FOMCが金利維持、調整急がずとパウエル議長-関税リスク警告
米連邦公開市場委員会(FOMC)は6、7両日に開催した定例会合で、主要政策金利を据え置くことを決定した。据え置きは3会合連続。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、金利調整を急いでいないとの姿勢を示し、関税がインフレ加速と失業増加につながる恐れがあると述べた。
パウエル議長はFOMC会合後の記者会見で、「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」と発言。「インフレへの影響は、物価水準の一時的な変化を反映して短期的なものにとどまり得る」としながらも、「そのインフレ効果がより根強いものになる可能性もある」と付け加えた。
フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは4.25-4.5%。今回の政策決定は全会一致だった。FOMCは声明で、インフレ加速と失業増加のリスクが高まっているとの認識を示した。
声明では「景気見通しに関する不確実性は一段と増している」と指摘。「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」と記した。
FOMC声明:不確実性は一段と増した、失業とインフレに上昇リスク
FOMCの声明発表後、S&P500種株価指数は下落。その後、パウエル議長の会見中は上げ下げを繰り返した。円は声明発表後に一時下げを縮小したが、その後は再び下落幅を拡大した。
トランプ米大統領の通商政策は経済全体に不確実性の波を起こしている。関税についてはなお交渉が続いているが、エコノミストらは広範な関税がインフレを押し上げ、経済成長の重しになると広く予想している。実際にそうした経済情勢となった場合、物価安定と最大雇用の確保という金融当局の二大責務が互いに衝突する状況となる。
失業率はなお低く需要も安定する中、金融当局者らはこれまで、経済の行方をより明確に把握するまで政策金利を据え置くことに問題はないとの姿勢を示している。パウエル議長はこの日、そうした考えを改めて表明し、様子見することの代償は非常に小さいと付け加えた。
会見でパウエル氏は「われわれは、状況がどう変化するかを見守るのに適した位置にあると考えている」と指摘。「急ぐ必要があるとは感じていない。辛抱強くなるのが適切だと思われる」と語った。
一方でトランプ氏はFOMCが政策金利を引き下げるべきだと、繰り返し主張している。
パウエル議長をはじめとする金融当局者は、関税が恒常的なインフレ高進を引き起こすのを防ぐ決意を固めている。景気減速に備え予防的に利下げすることは支持しないと示唆する当局者も複数いる。
パウエル議長は、「今は予防的になれる状況ではない。さらなるデータを目にするまで、どのような対応が正しいのか実際のところ分からないからだ」と語った。
新たな関税の影響が経済全体に波及するまでには時間がかかると、エコノミストらは指摘する。これまでのところ、影響は主としてセンチメントの急激な悪化と輸入の急増という形で表れている。米経済は今年1-3月(第1四半期)、2022年以来のマイナス成長となったが、基調的な需要を示す指標は堅調さを維持した。
声明では「純輸出の変動がデータに影響を及ぼしているものの、最近の複数の指標は経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆する」と記された。
原題:Fed Holds Rates, Sees Risk of Higher Inflation and Unemployment(抜粋)