賢いAIモデルほど消費電力が大きい。利用者もエコ化に協力しよう
気がつけばありとあらゆるサービス、プラットフォーム、端末に搭載されているAI。AI時代待ったなしです。
AIが便利な一方で、物議を醸しているのが環境への影響。AIはその運用に莫大な電力と水を必要としており、省エネ化は各社のミッションの1つとなっています。
Google(グーグル)、OpenAI(オープンAI)、Meta(メタ)をはじめたくさんの会社が大規模言語モデルの開発を進めていますが、モデルによって地球への影響が異なるという研究が発表されました。
「賢い」AIは二酸化炭素排出量が多い
大規模言語モデル(LLM)がどれほど環境に影響しているか、それを正確な数字で予測するのは困難です。が、ChatGPTのトレーニングには、平均的なアメリカ人が1年間暮らすのに必要な電力の30倍が消費されているという調査もあります。
ドイツのミュンヘン応用科学大学の研究チームは、14の大規模言語モデルを調査。これらモデルはパラメータが70億から720億レベルのもの。それぞれのモデルに、さまざまな事柄について1,000の同じ質問を実施しました。
大規模言語モデルが質問に答えるとき、質問をトークンに分けて処理しますが、このトークン処理で二酸化炭素が排出されるのだそう。
そこでまず調査対象の14のLLMで処理可能トークン数をチェック。1つの質問で生成されるトークンは、平均543.5トークンでした。一方でなかには1質問で37.7トークンしか必要としないモデルもありました。
ChatGPTで例えると、GPT-3.5はシンプルな言語モデルであり、GPT-4oはより深く思考するモデル。後者の方がトークンは多くなり、思考処理にエネルギーを多く必要をすることがわかりました。
本研究論文の執筆者でリサーチャーのマキシミリアン・ダウナー氏は、LLMが思考的アプローチを採るかどうかで、環境への影響が大きく変わってくると語っています。
「思考可能モデルは、簡単なAIモデルと比べて、二酸化炭素の排出量が50倍にもなることがわかりました」
環境とAIの正確性を天秤にかける
ここで重要なのは、当然深く思考するLLMのほうが、出力される答えが正確だということです。
調査対象LLMの1つ、Cogito(コギト)のパラメーター数は700億、質問の答えの正確性は84.9%。簡単な答えしか出力しないLLMと比べると、二酸化炭素排出量は3倍でした。
また、より多くの思考を必要とする複雑な質問(抽象的な数学問題や哲学など)は、単純明快な質問と比べ、二酸化炭素排出量が最大6倍にもなることもわかりました。
ダウナー氏はこう説明します。
「今のところ、LLM技術においては、AIの正確性と引き換えにサステナビリティが失われるのは明らかです。
1,000の質問の解答精度が80%を超えるLLMで、CO2eが500gを下回るモデルはありません」
※CO2e(二酸化炭素換算)とは、温室効果ガスの排出量の指標で、環境への影響への目安になります。
ただし、ガス排出量が地域のインフラ構造など多くの要素が複雑に影響するので、今回の研究調査を一般論とできるかは疑問が残るというのも忘れずに。
AI利用者ができること
AI企業が省エネ化に努める一方、研究チームはAIユーザーもエコ化に協力できると呼びかけています。
「より答えを生成しやすいよう明確に質問する。エネルギーを多く必要とするハイレベルのAIモデルの利用は制限するなど、二酸化炭素排出量を大きく減らすために、ユーザーもできることがあります」
論文は研究出版社 Frontiers in Communicationのサイトにて公開されています。
Source: EurekAlert!