【日本市況】株急騰、トランプ関税一時停止でリスク回帰-金利は上昇

10日の日本市場はリスク資産への回帰が鮮明になっている。トランプ米大統領が報復措置を講じていない日本を含む一部の国や地域に対する上乗せ関税を一時停止すると表明したことを受けて、株価が急騰して債券は中長期債が下落(金利は上昇)している。

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  株式は全面高となり、日経平均株価の上げは一時2800円、9%に達した。トランプ大統領は9日、日本を含む国・地域に対して上乗せ関税を90日間停止することを承認したと明らかにした。関税による世界的な経済・物価への懸念が後退、安全資産志向が巻き戻されて電機や銀行、自動車株を中心に買い注文が膨らんでいる。債券は10年債や先物が下落、円は対ドルで買われている。

  トランプ関税の影響が不透明として先月末からボラティリティー(変動率)の急上昇とともにリスク回避が鮮明だった金融市場は、いったん落ち着いてきた。ただ、中国への関税は引き上げられており、世界1、2位の経済大国である米中の関税交渉を巡る不透明感は払拭されていない。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストらは10日付リポートで、世界全体に対する関税率(自動車除く)が非報復国への一時停止で当初想定より低下する試算を示し、金融市場はこれに一義的に反応したと指摘した。今後トランプ政権が中国の外堀を埋める一方で、日本を含む同盟・友好国とは交渉を進める可能性が高まったとみている。

国内株式・債券・為替相場の動き-午後1時46分
  • 日経平均株価は前日比8.4%高の3万4381円77銭
  • 東証株価指数(TOPIX)は7.8%高の2533.56
  • 長期国債先物6月物は78銭安の140円56銭
  • 新発10年債利回りは6.5ベーシスポイント(bp)高い1.335%
  • 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.8%高の146円61銭
    • 9日の海外市場で一時148円27銭まで下落していた

株式

  東京株式相場は大幅に反発。トランプ米政権による上乗せ関税の一時停止で米国株が大幅に上昇した流れを引き継いだ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の急伸を受けて、半導体関連を中心に幅広い銘柄が高い。

  モルガン・スタンレーのジョナサン・ガーナー氏らは上乗せ関税一時停止について、世界的な景気後退の可能性を下げ、アジアの株式全体にとって強気材料と10日付のリポートで指摘した。日本は米国との交渉に最初に挑む国になる可能性などから、「日本に最も強気の材料になる」とした。

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  日経平均の上げ幅は一時2854円に達した。歴代の上げ幅(終値)との比較では昨年8月6日に続く史上2位になる。TOPIX33業種全てが上昇しており、指数値上がり寄与度では電気機器、銀行、輸送用機器が上位に入っている。

  TOPIX構成銘柄は99%が値上がりしている。アドバンテストが一時18%上昇、三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車も一時10%超値上がりした。

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  大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは日本株について「金融不安やリセッション(景気後退)を織り込む株価の水準までいっていた」と指摘。関税の一時停止を受けて「そこまでの織り込みは必要なかったのではないかと巻き戻しが起きている」と述べた。景気の見方が大きく持ち直し、金融や非鉄、輸送用機器など関税・景気敏感業種が強いと話した。

債券

  債券相場は先物や中長期債が下落。トランプ米大統領が上乗せ関税策を90日間停止すると発表してリスク回避の巻き戻しの売りが優勢だ。この日の5年国債入札は強めの結果となり、相場の下支えとなっている。

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  岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは5年債入札について、応札が増えて強めだったと指摘。「先行き不確実な状況は変わらないため、金利が0.9%台前半の水準は買いで悪くないと判断したのではないか」と述べた。警戒されていた入札を順調にこなしたことで、債券相場はいったん落ち着いていくとの見方を示した。

  入札結果によると、最低落札価格は100円25銭と市場予想100円18銭を上回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は4銭と、前回の7銭から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.84倍と前回の3.17倍から上昇した。

日本債券:5年利付国債の過去の入札結果(表)

為替

  円相場は1ドル=146円台後半に上昇。米関税の一時停止によるリスク回避の巻き戻しで、急速に円安が進んだ反動が出ている上、公示仲値にかけての実需の円買い・ドル売りも指摘された。引き続き米関税政策に不透明感が根強いことや、日米の関税交渉で円安是正が議論されるとの見方も円の買い戻しにつながっている。

  みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、1ドル=147-148円程度では輸出企業などの実需が慌ててドルを売る動きもあるだろうと指摘。今後は2国間で関税交渉が行われていき、「為替の話が出てくることが意識されており、日銀の利上げの織り込みも回復してきている」と述べた。

  外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は、米関税の停止は根本的な解決ではない上、医薬品や半導体の関税も控えており「一方的なリスクオンとはなりにくい」とみる。米中の関税応酬で対立も長引くとみられ、「148円台はドルの上値が重い」と述べた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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