプリケーションからアメリカ人を守る法」、通称TikTok禁止法により、親会社が中国資本であるという点を理由に「敵対者が管理するアプリケーション」と見なされ、2025年1月19日の期限までに事業を売却するかアメリカでのサービス提供を停止するかが求められていました。
アメリカ人の個人情報が中国に渡っているとの懸念から、アメリカは「アメリカ企業が管理するアメリカ版TikTok」を作るよう求めていますが、そもそも個人情報が中国に渡っているというのは根拠のない臆測に過ぎません。また、TikTokの周受資CEOは、アメリカでTikTokを運営している企業(TikTok Inc.)は親会社が中国拠点のByteDanceであるものの、拠点はアメリカに置いており、アメリカ人のデータはアメリカ国内で管理していると明言しています。
また、GoogleやMetaなどのアメリカ企業も海外ユーザーの個人情報を多数収集しているため、「自分たちは情報を収集するが、自分たちの情報が収集されることは一切認めない」というアメリカのダブルスタンダードが見え隠れしているとの指摘もあります。アメリカは中国企業の子会社として事業を継続しようとするTikTokを許さず、アメリカに売却するよう強く求めていますが、TikTokからしてみればサービスの神経系とも言える数百万行のコードを他者へ明け渡すことになるため、以前は「実質不可能」との見方を示していました。
TikTokがアメリカでの禁止措置をめぐり訴訟 - GIGAZINE
トランプ大統領はTikTok禁止法の施行以来4度にわたり意思決定の期限を延期し、交渉を持ちかけています。2025年3月には団体名を明かさず「4団体が買収交渉中」と明かし、「おそらく、近い内に合意が成立する」という趣旨の発言をしていました。 このたび、ウォール・ストリート・ジャーナルは新たに「ソフトウェア企業のOracle、ベンチャーキャピタルのSilver Lakeおよびアンドリーセン・ホロウィッツを含む投資家コンソーシアムがTikTokを買収する可能性がある」と報じました。 関係者によると、サービスを運営する新たなアメリカ法人が設立され、アメリカの投資家が約80%の株式を保有し、残りを中国株主が保有することになるとのこと。新法人は、アメリカ政府が指名するメンバー1名を含む、アメリカ人が中心となる取締役会を持つことになるそうです。 ホワイトハウスの高官は「TikTokの枠組みに関する詳細は、現政権が正式に発表しない限り、全て臆測にすぎない」と述べました。
TikTok禁止の流れは、トランプ大統領の最初の任期が終わりに近づいた2020年8月、TikTokに事業停止か売却かを求める大統領令と、アメリカ人にByteDanceとのあらゆる取引を禁止する大統領令に署名したことにさかのぼります。
署名の直後、トランプ大統領はByteDanceに90日間の猶予期間を与え、アメリカにおけるTikTokの売却を義務付ける追加の大統領令に署名しましたが、政権交代で禁止措置は何度か先送りされてきました。
2021年に大統領に就任したバイデン氏はトランプ大統領の大統領令を廃止し、一度は時間的余裕を与えましたが、政権末期にTikTok禁止法に署名したことで売却要求が再燃。TikTok禁止法案は売却期限として270日を設定しており、この期限が迫った2025年1月、アメリカでは一時的にアプリの配布が停止されました。
その後、政権に復帰したトランプ大統領は、2025年1月に75日間、2025年4月にさらに75日間、2025年6月に90日間、期限を延期する大統領令に続けて署名しています。2025年9月にはさらに90日間延期し、猶予期間を2025年12月16日までとしました。ただし、延期措置の根拠となる2024年国家安全保障法が90日の延期を1回しか認めていないにもかかわらず度重なる延期が加えられたことは、果たして法的に妥当だったのかという疑問も投げかけられています。
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