中国のDeepSeek、iPhoneのダウンロード数でトップ-アジア株を動かす

中国のスタートアップ企業、ディープシーク(DeepSeek)が開発したの人工知能(AI)モデル「DeepSeek」が、アップルのスマートフォン「iPhone」のダウンロード数でトップに躍り出たことで、シリコンバレーではAI分野における米国の優位性に疑問の声が上がっている。

  このアプリの基盤となるAIモデルは、オープンAIやメタ・プラットフォームズの最新モデルと比肩し得るものと広く認識されている。訓練や開発にかかるコストがはるかに低いという主張が、アジアのサプライチェーン全体で株価の動きを引き起こした。

  科大訊飛(Iflytek)など、ディープシークと関連のある中国テクノロジー企業株は27日に急上昇した一方で、エヌビディアのAIアクセラレータに対する需要への潜在的な脅威から、アドバンテストなどの半導体製造装置メーカーは低迷した。 また、ディープシークのAIモデルが米国の技術的優位を脅かすのではないかという懸念から、米株価指数先物も下落した。

  投資家のマーク・アンドリーセン氏が「最も驚くべき、印象的かつ画期的な発明の一つ」と称賛したDeepSeekアシスタントアプリは、ユーザーが入力した質問や指示に対応する際に、その作業過程と推論を示す。アップルのアプリストアやグーグルのOS「アンドロイド」搭載スマホのPlayストアでのレビューでは、その透明性が称賛されている。このアプリは、米国のiPhoneの無料ダウンロードチャートでトップとなり、Playストアでもダウンロード数上位の生産性向上アプリの一つとなっている。

  クオンツファンドを率いる梁文峰氏によって創設されたディープシークのオープンソースAIモデルは、AI開発競争で優位に立つために企業が費やしてきた巨額の資金について再考を促すものだ。

  IGアジアのマーケットストラテジスト、ジュンロン・イープ氏は「DeepSeekが長期的に見て、より安価で実用可能な代替手段となるかどうかはまだ分からないが、差し当たっての懸念は、米国の大手テクノロジー企業の価格決定力が脅かされるのではないか、また、これらの企業による膨大なAIへの投資について評価を改める必要があるのではないかという点に集中している」と述べた。

  DeepSeekの成功は、最先端のAIにはより多くのコンピューティングパワーとエネルギーが必要になるという想定を覆すものとなる。この想定が、エヌビディアとそのサプライヤーの株価を過去最高値に押し上げている要因だ。

  DeepSeekの開発費用やエネルギー消費量は完全に文書化されているわけではないが、ディープシーク社はその費用がオープンAIの最新モデルに比べてわずかに過ぎないことを示す数値を提示している。エヌビディアの高性能チップに対する米国の貿易制裁がエスカレートしている中国から、小型で効率的なAIモデルが誕生したことは、制裁措置の有効性にも疑問を投げ掛ける。

  コンピューター科学者の李開復(カイフー・リー)氏は今月香港で開催されたアジア金融フォーラムで「米国は研究と革新、特に画期的な技術に優れているが、中国はエンジニアリングに長(た)けている」と述べ、「計算能力と資金が限られている時、人は非常に効率的に物事を構築する方法を学ぶものだ」と指摘した。

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原題:China’s DeepSeek Tops iPhone Downloads and Spurs Asia Stocks (1)(抜粋)

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