インドネシア抗議デモ、大統領が冷静な行動呼びかけ-通貨や株下落
インドネシアで国会議員の手当に反発するデモ隊と警察の衝突が発生し、バイクのタクシー運転手が死亡したことなどを巡り、プラボウォ大統領は29日、冷静な行動を呼びかけた。抗議デモは3日目に入り、当局が市民の怒りを抑えようとする中、通貨ルピアと株式相場が下落した。
プラボウォ氏は28日夕に行われたデモ中に警察の装甲車にはねられ、バイクタクシーの運転手が死亡した件について陳謝。関与した警察官の責任を問うと約束した。
今回の事案は政府への不満をさらに強めており、就任から1年弱のプラボウォ大統領にとって大きな試練となっている。最低賃金の引き上げが進まない中、国会議員の過剰な手当に反対するため、数千人が抗議デモに参加していた。
プラボウォ氏は演説で、「私自身、そしてインドネシア政府を代表して、深い哀悼の意とお悔やみを申し上げる」と表明。「警察官の行き過ぎた行為に衝撃を受け、失望している。昨夜の出来事について、徹底的かつ透明性のある調査を指示した」と述べた。
また、国民に対して落ち着きを保ち、「混乱と騒乱を常に引き起こそうとする勢力」に警戒するよう呼びかけた。
ソーシャルメディアのライブ映像では、バイクタクシーの運転手らが関係者の処分を求めるため、警察の機動旅団本部に集まる中、ジャカルタの一部地域を陸軍と海軍の人員が警備する様子が確認された。デモ参加者は車を燃やし、石を投げつけるなどし、機動隊は群衆を解散させようと催涙ガスを使用した。
国内の混乱が嫌気され、インドネシア株は29日に一時2.3%下落。ルピアは0.9%安となる場面があった。一方、5年国債利回りは7.1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇、10年債利回りが4bp上がった。
インドネシア銀行(中央銀行)は通貨の安定とファンダメンタルズに沿った取引を確保するため、介入する用意があると表明した。
コンベラ・シンガポールのリード為替・マクロストラテジスト、シア・リー・リム氏はジャカルタでの抗議デモについて、「インドネシア市場のボラティリティーを高めている」と指摘。「投資家は政策の不確実性や社会不安が高まるリスクを改めて評価しており、ルピアや株式、債券はいずれも圧迫されている」と述べた。
プラボウォ氏は汚職対応や雇用創出を掲げているが、高水準のレイオフや購買力の低下によって、東南アジアで最大の経済規模を誇るインドネシアの国民は不満を募らせている。
今回の混乱により、プラボウォ政権による政治的反発への対応を巡って懸念が高まっている。人権団体は今回の運転手死亡の責任者が適切に処分されなければ、政権への信頼が揺らぐ危機につながりかねないと警鐘を鳴らしている。警察は謝罪し、装甲車を運転していた関係者を拘束した。
原題:Prabowo Calls for Calm as Protests Rock Indonesia, Rupiah Falls(抜粋)