パキスタンがインドに報復措置、貿易停止など カシミール銃撃めぐり
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パキスタンは今回、インド国民に対するビザ(査証)免除制度を即時停止した。また、インド所有またはインド運航の航空機に対して領空を閉鎖し、インドとのすべての貿易を停止した。
さらに、イスラマバードのインド高等弁務官事務所の外交官の数を30人に減らし、インドの防衛、海軍、空軍の顧問に対し、4月30日までにパキスタンを離れるよう求めた。
パキスタンは、両国が水共有のため60年以上交わしてきたインダス川水利条約をインドが停止したことにも反発し、水を止めたり流路を変えたりする行為は「戦争行為とみなされる」と付け加えた。
インド側は23日に、国境閉鎖のほか、画期的と評価されてきた水資源利用条約の停止、外交官の追放、ビザ(査証)を保持するパキスタン人の一部に対する48時間以内の出国命令といった措置を発表していた。
22日の攻撃では、パハルガム近郊で武装勢力が観光客に発砲した。パハルガムは、紛争中のヒマラヤ地域にある、「インドのスイス」とも呼ばれるリゾート地。
インドの警察は24日、攻撃に関与したとされる容疑者4人のうち3人の名前を公表。うち2人がパキスタン国民で、3人目が地元カシミールの出身だと発表した。パキスタン側は、自分たちが攻撃に関与したというインドの主張を否定している。
インドが管理するカシミールの警察によると、名前が公表された3人の容疑者は、パキスタンに拠点を置く武装勢力「ラシュカレ・タイバ(LeT)」のメンバーだという。容疑者はいずれも、疑惑について言及していない。
パキスタン国家安全保障委員会は、パハルガム攻撃をパキスタンと結びつけようとする主張を否定し、信頼できる捜査内容や検証可能な証拠がないと反論した。
一方、インドのナレンドラ・モディ首相は、「インドはすべてのテロリストとその支援者を特定し、追跡し、罰する。そして地の果てまで追い詰める」と約束した。
また、「殺害の背後にいるテロリストとその支援者は、想像を超える罰を受けることになる」、「我々の敵は、インドの魂を攻撃した(中略)インドの精神は決してテロによって打ちのめされたりしない」と強調した。
インドの警察関係者はBBCに、カシミール全域で約1500人が、攻撃に関する取り調べのため拘束されたと語った。
警察はまた、攻撃者について情報を提供した者に200万ルピー(約350万円)の報奨金を提供すると発表した。
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この銃撃では、インド各地からの観光客が殺害され、重傷者も出ている。カシミールで起きた攻撃としては、近年最も犠牲者が多かった。
犠牲者の中には、新婚旅行中のインド海軍士官、家族の唯一の稼ぎ手だった観光ガイド、妻と子供たちと休暇を過ごしていた実業家などが含まれる。
インド側のジャンム・カシミール連邦直轄領では全党会議が開かれ、声明でこの「野蛮な攻撃」に深い衝撃と悲しみを表明した。
一方、インド各地から、事件後にカシミール出身の学生が嫌がらせを受けているという報告が寄せられている。
地方政党「ジャンム・カシミール民族協議会」の報道官は、大学などで学生が嫌がらせを受けている様子を映した複数の動画が、インターネットで拡散されていると述べた。
ジャンム・カシミール学生協会のナシル・クエハミ会長は、北部ウッタラカンド州で、右翼のヒンドゥー教団体がカシミール出身のムスリム学生に対し、追い出すために物理的に攻撃すると脅迫している動画を共有した。
1947年にインドとパキスタンが分離してイギリスから独立して以降、カシミール地方は分割支配されてきた。どちらも互いにカシミール全域の領有権を主張しており、2度の戦争と限定的な紛争を繰り返してきた。インドとパキスタンは共に核保有国。