DeepSeek衝撃は「無差別」でない、大半の株が上げた27日の特異な市場
27日に起きた突然の株安が世界的な大型ハイテク株と人工知能(AI)関連銘柄に極端に集中していたことを、市場の健全性を図る複数の指標が示唆している。
ナスダック100指数は3%下落し、エヌビディアは一時17%下げて時価総額にして5890億ドル(約91兆円)を失い、1日の価値消失としては史上最大を記録した。中国のスタートアップ(新興企業)DeepSeek(ディープシーク)の登場で、巨額予算を持つ大型ハイテク企業だけがAI競争に参戦できるとの見方が根底から揺らぎ、バリュエーションが伸長した大型株を選好する投資スタイルに疑問が生じた。
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しかし水面下ではやや印象の異なる状況が起きていた。S&P500種株価指数は1.5%下げて引けたが、採用銘柄の過半数が株価上昇で終えた。S&P500種上昇銘柄から下落銘柄を差し引いた騰落指数は、199のプラスだった。これは過去20年余りで例のないことだ。
「これまでのところ、売り浴びせは無差別ではなく、市場では勝ち組(ソフトウエア)と負け組(半導体)が区別されている」と、ステファノ・パスカーレ氏らバークレイズのストラテジストはリポートで指摘。「しかし米株市場の一極集中が、指数レベルでは大幅下落となった」と説明した。
Since 2000 the breadth was never positive amid a 1.5% or more decline
Source: Bloomberg
売りが大型の米ハイテク銘柄にほぼ限定されていた兆候は、S&P500種の均等加重バージョンであるイコールウエート指数にも表面化している。同指数は27日、ほぼ変わらなかった。欧州でもストックス600やドイツのDAX指数は過去最高値付近に戻している。
米株市場では先物と現物の商いが急増し、S&P500種コンポジット・ターンオーバー指数はオプション最終取引日ではない取引としては前例の少ない高水準に達した。それでもトレーディングデスクの動きは全売り相場を反映してはいなかった様相だ。「10段階評価で7くらいの活動レベルだった」とゴールドマン・サックス・グループのトレーダーらはリポートで述べた。
「ポートフォリオを多様化するのはこのためだ。こういうことが起こり得るから、全資本を7銘柄に投じるのは賢明ではない。混乱は起こるものだ」と、フェデレーテッド・ハーミーズのマルチアセット責任者、スティーブ・シャバローニ氏はブルームバーグテレビジョンで語った。「バリュー株ははるかに良好に見える。小型株もずっと良さそうだ」と述
下落ヘッジやリスクオフの指標に目を向けると、VIX指数は一時7ポイント上振れしていたが、引けの時点ではわずか3ポイント上昇に落ち着いていた。同指数の先物変動カーブは大きく変化せず、昨年夏から高止まりしている以上に深刻な不安が市場に渦巻いていることを示唆していない。
市場の動きが示唆しているのは、低コストのAIがその導入と普及を加速させる一方で、2年前からブームの恩恵を特に享受し市場の上昇を率いてきた、バリュエーションの高い銘柄にはマイナスになるという投資家の理解だ。
「だからといって全ての設備投資が無駄だったという意味ではない。ジェボンズの逆説によれば、かえって利用が広がることになる」と、アジーム・アザール氏は自身のニューズレター、エクスポネンシャル・ビューで指摘。「AIにはまだ技術革新の余地が残されており、能力と効率の両方が向上可能だ」と述べた。
S&P500種は大型ハイテク株の比重が高いため、投資家はパッシブ投資のアプローチを考え直す必要があるかもしれない。あるいはインデックスルールの変更によって、こうした大型株による影響を最終的に限定したいと考える可能性もある。
ティア1アルファのストラテジストらは「AIセクターへのエクスポージャーが著しい銘柄が、S&P500種で高い比重を占めることを考慮すれば」、ディープシークは依然として「潜在的な懸念だ」とリポートに記述。「第2次トランプ政権で最初の連邦公開市場委員会(FOMC)をはじめ、複数の主要経済イベントと相まって、今週の株式市場は不安定要素が増している」と述べた。
原題:Something Unusual Happened in Monday’s Selloff: Most Stocks Rose(抜粋)